運命の歯車は廻りだす。戦の炎が大陸全土を包み込み始めた。獣人の王は、自分達の戦術への絶対的な自信を。人の王は、帝国の力への絶対的な誇りを。高らかに宣言する。各々の想いを胸に、旗の下へと集う者達…。砂漠の民と北の帝国民…、想いを貫くのはどちらか。荒廃する世界でまた戦の幕が上がった。
■禁止事項:・他者の行動・行為を著しく制限、または指定する描写。・単騎で戦局に多大な影響を与える描写。・俗に言う無敵と思われる行為、行動や描写。・世界観が大幅に無視されている描写。・その他、不躾であったり、不快に思わせる行動や描写。上記の行為はお控え下さい。相手が居ての戦いです。ご理解のほどを宜しくお願いします。
■大陸地図:http://www.geocities.jp/kichi_k/LG_map/top.html(大判/作成:クロゼット様)http://lgtisiki.blog89.fc2.com/blog-category-8.html(携帯用/作成:コルナ・コルチェット様)使用させていただきました御二方に感謝いたします。
砂漠から送られる微かな熱気を、自慢の毛皮で感じ取る。見慣れた景色を前に、僕の気分はどうも複雑だった。「まさか、こんな形で家に帰るコトになるなんてなぁ……」ため息混じりに呟く。久々の帰還を喜んでいたいけど、そんな気分にはなれない。そんな今の僕は、ルドラム獣人連合に牙を向ける帝国の兵士だ。『いい機会だと思えよ。 国の敵として神都を見るなんて、旅をしてなきゃ出来ない経験だ』浮かない顔の僕にかかる声は、真後ろにいるゴーストから紡がれた。ふと影のある表情を隠すために、口元に防塵マフラーを巻き付けた。
内海に囲まれた神都コブム。そこの北東に位置する中継地ダビックの川に、ボートを浮かばせた。この水路を経由して、コブムに行こうと思うけど…。「流石に一人だと、危ないよね」『さあ、どうだかな』勇気と無謀は紙一重、昔の偉い人はそんな言葉を残した気がする。成せれば"勇気"として認められ、成せなければ"無謀"として笑われる。僕だけの力量では、後者に転ずる可能性のほうが高い気がした。「僕と同じ考えの人がいればいいんだけどなー」一人で乗るには大きすぎた船。その上で波に揺られながら、見知った顔をきょろきょろと捜し始めた。
帝都から南に位置するコルトア監視所…。その一室から、私はじっと出陣を控えている兵達を見つめていた。時が来ればあの兵達も私も…、戦に出向くこととなる。戦経験の浅い私にとって、戦場に出向く前のこの時間は耐え難いものがある。杖を持つ手は震え、足が竦む。(ああ…、いけませんね…、このままでは…)そっと部屋の隅っこに行き、懐に忍ばせておいたチョコレートを口に入れる。甘味が口の中に広がり…、うん…、落ち着いた気がした。そっと呪文を唱え指先に氷の塊を作ってみる。うん…、魔法も…、大丈夫。すっかり落ち着いた私は、監視所から戦地を眺めながら動きがあるのを待った。
会戦の報が届く。国内は一気に戦争モードに移行し、俺にも最前線への派兵の通達が来た。素早く装備を整え、地図を広げる。選んだのは陸路。ダビックを経由し、海路で侵攻するという手もあったが、海戦は愚か戦争の経験さえない自分が海でまともに戦えるとは思えなかった。馬舎から適当な馬を調達し、馬に略式鎧を装着するとコルトアへ駆けた。「傭兵なのに、ちっと出撃が遅れちまった。遅れとりもどさねーとな・・・」どこか楽しそうに呟いて、急かす様に馬に鞭を入れた。
目標としてはコルトアから王都ガスピア、トルスタンと経由してマロロ洞窟に侵攻する。マロロまで侵攻できれば、上手くいけば直接敵本拠地であるナビア城へ行ける筈だ。コルトアについた頃には、馬は疲れきっていた。ドラジオンからコルトアまで、休み無しで鎧を着けて走りぬいたのだ。当たり前といえば当たり前だろう。「これ以上は無理か。折角の馬を失っちゃ元も子もねーわな・・・」馬の状況をみてこれ以上の侵攻は無理と判断し、一日馬を休ませるためにその日はコルトアで休息をとることにした。
コルトア監視所を目視できる位置にある小さなテント。傭兵部隊のキャンプだ。監視所で待ち構える部隊とは別に迎撃に打って出るのが仕事だ。敵軍が侵攻してきた所、騎馬隊で突撃。敵陣をかく乱し、侵攻を遅らせるのだ。・・・などというが、結局はいつもと変わらない。最前線への突撃、敵陣かく乱。よくもまあ、いつも敵の集中を浴びながら生き長らえたものだ。それでもまだ私は終われない。それが、私の・・・。
開戦の報と共に、私はすぐに帝都を出立しこのガスピアへと到達しました私は、早速予定の宿へと向かいます「さて、この地で彼と落ち合う予定なんですが・・・」彼と合流した後、ここからさらに南下して敵国を目指す手筈になっています「とりあえず、慌てずに彼を待ちましょうか・・・まだ相手側もそれほど大きな動きも無いようですし今は、鋭気を養いながら、この後の行動を考えましょうか・・・」私は、テーブルに地図を広げながらこの後の行先をどうするか考えるのでした・・・
ここはドラバニア帝国の病院。今日も傷付いた人が続々と運ばれてくる。まだ軽傷者だが、戦いが激化すればもっと多くの人が後送されてくるのだろう。戦いでは役にたたない自分は、日々城壁を守りながら看護する。前線の人々への無事を祈りながら・・・
「ここか…少し待たせてしまったか…」開戦の報告と出撃命令を受け、帝都を出発しガスピアでフィーナさんと待ち合わせをしている予定の宿の前に到着し、一度装備を確認する「装備は、問題無し…さて、宿に入りますか…」宿に入るとフィーナさんがテーブルで地図を広げて、行き先を考えているのだろうか?彼女の背に向って話し掛ける「お待たせしました…では、何処に出発するか考えますか…」
フィーナさんの前の席に付き、自分の意見を言う「まず、ガスピアからトルスタンへ向けて進行…その後、マロロ洞窟を経由してルドラムの首都、ナビア城へ…こんな感じでどうでしょうか?」フィーナさんに一通りの意見を言って反応を待った
その日は、早朝から出発した。馬の息が、白くたなびく。「早く・・・もっと早くだ・・・」焦ってるわけではない。だが、遅れているのも事実。ここはまだ帝国領内だ。それほど警戒が必要なわけでもない。取り戻せるところで、遅れは取り戻しておきたかった。命令は最前線なのだ。日も昇り始めたころ、ようやくガスピアが見えた。「まずは装備・・・。侵攻は夜間がいいだろうな」夜間侵攻ならば、敵の偵察兵に見つかる確立もぐんと減る。馬も休ませることが出来るので一石二鳥だ。夜間に備え、武器屋に行き、必要なものをそろえ始めた。
考える私の背中からライさんが声をかけます私は、彼に振り向き笑顔で答えます彼はそのまま私の前の席へと座ると彼なりの行き先の意見を話してくれます「そうですね・・・基本的な道筋になりますが、それが1番無難な気がしますし万が一の行動変更もし易いので、いいかなと思いますねではでは、早速その道順で行きましょうか・・・」その意見に同意し、そのまま立ち上がった私はライさんと共に宿を後にし、トルスタンへと向かいました・・・
日が暮れた為、陸地に戻ってテントを張る。この日は敵は疎か、味方の気配もないまま時は過ぎた。テントの中で蝋燭を灯し、目を閉じて膝を抱え。灯火から漂う甘い香りで、気分を紛らわせる。静寂を破る音と言えば、自分の呼吸と秋の音色。(…先走ったな。誰も来ないや)少し後悔している自分がいた。このまま援軍が来なければ、僕は単騎で都を攻めることになる。少し安心している自分もいた。子猫のように蹲る小さな姿を、今は誰にも見られることはない。(もう少し待ってみて、誰も来ないなら…)そう思って体を横にした途端に意識が揺らぐ。小さな虫の音を子守唄に、僕はこのまま眠りに付いた。
フィーナさんと共にトルスタンへ向かう今の所、敵と出会い頭で合う心配は無いようだ「まるで嵐の前の静けさですね…」周囲を見渡してみても、敵の気配は今の所は無い…罠の可能性もあるが、考えすぎても仕方が無い「フィーナさん、このまま進みましょう…足踏みしてしまっても先に進めませんからね…どうしますか?」進軍しながらフィーナさんに聞いてみるこのまま何事もなく、進行できるのだろうか…?
帝都を出て、どれくれい経っただろう。夜の空を飛びながら、私は溜息を付いた。そしてちらりと後方を見る。私の後ろには5人の影が──いわゆる隊員がいる。今までの戦歴からして、そろそろ小隊の指揮ぐらい取っても良かろうと、上の方から預かった部下達である。だが突然預けられても、人には向き不向きがあろうと思う。私は人を使う者にはなれないと、常々思っていたのだが、まさかこういう形で押し付けられるとは・・・正直戸惑いの方が大きい。
後ろにいる有翼の若者達は、戦歴は浅いといえど、それなりの訓練を受けてきている。それでも長い遠征はキツかろうと、中継地毎に休息を取り、体力を温存してきた。長い移動は、彼らを知る為に良い時間であったが、まだ彼らをどう使うか、考え倦ねていた。恐らくルドラム領に入る前の、最後の作戦を練る場になるだろう中継地ダビックへ、私達はゆっくりと降り立った。
ルドラムから見て、帝都より後方にあるこの地には、帝国病院がある。精霊は帝都から補給物資を運んで、病院にたどり着いた。補給物資を衛生兵に渡していると、見知った顔が居た。彼女は看護師の…。「お、ロマジーナ。頑張ってるなぁ」ロマジーナは、怪我人の看護に追われているようだ。精霊は補給物資から、飲料水の入った入れ物を取り出し、彼女に差し出す。「お疲れ。少しは休まないと持たないぞ?」補給物資をちょろまかすな、と衛生兵に小突かれながら、看護師に笑いかけた。
装備をそろえ終わる頃には、日も落ちていた。不備がないか、素早く確認する。支給武器の他、投げナイフ、小型ボウガンに矢、火薬、食料、水。およそ単騎侵攻で安心とまでは行かずとも、どのような場面にも対応できそうな物は揃った。「さて、いくか」荷を纏め、馬を蹴る。いい具合に、月は雲に隠れていた。視認される可能性は、希望したよりも低く抑えられるはずだ。だが、安心は出来ない。相手は獣人の国。自分たちのような普通の人間と違って“鼻”が効く。「見つかるまでに、多少距離は稼いでおきたいな」急ぐのは何時もの事。既に帝国領ではない。毎度のように急かされた馬は、トルスタンに向け疾駆する。
ドラバニア帝国領土から次々に出陣していく兵士達。中継地コルトア監視所にも流れるように軍が押し寄せては過ぎ去っていく。すでに最前線では激しい戦が始まっているのだろう。じっとしているとまた不安に襲われそうなので、周囲の監視をすることにした。「むぅ…、あれは…」近くに傭兵部隊のキャンプを見つけた。恐らく最前線へ突撃していくための部隊だろう。もしあの部隊が攻撃を開始するのならば、魔法で補助を担当することもできるかもしれない。できることなら合流してみようか…。「許可が得られればの話ですが…」そう言って、私は監視所の中へ入っていった。
浅い眠りの途中、突然体を揺さ振られる。僕はすぐに目を開け、視線を上に向けた。『オレがもし敵だったら…、どーなってたと思う?』「テントに触った時点で、腕とか大怪我してるハズだけど」意地の悪い笑顔で、ヤマネコ族の従者が僕を見下ろしている。負けじと返した台詞は、寝る前に張っておいたトラップを指してる。それを"まあいい"の一言で流したソイツは、こう続けた。『お待ちかねの援軍だぜ。どこのどいつかは自分で確認しな』そう告げられた僕は、ぐっと伸びをしてから起き上がる。相棒の背中を追ってテントを出れば、そこで知る顔を見た。
「ティエンマさん…」『戦線復帰ってトコかね、他の5人は知らねぇが』横にいる相棒に目線の合図を送り、二人で彼らに歩み寄るその足音に気づいてた5人の有翼人は、ざっと身構えてきた。中には武具に手をかける者もいたりして、ぎょっと足が止まる。けれど、すぐに納得は出来た。こちらは黄眼黒毛のヤマネコ族と、蒼眼灰毛のネコ族ペア。そして敵はルドラム獣人連合、種族の関係で誤解されても無理はない。『武器を収めな、オレ達は帝国のモンだぜ。 ウソだと思うんなら、お前らの隊長に聞いてみな』微かな威圧を含めた相棒の言葉の後、僕は小さく会釈をした。
「待ちくたびれたわ・・・」夜を纏う怪異が呟く。すでに戦線は開かれていたはずだった。けれどいつまで経っても獣人の王の指示がない。『獣人には獣人の戦い方』そう豪語する王のことだ、確かな勝算を持ってのことだろうが遅すぎる。王のみにあらず各将もまた、戦時のはずが身構える様子もない。この連中にやる気はあるの?それとも私が獣人族ではないから手を見せてくれないのかしら?さすがにそう思い始めたこちらの気を知ってか知らずか。ついに王より命が下された。『好きなようにやってこい』と。
「・・・結局何も考えていないのね。 なんてのんきな連中なのよっ」城を発つと同時に思わず悪態が出たのも仕方がない。その戦略に期待していれば、中身は各々好きに戦えとは拍子抜けだ。もっとも・・・こちらにとっては好都合か。「私に出来るのは打ち落とすだけだものね。 出遅れた以上、戦場はこちらよりでしょうね」相手は帝国の猛者たち、かつては剣を連ねたこともあったか。「夜が行くわ、ドラバニアの皆さん。 私は夜の怪異、その身在る所は常に夜闇。 夜の舞踏をどうぞ、ご一緒してくださいますね?」向かうはマロロ洞窟。きっとそこが一番・・・望む死地に程近い。
ライさんと共にまずはトルスタンを目指す私敵の進攻が遅れているのか今の所、敵と出会う機会は無いですね「フィーナさん、このまま進みましょう…足踏みしてしまっても先に進めませんからね…どうしますか?」そう話すライさんに私は同意します「そうですね・・・こうなったら行ける所まで進んでみましょうか待つばかりでは状況も膠着しかねませんからね」とりあえず、このままマロロ洞窟へと一気に進みましょう」そんな事を話している間に私達の目の前にはトルスタン城が見えてきました・・・
息つぐ暇もなく看護に追われていると、突然目の前に水が差し出された。「お疲れ。少しは休まないと持たないぞ?」と、笑いかけるシーファさん。素直に飲料水を受け取り、しばし休憩。「戦いが激化したら、ロマも従軍します。」シーファさんにともも、自分にもともつかない言葉を出す。激化したら・・・
砂漠の強い日差しの下、骨兜を被り外套を着込んで岩場の上に一人座る。砂を含んだ乾いた風が外套の裾を激しくはためかせていく帝国軍の兵士達が進軍してくる方角からはここは逆光になるはずの場所だった。姿は影になって見えにくいだろうと、風に吹かれながら悠々と北を眺める己の獲物である長柄の斧を抱え、門番のようにマロロ洞窟を見下ろす。風は追い風だが――静かにトルスタン城方面を睨む。
ダビックはルドラム寄りの中継地。敵兵がいることを踏まえて、少し離れた場所に降り、目的地へと歩いて行く。「隊長、ここいらは危なくないんですか」「危険かもしれないから歩いている」「もう囲まれていたりはしないですよね」「気配は感じない、それより話して歩く方が敵に見つかりやすい。少し黙ってくれれば有り難いんだが」一番年下の心配性な青年が、恐縮そうに後ろに下がった。彼が私の傍で話をしたがるのは、この遠征中ずっとだが、多分他の部下達も彼を通して私を観察しているだろう。隊を持つのが初めての隊長に付き従うのでは、彼らの不安も大きい筈だ。
何かが闇の中で動いた。部下達が咄嗟に武器を手に身構える。(ほう、早いな。流石元の庭と言うべきか)二翼が示した闇の先から現れたのは、猫族の友人。部下達が殺気立つのも無理はない。この地で猫族に会えば、必ず敵だと思うだろう。私は片手をかざして彼らを静止させる。「ケーシィ殿。早いね」戸惑う素振りを見せる5人。『武器を収めな、オレ達は帝国のモンだぜ。 ウソだと思うんなら、お前らの隊長に聞いてみな』私はマフ殿の言葉に、笑いながら頷いた。「地の利がある貴方がいれば心強い。なんせ隊長が頼りないもんでね、こいつらもその方が良いだろう」武器を収めた彼らは、ケーシィ殿に小さく頭を下げた。
広大な砂漠を夜が動く。時刻を問わず、それがいる場所は常に夜。己の館を離れるときはその呪いを最小に抑えていても、なればこそ、砂漠を移動する黒色の濃霧のごとき姿は異様を極める。踏み入ればなおの事、そこは銅色の月の浮かぶ夜の庭。仲間にさえ厭われるその中で怪異が歌う。「開けた場所では、逆に目立つのよね、私の夜は。 内に入ればただの夜なのだけれど」目的のマロロ洞窟はもう視界に入っている。「どんな死線か、本当に楽しみね。 願わくは、陽光の魔法の使い手のないことを、かしら。 それこそ何も出来ずに消えてしまうものね」幽かに笑みを浮かべる。拠点に着けば、あとはその時を待つばかり。
数個の転送陣の前、幾つもの部隊が送られていく。その目には光はなく打ちひしがれた様の者。誇りを胸に漲る力を抑えている者。突撃兵も様々。敵領内へと送られた先の者達は戦果を上げているらしい。ナビア城から守りの兵が北へと次々に向かっている。大方の予想通り国境付近が入り乱れることになるようだ。転送陣を守る役から前線へ空から来る矢を避けながら数十名の部隊が動き出した。ナビア城と神都ゴブム。要所には敵兵の姿もある。遅れたことをどう詫びようか…。
一通の手紙を読みながら、先頭には巨大なオオトカゲに跨る黒い鎧。目を細め文面を読み返し北を向く。太陽の光と熱が体温を上げる。慣れない気候と足場。「涼みに…行くとしよう…」預けられた獣人達は槍と弓を持ち陣形を組み付いて来ている。日夜訓練を欠かさない部隊らしいが、実戦経験は浅い。託される兵はいつもそんなところ。「北へ向かう…夜であればそれを味方だと思え…」背を叩くと金属音に似た声。『きっとこの背から降りることはないだろう。降りる時は・・・』その答えは2つ。上官の言葉は笑えない。砂漠を畝ながらゆくその巨体は映える緑。口元まで伸びた手綱を強く引く。
『ケーシィ殿。早いね』ティエンマさんは片手をかざし、他の5人を制止させる。こちらも牙を剥いた相棒を引っ込めて、笑顔を見せた。ティエンマさんの言葉をなぞると、地の利のある僕の存在は有難いようだ。「都までの水先案内は、僕達に任せてもらうよ」改めてこう宣言をして、この場は従うように促してみる。そして川のほうへと目線を送り、彼らの視界をそちらに誘導した。『そこにボートがある。コイツに乗ってくぜ』相棒が補足の説明を加え、再びあの表情を見せる。意地の悪い笑顔を浮かべた後は、恐怖をかき立てる台詞を言いたがるのだ。
『間違っても"オレらは飛んでいけますよ"とか言ってくれるな。 ネコ族お得意の魔術に打たれて、魚の餌になりたいなら話は別だが』彼の思惑は的中したらしく、一人の有翼人が開きかけた口を閉ざした。夜の闇に紛れたとしても、ネコ族の目は誤魔化せない。…肝心の相手が、マジメに警備しているならの話だが。「この水路から敵は進軍して来ないハズだよ。 ネコ族は、自分の毛皮を濡らすのはキライだから」『"そういうアンタらは"とか、つまんねぇコト聞くなよ』再び誰かを黙らせた相棒と共に、小振りな船に乗り込む。水面に控えた水の精霊に声をかけ、出港準備を進ませた。
敵はガスピアまでくるものと思っていたが、どうやらそれよりも一列前に終結しているらしい。「トルスタン・・・フッ、因果な場所だな」慌しく準備を始める兵達。誰に言うわけでもなく、ポツリと呟くソラン。傭兵達が次々とキャンプを出て行く。ソランもまた愛馬へと飛び乗る。「さあ、行こうヒューイ。我らは、我らの道をっ」
「そうですね・・・こうなったら行ける所まで進んでみましょうか待つばかりでは状況も膠着しかねませんからね」とりあえず、このままマロロ洞窟へと一気に進みましょう」フィーナさんは進む事を選択したならば、突き進むまでだ「一気にマロロまで…ですね…では、進みましょう!行きますよ!フィーナさん!」トルスタン城にはまだ、敵軍は見えない一気に越える為に、フィーナさんと一緒に走り出した
夜同士駆けた馬を、暫休ませた後、水と食料を多少補給して、トルスタンを後にした。「静かだな・・・」辺りを見回し、ポツリと呟く。先ほどまで居たトルスタンにも、敵兵は一人も見当たらなかった。出陣前の予想では、既にこの辺りで接敵するか戦闘が起きていてもおかしくないはずだった。それがどうだろう。戦闘が起きている気配さえ、辺りには感じなかった。「静かだ・・・」自分を落ち着かせるかのように、同じことを再び呟いた。静かだった。それは、不気味なほどに静か過ぎた。まるで、大口を開けて待つ猛獣の口に飛び込んでいく、そんな感じだった。
「なにを馬鹿な。今更、不気味がってなんになる。ここまで、問題なく来れたことを喜ぶべきだな」頭を振って、入らぬ考えをふりとばす。だが、待ち伏せをされているのはもう、間違いないと考えるべきで。「出来れば接敵なしが好ましいけど、無理だろうな。」遅かれ早かれ、見つかるだろう。待ち伏せをされた、敵のホームグラウンドへ飛び込むのだから。気合を入れなおし、馬を急かしてマロロ洞窟を目指した。
「都までの水先案内は、僕達に任せてもらうよ」ケーシィ殿に主導を預け、私は彼の後に続く。部下達は困惑した表情を浮かべたが、隊長が従うのだから、自分達に逆らう権利は無い。水辺に案内されると、そこにあったのは小さな船だった。全員が乗ったら、かなり窮屈そうではあったが、目立たぬよう敵地に入るには、大きな船は使えぬだろう。また何時ものように、部下の一人が口を開き掛ける。だがそれは、声となって外に出る前に止められた。『”オレらは飛んでいけますよ”とか言ってくれるな』マフ殿が猫族の戦法を彼らに説く。
私もどの道この先は飛んで行けまいと考えていた。出来るだけ周りの風景に溶け込み、匂いを消して歩いて行かねばならない。臭いを消す薬草や、姿を隠す為のフードを持参させたのはその為だ。敵だと教えられた猫族に付き従うのは、彼らに取って納得いかないことであろう。しかしそれは、私に付き従うのも同じこと。結局彼らは、結果を見なければ飲み込めないのだ。彼らは黙って乗船し、私はこれからの作戦をケーシィ殿と話すべく、隣に座る。ゴブムで何が出来るか、まずは情報が必要だ。
トルスタン城を過ぎても未だ敵の姿は見当たりませんそんな中、私達は一気にマロロ洞窟を目指して走り出します(ここまですんなり来れたと言う事は敵の本部隊は別方角からなんでしょうか?それとも私達が来るのをじっと息を潜めて待ち伏せしているのかも…嵐の前の静けさって感じですねまあ、いずれにしてもそろそろ何か起きそうな気がしますね)急ぎながらも周辺の警戒だけは怠らないように進む私達・・・その視線の先に、遂にマロロ洞窟が見えてきます「まだ、ここからでは敵の姿は見えませんねとにかくゆっくりと近づいてみましょうか・・・」私達は洞窟の様子を伺おうと、さらに歩を進めるのでした・・・
『戦いが激化したら、ロマも従軍します。』精霊は看護師の言葉にただ頷いて、彼女の肩をぽん、と叩く。その精霊に、衛生兵の一人が声をかけてきた。トルスタンへ補給物資を届け、その場で医療班と合流せよ、と。その後、その医療班は前線へと移動するらしい。トリアージタッグの説明に、精霊の顔が引き締まる。「つまり…飛べる俺は、助けられそうな重傷者を抱えて運べ、と?」話が早い、と頷かれた。精霊は看護師に向き直り。「んじゃ、一足お先に行っているぜ」行った後すぐに背を向け、後ろ手に手を振って、精霊は病院から飛び立つ。
フィーナさんと共にマロロ洞窟を進む「まだ、ここからでは敵の姿は見えませんねとにかくゆっくりと近づいてみましょうか・・・」フィーナさんの言葉に頷いて返事とする洞窟とあって中は暗がりが多い(周囲に隠れる場所は多いな…ゆっくり進んで警戒するか)まだ、敵の姿は見えない…物は試しで、懐に忍ばせたナイフを取り出し、洞窟の奥に投げ込んでみる金属音が洞窟内に反響するこれで、多少の注意は引けるだろう「さて、一旦は様子見と言う事で」
「ふむふむ…、マロロとトルスタン周辺に戦力が集まっているのですか…。戦況の報告を聞き、思わず監視所から南の方角を眺める。あの辺りは帝国の戦士達もかなりの数が向かっているはずだ。ここで眺めていた限り、顔見知りを含めた兵達がそちらの方へ向かっていった。先ほどはソランさんも…。必要あれば着いて行こうと思っていたが…。「私達はここで攻撃に備えた方がいいかもしれないですね…」そろそろ補給物資が運ばれてくる頃だ。私も、何かお手伝いをしなくては…。
2人で洞窟の中に入るも未だ敵は姿を見せません(・・・いえ、もしかしたら、すでに私達に狙いを定めて虎視眈々とその機会を伺っているのかもしれませんね)暗がりが多い洞穴の中では先に相手を見つけた方が絶対的に有利になりますそれを察知しようとライさんがナイフを投げ込みますが今は人の気配らしきものは感じ取れません「う〜ん・・・やはり誰もいないんでしょうか?でも、あまりびくびくしててもしょうがないですしとにかく気をつけて先に進みましょうか・・・」私達は、慎重に、さらに洞窟の奥へと足を踏み入れるのでした・・・
総勢8人を乗せた船は、水の精霊を急がせて神都の港を目指す。隣に腰掛けたティエンマさんの提案を聞きながら、今後のプランを建て始めた。その反対側で話を聞いていた相棒は、お得意の炎術で指先に火を灯していた。「物資の配給を絶つために、港の輸送船に火を…」『獣人は火が苦手ってヤツ、割と多いからな』相棒は一本の矢を手に取り、空いた右手で炎の印を組む。その印を矢にかざした後、鉄で出来た矢の先端が赤々と輝いた。『火を付ける手段だが…、こんなのはどうだ?』彼は適当な材木に、赤い矢を突き刺して見せる。刺し口から舞い上がる炎…、それは小さな材木を瞬く間に包み込んだ。
「…こんな近海にまで来たっていうのに。 まったく…、今のコブムの警備隊はなにをやってるんだろうね」相棒が言う"火が苦手ってヤツ"には、僕自身も含まれている。だからこそ、僕が火を取り扱うという考えはなかった。そんな恐怖の対象から目を背け、呆れとも怒りとも取れる声で唸る。懐から双眼鏡を取り出して、レンズ越しに夜を見渡せば…。「…そろそろ見えてくるかな」神都コブムの都は、この双眼鏡で微かに見える所にまで迫っていた。物資を詰め込んだ輸送船も、恐らくそこに停泊しているだろう。
※前日の書き込みは "単騎で戦局に多大な影響を与える描写" である等の指摘を頂きましたので、その書き込みの削除、修正をさせて頂きました。 皆様にご迷惑をお掛けしてしまい、大変申し訳ありませんでした。
洞窟へ入っていく二人の帝国兵を眼下に見送り、しばらくしてから入口へと下り立った。一度岩場の上を見上げ、先程まで居た場所が死角になっていたかどうか確かめる「さて、挟み撃ちとするか」伝令からの情報によれば、そろそろ洞窟のルドラム側には友軍が到着している頃合だ。前後から挟み撃ちに出来れば、簡単に虫が2匹捕らえられるはず彼らと戦闘が始まった音がしないか、洞窟の奥に耳を傾けた。ルドラム兵の到着が遅れれば、逆にこちらが挟み撃ちに遭う可能性もある遠くで響いた金属音を確認し、静かに後を追う
ナイフを投げ、物音を立てて見ても、敵に動きは無い…いや、動いて無いだけかもしれないここまで簡単に攻め入れる事も、今考えてみれば妙だ…「挟撃の可能性あり…か」ついポツリと呟いてしまうフィーナさんに聞こえなかっただろうか?しかし、ここでフィーナさんと離れる訳にもいかない…後ろからこちらに向かってくる気配が一つ…さて、どうするか…2対1の状況なら、こちらが有利なのだが…下手に挟撃する相手に手を出せば、本隊に背中を刺される可能性があるならば…「後ろから付いてきている方…下手に隠れても無駄ですよ?」入り口方面に向かって話しかけてみる誰も居なければ取り越し苦労で済むのだが…
光の届かない洞窟の中にはまた、夜も届かない。正確にはもちろん違う。彼女がある以上はそこは場所を問わずに夜である。ただ、もとより闇に包まれた巨大な石棺の中。闇への心構えが初めから相手にもある。その意味で夜の優位がこちらに少ない。「それでも、あまりお待たせしては悪いものね。敵も、味方も」帝国軍の接近は報告を受けている。同胞との連絡は取っているわけではない、が。示し合わせるまでもない。そもそも私たちのようなものはそういうものだ。「と、勝手に私が思ってるだけだったら大失策でしょうけど」だったらそれも楽しくっていいわ。と洞窟を進みながら怪異は微笑む。
鼻歌でも歌いだしそうなほど陽気な足取りで。それでも僅かな足音さえ響かせない不条理。当然のこと、それは怪異であるが故。「後ろは・・・振り返るまでもない。ですね ―――剣士様」ぽつりと。一言だけを待ち侘びる様に呟いて。時計の針を模した、二振りの剣に手を掛ける。「ふふっ・・・味方まで、打ち抜かないように気をつけなくっちゃ・・・ ああ、楽しみだわ」開かれかけた戦火の匂いを嗅ぎつけた怪異が、玄い洞窟を灯りもなしに駆け出した。
どうやら帝国側の入口から私達の背後に向かって誰か進んできてるようですライさんが背後に向かって声をかけますがそれに返す言葉はありません(もし、背後の気配が敵だとしたらやはり私達を挟み撃ちにしようとしてるのかも・・・なら、挟まれる前に洞窟を抜けてしまえば・・・)しかし、そう思った私達の前方から私は別の気配がこちらに来るのを感じ取ります敵国側から来る以上、ほぼ100%敵勢力のはずです「くっ・・・間に合いませんでしたかなら、ここで覚悟を決めましょう・・・」私は、気配を殺す為に潜めていた気を一気に高め戦闘態勢を整えます「さて・・・どちらが先に来るでしょうね?」
既に、トルスタン城は戦乱状態だった。激しい剣戟の音、飛び交う怒号、そして…血と鉄の匂い。戦線の最後方にある野営地に、精霊は降り立ち、病院からの物資を渡す。「…押されてねぇ?」衛生兵の一人に短く尋ねると、短い肯定の答えが返ってきた。これでは、前線へ医療部隊を裂けるか怪しい所だ。話している途中で、傷ついた兵の一人が血を吐き、その衛生兵が対応に向かう。「ここも、戦場なんだな」いつも斬ったはったで忘れがちな、裏方の存在。命を直に握るような感覚に、精霊は思わず首を振る。手伝おうとしたが、衛生兵の一人に止められ。精霊は戦線へと飛び立った。
2人の帝国兵を追って洞窟に足を踏み入れたが、姿を確認する前に岩陰に身を潜める。『後ろから付いてきている方…下手に隠れても無駄ですよ?』急に声を向けられ、驚いてそのまま身を固めた。ルドラム兵と既に接触していたかと思ったが、どうやら先程の音は牽制の物だったようだしくじったな…拙いと思いながらも、潜んだ岩陰からは動かずに気配を殺す。なるべくなら友軍の到着まで時間を稼いだ方が良い女の兵の言葉にルドラム側の兵が近い事を知るが、足音すらしない夜の気配には気付かず隠れ続ける。己に近しい闇の気配であるため、意識に触れ難かったのかもしれない斧の柄を握り締め、機会を待つ
砂の道が砂利の道となり、やがて土砂も岩へと変化していく。空気の重さが変わっている入り口。その独特の雰囲気は知るところ。今回は…先導されているようだ…巨体では隠れることも、無論隠すこともない。引き付けるには十分すぎる目標だった。洞窟に入らず越えて来たのだろう。小数のヒトが崖を駆け下り剣を向けてくる。ヒトであるならば敵…。己を見ない安易な考えだったが、オオトカゲは呼応し尾を振り回す。緑の鞭に捕まるヒト、振りほどく度に傷を付ける勇ましき戦士たち。
十分な威嚇を振りまきながらも、その痛みを惜し気もなく披露する巨体。砂のそれとは違う。動き回れば地鳴りが起こる。貫くように、より甲高い声が洞窟の中へと響き渡る。野蛮な合図。なるべく近くに…だが…そうも出来んようだ…。この体と場所で乱戦は避けたいのもある。「…我等は越えて行くとしよう…続け!」単騎であればと願ったが、許さないのが戦場。だが望んだとおりに…。両軍の兵を引きずりながら緑の巨体は、張り付くように岩肌を攀じ登り洞窟の上をゆく。このままトルスタンまで行くことにしようか…。
ケーシィ殿と同じ作戦を遂行しており、同じく皆様に多大なご迷惑をお掛けしましたことを、深くお詫び申し上げます(深礼
少人数での襲撃を考えれば、港の輸送船に火を放つという作戦が有効に思えた。この提案に二人は賛同してくれた。軍の輸送船を動かなくすれば、敵の本陣に物資が行き届かなく筈だ。それに火は獣達を撹乱させる。だが、自身も獣の身で頷くには覚悟がいっただろう。『火を付ける手段だが…、こんなのはどうだ?』マフ殿は、一本の矢に魔法を吹き込み、その矢を木片に突き刺してみせた。途端、突き刺した場所からボッと炎が上がり、あっという間に木片を飲み込んだ。
部下達は一様に息を飲んだ。魔法にというより、魔法を使うその猫族に。魔法を使えない彼らに、それは未知で恐ろしいものに映ったのかもしれない。間もなくゴブムに着くというのに、巡回船も見えず、辺りは静かだった。最前線から外れているこの地は、かなり手薄と言ってよかった。私達にとっては有り難い話であったが、ケーシィ殿は複雑な心境だろう。各々暗い色をしたフードに身を包み、身体を伏せ、息を潜める。3人の弓兵はマフ殿が魔法を籠めた矢を番え、船の縁に顔と弓だけを出して、じっと期が来るのを待った。
フィーナさんが戦闘体制に入っている前方から敵の気配を感じる、どうやら完全に挟まれたようだ「…挟撃か」フィーナさんと背中合わせに立ち、話しかける「フィーナさん、これで遠慮する必要は無いでしょうまず、こちらから最初に先手を取らせて貰いましょう先手必勝です、行きますよ!」闘気を右手に集め、普段牽制で使う気弾より大きめの気弾を形成するただ、威力より音と光を強く発する閃光弾的なものだがその閃光気弾を洞窟の入り口目掛け投げつける「さぁ、出てきて貰いましょうか!!」
「あらら?」前方に戦闘の意識。それはいい、先に始まってしまっていてもかまいはしないが。「これって気付かれてますね」その意識は間違いなくこちら側にも向いている。さらには敵の気配の向こう側で突然の光の炸裂、そして衝撃音。それは相手を燻りだす、あるいは五感を奪うためのものか。だが、しかし。「アン―――」こちら側からは、2つの影がよく、見える。瞬間、夜の怪異は手にした二振りの小刀を構え、手を放す。刀は宙に浮いたまま、その機能を果たさんと微調整を「この距離では名乗りを上げたりは出来ないのが惜しいかしら かわりにこれが挨拶ってことで勘弁してね、帝国の方」
時計の針の2つの刀。片方は距離を測るように、片方は向きを読むように。そして怪異の背後には折り紙で作られた、折鶴が浮く。「私は届ける者。魔弾をひとつ、お届けしますね」刀は照準、折鶴は砲弾。射手は夜の怪異。狙うのは―――ヒトの娘。「―――アングリフ」命令と共に折鶴が射出される。弾速はまさに凶弾。しかし弾筋は直線。警戒を持つ相手にかわせないものではない。もっともかわせば・・・背後に到達するが。「さぁ、これはただのご挨拶。 どうでるか、楽しませてくださいね」
戦闘態勢をとった私を見たライさんが背後に向かって攻撃を開始しますいよいよ本格的な戦いの幕が上がったようです前方から敵の気配と共にさらに暗い闇が迫ってきますそして敵の気配はその中より感じられます「ライさん・・・気をつけて下さいね」私はそう呟くとこちらに向かってくるものを弾き飛ばす為に大きめの気弾を1つ発射しますそして、両方が接触して破裂するとその直後に闇に蠢く気配に向かって走り出します「さあ、ではお返しですよ・・・」私はその気配めがけて、さらに数発の気弾を発射しました・・・
遠慮?男の帝国兵の声に、相手が何か仕掛けてくるだろう事が分かる。攻撃の溜めの一瞬、岩陰から飛び出して一気に駆けた「お望み通りに」相手の思惑に乗って燻りだされ、生み出される光の中に姿を晒すが、光弾を洞窟の入口へと投げつける男の横はすり抜け狙いは既に女の兵へとルドラム兵からの攻撃を捌いていた女を、後ろから踏み倒してやろうと、その背へ蹴りを見舞う己の後方から眩い光が溢れ、洞窟内に昼のような明るさと、逆に際立つ影とを見せた。この光には夜の怪異も照らし出されてしまうのだろうか。それともより深い闇を見せるのか。そんな興味が湧く
閃光気弾と共に現れた影は自分の横をすり抜け、フィーナさんの背に蹴りを放つその蹴りが届く前にフィーナさんの背を護る為に、蹴りに対して闘気を纏わせた左腕でその蹴りを受ける両足に力を籠め、その蹴りを押し返す防御の為に受けた左腕は多少痛むが大した事は無い即座に剣に闘気を纏わせ、フィーナさんを襲おうとした影に向かって剣を振り下ろした「破ぁ!!」
「僕たちに対する動きは、特にないみたいだね」夜色のフードを被る仲間達の横で、銀色の銃を引き抜いた。小言を口にしつつ、僕も彼らに習って準備を整える。魔術の媒介に小さな杖、いざって時の薬品や小道具。それらを暗い甲板の上で確認し、再び懐に収めた。やがて、程々な積荷を抱えた輸送船を見つけた。甲板には数人の船員がちらほらと見えるが。これから奇襲に遭うだなんて、少しも考えてない様子だ。「水先案内はココまで。襲撃の時間だよ」種の異なる仲間達にそう告げて、銃口を輸送船へと向ける。引き金を引くのは、彼らが火を放ってからでいいだろう。
帝国の病院へは、まだ重傷者は後送されてこない。「みなさん、無事だといいのですけど・・・」つい口をついて出てくる。そろそろ時期だろうか・・・?薬に包帯、応急処置キットをつめこんで準備をする。「ロマも行きます。」小さなエルフは飛び立った。
「思わぬところで足止めをくったなぁ・・・」ようやく見えてきた洞窟を目指しながら、忌々しげに呟いた。敵のトルスタンへ向かう兵をみつけ、その一団を迂回するコースを選んだのだ。出来るだけ、多対一の戦闘で体力を消耗するのは好ましくない。単騎侵攻なのだ。「さて・・・」洞窟の入り口に馬をとめ、耳を澄ます。中から微かだが、剣戟の音が響いていた。トルスタンからも、いつの間にやら煙が上がっている。「どうするか。中に確か、2人入ったよな?通路のそう広くない洞窟内なら、多少相手の数が多くても対応はしやすいか?」中の正確な人数がわからない以上、なんともいえなかった。
ふと、目の端、洞窟の上でなにやら動くのを見た気がした。反射的にボウガンを構える。(でかい。人間種ではないか?今いちよく見えねーな)太陽の逆光が、観察の目を邪魔する。「とりあえず、威嚇して名乗らせる!!射撃は苦手なんだがな・・・」矢を2,3発、相手の目に入るように放った。「動くな!そこから降りて来い!」そう声をかけ、ゆっくりと馬を下がらせ、槍を構えて警戒しながら相手の反応を待った。
小舟はゆっくりと港へ入り、幾つかの船の前を通り過ぎると、一隻の船の近くで停まった。「水先案内はココまで。襲撃の時間だよ」ケーシィ殿の言葉に、私は前方の船を見上げる。甲板に幾つか人影が見えるが、特に警戒した様子は無い。「よし。矢の射程距離まで船を進めてくれ」私達は静かに輸送船へと近付く。射程距離までもう少し。そう思った時、二翼が叫んだ。(待て!結界がある。風と水の二重結界だ)風の加護が二翼に危険を知らせた。
「簡単に入らせてはくれないか。 甘く見たのは我々の方だったな」結界に触れれば立ちどころに気が付かれるだろう。だが触れねば攻撃が出来ない。私は覚悟を決めた。「結界を抜けた瞬間に攻撃を仕掛ける。 弓隊は船上から火矢を射よ。 槍の2名は私と共に敵船に乗り移るっ」船は結界へと進む。結界に入った瞬間、目の前が霧で真っ白になった。目くらましだ。そして押し戻す風の力。船の周囲の風を無効化しつつ、結界を抜ける。「撃てーっ!!」叫ぶと同時に私はマントを脱ぎ捨て、翼を広げた。「共に行くか!?」そしてケーシィ殿に手を伸ばした。
『よし。矢の射程距離まで船を進めてくれ』ティエンマさんの言葉に頷き、水の精霊に合図を送る。小舟を更に輸送船へと近付け、いざ乗り込もうとした時だ。ピリリと、嫌な感覚を髭で感じ取る。その答えを口にする前に、二翼さんが答えてくれた。風と水の二重結界……、魔術師である僕も気付くべきなのに。『ま、修行不足ってこったな』「僕の心を勝手に読むの、罰則の一つに加えようか」嘲るイヤミな亡霊を十字架の罰で脅している間、有翼の兵達に指示が送られる。その内容を察するに、この結界を突き破って正面突破ってところだろう。
「アルプ……、使うのは初めてなんだけど」甲板にいるのは、ただ荷物を運ぶために配置された船員だ。そんな相手を一方的に殺していくのは、少しだけある良心が痛む。故に今回選んだのは、とある夢魔の名を付けた催眠用の魔弾だ。小舟はやがて結界に触れ、その中へと突き進む。途端に視界は霧で覆われ、強い向かい風が吹き付けてきた。けれど風はすぐに止んだ、風の民であるティエンマさんが封じているのだろう。そして、襲撃の合図は下された。弓兵は舟から飛び上がり、輸送船の甲板へ火矢を放つ。僕も舟から飛び出そうとした時、大きく広がる白い翼が見えた。
『共に行くか!?』僕へと差し出されたのは、ティエンマさんの手。声の大きさに少し驚いたけれど、今更迷ってはいられない。対の手で彼の手を掴み、もう片方の手に銃を握り締めた。「落とさないでよ、隊長!」『落っことすなよ、隊長!』叫び返した声は、肉体と魂を共有した悪友の声と重なり合った。それと同時に内から湧き上がる魔力は、僕だけのものじゃない。異郷から訪れたヤマネコ族の魔術師、マフの魔力も混じっていた。戦を目前に控えた"僕達"は、共に行く戦友へ獰猛な笑みを向ける。その獣の左目は、深い青から眩い黄色へ色を変えていた。
初弾は容易くかわされた。続けて反撃。闇に向かうに恐れる気配の欠片もない。「んんん」怪異は僅かに首をかしげる「あの子、私より強そうかも」反撃の気弾を、折り紙で作った蛙に食わせながら、怪異は己の刀をもう一度手に取った。照準はもうない。狙いなどつけない。「ふふ。なら、私を屠ってくれるでしょうか」自虐的な笑い。その背後には、今度は数十の緋色の折鶴。挨拶はおしまい。加減は相応しくない。
もとより、彼女の弾丸は単発の威力で押すものではなく。その数で相手を封じきるためのもの。同胞の姿を確認すると、折鶴には標的を過ぎればただの紙に戻るよう呪を掛けて。向かってくる女にむけ、でたらめに撃ち放った。「これでも越えて来るのなら、顔もよく見える距離になるし 名乗りでも上げてみるのも楽しいかもね」
闇に蠢く気配に向かって走り出した直後ライさんと戦闘をしていたと思われた相手が突如、無防備に晒していた私の背後に向かって攻撃を仕掛けてきます(しまった!防御が間に合わないっ!)踏み倒されるのを覚悟した次の瞬間ライさんが2人の間に入り込んで攻撃を防ぐとさらに相手に向かって剣を振り下ろしていきます「ライさん、ありがとうです!」私は彼の後姿に礼を言うと再び闇の怪異と対峙します(それにしてもかわした形跡も無いのに気弾の手ごたえがまるでありませんでしたね・・・)相手が気弾を吸収した事は背後からの攻撃に気を取られ、私は気づけずにいました
そこへ、今度は闇から出でた沢山の緋色の折鶴が私に向かって攻撃を仕掛けて来ます「くっ!数が多すぎます!!」私は冷気弾を展開し投網のように折鶴に放ちます冷気の網に引っかかった鶴が次々と地に落ちる中数羽の鶴がその網目をかいくぐってきます私は、それを両腕の篭手で叩き落としていきましたが最後の一羽が脇腹に命中してしまいます咄嗟に気の防御を展開しますが拳で殴りつけたような衝撃が走りました「ぐふうっ!」痛みに思わず声が上がり屈み込む私・・・しかし痛みを堪え体勢を立て直すとそのまま闇の中へと飛び込みますそして、素早く気配の背後に回り込みます
「さっきの痛みの分を倍にして返させて貰いますよ!そして、この闇の中から引きずり出してあげます!」私はその気配の元に向かって気を乗せた右脚を思い切り蹴り込みました・・・
岩と岩の間を飛び移る度に、日の光を受けた緑色が黒く滲んでいく。後方を困難ながらも数名の獣人が追いかけている。追いつくまでにはやや時間が掛かるだろう。大岩の影、降りる場所を選んだオオトカゲは、手足を上手く使い、岩にしがみ付く。…っ!突如直線が目の前を連続で過ぎる。光を一瞬遮られたが、直ぐにそれが此方に向けられた矢であることを理解する。『動くな!そこから降りて来い!』男の声。どうやら敵兵と遭遇したようだがなんとも…難しい注文…。
緑の巨体は高音の咆哮一発。軟体的な動きを見せたかと思えば高々く飛び、引力に任せ、その重量を試すかのように地面に打ち付ける。低くなった重心の蜥蜴とそれに乗る黒い鎧が現れたのは、土煙が過ぎた後だった。槍を構えた若い男を確認。「1人か…ドラバニアに脈々と続く猛き心か…。」小さく漏れたのは羨む言葉と敬う言葉。長き時をただ見続けるだけだと思っていたが、時折出るのも…悪くはない…。諦観の目と驕りの剣では腕が鈍る。相手をして頂こうか…。「…。」無言のままに、腰に携えた黒剣を引き抜き臨戦態勢を取った。
「おっと、」女の背を狙った蹴りが男の腕に受け止められる。「速いな」自分が横を通り抜けている間、男は気弾を放っている動作をしていたはずだ。そこから私達の間に身体を割り込ませるとは、己の動きが愚鈍であることを加味しても、身のこなしは相当なもののようだ押し返される力を利用して後ろに跳び退り、距離を空ける。斧の長柄を構え、斬り下ろされた剣を受け止めた。「っ…」ただの剣戟ではない。剣の流れを斜めに逸らす。何やら力の乗った威力に、剣を押し返しきれずにたたらを踏んだ。
後方…洞窟の入口の方から騒がしい声と音が響く。帝国の援軍だろうか。だとすればさっさと決着をつけるか、向こう側へ逃げなければならないひら、と視界の端を何枚もの紙切れが舞った。不思議な光景だ。あのルドラムの兵の魔法か何かだろうか「帝国兵」ちらと女にも視線を移し、構えながら問う。「女をあれから守らなくていいのかい」ルドラム兵からの攻撃に声を上げる女。そちらに気が散ってくれれば恩の字。散らばる紙を男へ向かって舞い上げるように、斧を斬り上げながら突っ込む
散らばる紙を舞い上げながら、男は斧を振り上げてくる真正面、闘気を纏わせた剣でその振り上げてきた斧を受け止め、振り上げられる力を受け流しつつ、距離を取る確かにフィーナさんの悲鳴が聞こえる…だが…「信じているから…振向く必要は無い」洞窟に自分の声が響くそれ声は仲間を励ます為、そして…自らを鼓舞する為に「信じているから背中を任せれる、そういう貴方こそ…背中を任せられる人が居ますか?」剣に籠める闘気を更に強くする、剣が闘気により一回り大きくなる男を見据え、上段に剣を構え、振り下ろす「心の絆で支えられる力は、簡単には砕けはしない!!」闘気の真空刃を男に向かって撃ち放った
私が伸ばした手を、ケーシィ殿はしっかりと掴んだ。「落とさないでよ、隊長!」『落っことすなよ、隊長!』重なって聴こえる声。片手であろうと人一人ぐらい落とすものかと、笑って小舟の縁を蹴り、空へ飛んだ。正面から船上に乗り込んだ弓隊と同じ場所からは飛び込まず、水面スレスレに飛んで、船の側面へと回る。そして一気に上昇し、船上へと出た。部下二人は甲板に降り、異変に気が付いた兵士を桟橋で迎え撃つ。私は更に上昇し、ケーシィ殿を掴んだ手を思い切り振り切った。「猫は高い場所に立った方が有利なんだろう。 そこから攻撃を頼むっ!」彼を投げた先は、船の中央に立つマストだった。
(大雑把過ぎんか、ティエン)二翼が呆れた声で言う。「猫族の本能に賭けるさ。 結界を突破したから、すぐ増援が来る。 もたもたしている暇はない。私達の持ち場は後ろだ。 急ぐぞ」私は振り返らず、そのまま船の後方へと向かった。船の後方には、荷物の運搬口がある。そこから新たな敵が船内に入ってきたら、こちらが不利だ。船尾へ辿り着くと、私は下へ飛び降りた。荷物の運搬口は大きく開き、やはり結界を突破されたことを知ったルドラム兵が、次々と駆け寄ってきたところだった。
既に数人が船内へ入っていく様子が見えたが、それを追う余裕はない。前方から来る魔法使いの集団──この船に結界を張った輩──がやってくる。私は魔法に対抗する手段がない。だからと言って、魔法を使えぬ身で甲板に残っても、船を破壊する術もなかった。最初から私のすべきことは唯一つ、敵の足止めだ。私は閃光弾を取り出した。強い光は獣に有効だということを、戦地で実証済みだ。その時の相手はケーシィ殿であったが。私に向かって、魔法使い達は詠唱を始める。こちらもそれをむざむざさせる訳もなく、手にした閃光弾を思い切り床へ叩き付けた。
白い翼は大きく羽ばたき、体は宙を浮く。その後の進攻ルートは、僕の予想の斜め上を行った。水面ギリギリを滑空したと思えば、甲板へ上がるように急上昇。挙句の果てに、僕の体はぽーんと宙へと投げ飛ばされた。『猫は高い場所に立った方が有利なんだろう。そこから攻撃を頼むっ!』確かに猫は、居る位置の高低差で格付けをする獣だ。けど足の踏み場がないようなところで、胸を張れるワケ……。動揺しながら周囲を見回すと、丁度いい位置に帆を張る円柱が見えた。咄嗟に銃を口に銜えて、両手の爪をその柱に突き立てる。船の後方へと向かうティエンマさんの後姿を見て、やっと今の自分の状況を把握した。
「な……、投げないでって言うべきだったかな……」少々引きつった声で、情けない言い草を呟く。左手の爪は柱に食い込ませたまま、小さなナイフを取り出す。それを柱に突き刺して、その上に足を乗せ、即席の足場を確保した。「えーっと……、まずは結界をどーにかしないと」風の結界はティエンマさん達が解呪してくれたようだけど。水の結界……、この濃い霧の方は僕が対処しないとダメだ。有翼人の視力を疑うつもりはないが、暗所の中では敵が優位なのに変わりない。左手を柱から離してから印を組み、結界の解呪へ取り掛かった。「荒れ狂いし魔道よ、その咆哮を塞ぎ我が手に集え」
霧は少しずつ、けれど確実に晴れていく。結界の魔力は予想より高く、完全に消すにはまだ時間が必要だ。でも、仲間の視界は少しだけ回復するだろう。当初の予定通り、弓兵達は甲板へ火矢を放ち始めた。強い光と熱は、燃えるもの全てを飲み込んで侵食していく。奇襲を受けたネコ族の船員達は、あたふたと甲板中を逃げ回っていた。僕自身もあたふたしたい気持ちを堪え、結界の解呪に勤める。その傍らで火から逃れるために、海へと飛び込む船員たちの無事を密かに祈った。それから背後から別の強い光を感じて、ふと振り返って見れば。甲板へと進攻した幾人かのルドラム兵が、こちらへと攻めて来るのが見えた。
地響きとともに立ち上がった土煙の中から現れたのは、オオトカゲに跨り甲冑で身を固めた男。(ルドラム特有の蜥蜴か?でかいな・・・)初めて合間見える敵に、率直な感想。馬に乗る自分と、そう変わらない身長、がっしりした体。(ハズレクジ引いちまったか。手ごわそうだ)無言で剣を引き抜く相手の動作を見つつ、内心で苦笑いを一つ。「戦場だ。お互い、悠長に名乗る事もねぇだろ。いくぞ!」おどけた様に相手に言って見せ、またがる馬の腹を蹴った。
相手の手の内も読めず、体格的にはこちらが不利。長期になれば、やっかいこの上ない相手には違いない。とすれば、まずすべきは先手を取り、少しでも相手の手の内を引き出し、可能であれば短期で雌雄を決する事。「簡単に終わってくれる相手じゃねぇわな」相手から滲む雰囲気が、それを物語る。短期で雌雄を、等と淡い幻想を打ち消し、目の前の敵に全神経を集中させる。「まずは・・・ご挨拶だ!!」馬が槍の間合いに踏む込むなり、敵の体の中心線、腹、胸、顔の急所を狙って、素早く3段突きを繰り出した。
被弾数はたったのひとつ。手加減なしのはずの砲撃で、ひとつだけ。身体能力ではこちらがはるかに劣っている、怪異は距離を置こうと後ろへ―――しかし「!!」その動作は相手の踏み込みには遅すぎた。「まだ見えてもいないでしょうによくもっ」無数の折り紙が舞う。しかし形を編むほどの暇はない、呪いを込めて硬化しただけの防御。『・・・この闇の中から引きずり出してあげます!』宣告するその攻撃を防ぎきるには至らない。防御はまさにただの紙の如く蹴散らされ、そのまま夜の怪異を直撃した。「うふふっ・・・あははっ」その威力に弾き飛ばされながら、口からは悲鳴ではなく笑い。
相手の言葉通りに闇より引きずり出された怪異は、僅かに開いたその間合いで。優雅に相手に一礼した。「始めまして、帝国のお嬢さん。 私は夜の怪異、キシリエルリズルーシュ。 長いからキシュと呼んで下さいね」場違いなほど穏やかに、けれど彼女には戦場さえも舞踏会と変わらないが故の挨拶を。
自分を蹴り飛ばした帝国の女性に礼をしながら。夜の怪異は撃ち放った緋色の折り紙のの呪いを再構築する。この場にあるのは己だけではないのだから。自身はただこの夜を楽しめれば戦の勝ち負けなどどうでもいいが、同胞の援護を忘れはしない。phandemの斧の風圧で。舞い上げられた折り紙は再び折鶴へと姿を編みこまれる。怪異とて眼前には強敵。距離の離れた折鶴に、込め得る呪いは大きくはない。折鶴の威力は先ほどよりさらに弱まっているが、完全な不意打ちとなれば。「これが精一杯の援護ですが」心の中で呟いて。舞い上げられた折鶴は、そのうちに残る少ない呪いでライフィールに襲い掛かった。
私の攻撃は相手の楯のようなものを蹴破り敵を蹴り飛ばしますしかし、相手は効いていないかのように笑いながら自己紹介をしてきます「キシュさんですか・・・私は、帝国の戦士でフィーナと申しますよろしくお願いしますね」暗闇で相手の姿はほとんど見えませんそれでも、優雅に余裕を感じさせるその様は戦場で無いかのように感じさせます私は自己紹介を返しつつも心の動揺は隠せませんでした・・・(手ごたえはまずまずあったんですが・・・私の攻撃が効かないんでしょうか・・・?でも、この闇の中では良く分かりませんしとにかく、こちらから仕掛けるしか・・・)
その時、背後で何かがざわめく様な気配がします敵が何かを仕掛けたのがわかりました(まさか、ライさんに・・・!?)私は思わず背後を振り向きますが闇の中からでは気配は感じられてもその姿は確認できません(これでは援護のしようがありませんね・・・なら、今はライさんを信じて私は、この強敵に集中しないと・・・相手を早く倒して、この闇を払拭するだけですね・・・)私は意を決すると、振り向きざまに相手の気配に向かって気を込めた右拳を放ちました・・・
闘争において互いの力を推し量る洞察力。如何なる状況にあっても、切り抜け、生き残るには必要なもの。だが、それは歩を進めなければ分からない。この男の様に。馬上の兵は、臆することなく。槍を向けてくる。『まずは・・・ご挨拶だ!!』聞えるや否や、駆け出す馬の脚は速く、槍は突き上げる様に繰り出された。腹への一撃は手綱を引き蜥蜴の頭と上体を反らしてかわしたが、突は胸部に続き、腰を捻転し僅かに掠める。黒い鎧のこけらを散乱させた豪槍。洞窟の手前で馬の声と蜥蜴の声が響く。
…くっ!踏ん張りながら息を殺す自身の動きと、槍との接触の挟撃。傷は浅いが苦しい。勢いは落ちることなく顔面への三撃目、断続的な金属音。剣で受け止める様に鍔を槍に擦り逸らし退ける。ダークブルーの髪の毛が槍の風圧で揺らぐ。迷いがない…危険だな…。意識の外、間髪を入れず反撃に移る片腕。その間合いのまま、蜥蜴は体を回転させ撓らせた尾を、兵と馬諸共吹き飛ばす様に振り回した。「随分な礼…面白い…」心も無い錆付いた武を誤魔化すには、相応の言葉だったろうか。蜥蜴に助けられている此方に余裕はない。
閃光弾を暗闇で直接見てしまっては、私自身も視力を回復出来ない恐れがある。投げつけた瞬間、翼で前を多い、更に固く目を閉じ、5秒数えてから瞼を開く。前方には、両目を押さえてもがく魔法使い達がいた。私は一番手近な猫族の二人の首根っこを捉まえた。「うにゃっ!?」二人は何が起きたか分からず、突拍子も無い声を上げたが、お互いの頭をがつんとぶつけられ、すぐに気を失った。近場に居たもう二人も同じ方法で気を失わせる。もう一組と足を向けた時、氷の刃が私の頬を切り裂いた。状況を把握した魔法使いが、目が見えずとも気配で察し、私に魔法の刃を向けたのだろう。
単身飛んできてしまった。静か過ぎる・・・本当に戦いが起こっているのだろうか?辺りに気を配りながら歩いていると、ふと気配があった。茂みの方だ。走り寄ると茂みから唸り声がきこえた。「グルルルルル」威嚇するように。一人の獣人が腕を押さえて蹲っている。ぱっくりと口を開けた傷。思わす飛びつく。「消毒して、傷を縫います!」
刃のこすれる、金属音が辺りに響く。「ぅお・・・と」綺麗に受け流された斬撃に馬上で些か体制を崩すも、なんとか持ち直すと、その目に入ったのは相手の動き。オオトカゲの太い尻尾が唸りを上げる。直撃しては、馬がダメになろう一撃。「…っ!?飛べっ!!」とっさに体が動く。馬のたずなを引き、迫る尻尾をすんでで上にかわさせ、着地後すぐさま間合いを取り直して向き直る。(っち・・・厄介だな。尻尾の分、守備範囲が広い。常に蜥蜴の顔の方に入れればあるいわ・・・いや、向こうも野生じゃない。厳しいな。)目まぐるしく相手の弱点を探すが、流石にまだ情報が少なすぎる。
(何より、まだ乗り手の腕がわからん。魔法は使えるのか?飛び道具は見たトコ持ってねぇみたいだが・・・)だが、上体をそらしただけで2撃をかわし、一撃を受け流す。腕はなかなかのものだ。こちらも如何せん、情報が少ないが。「とりあえず、蜥蜴は避ける!乗り手は倒す!コレだけだ!」至極単純明快な答え。悩むのは止めだ。後でいくらでも出来る。今はただ、突き進むのみ。「もっかい!いくぞ!」気合を入れなおし、槍を構えなおすと、再び馬の腹をけって飛び出した。ただし今度は、右に、左に。厄介な尻尾に対応させず、乗り手に出来るだけ近づけるように・・・。
『団体様の御出座しだぜ』「袋の鼠、とでも言いたそうだ」甲板に上がってきた団体様は、指で数えられる程だからまだ良かった。しかしその向こう……、仲間が足止めしている先には多くの敵が控えている。都の警備隊はどうやら、ここで僕達をまとめて叩くつもりらしい。霧も大分晴れてきたので、左手の印はここで解く。それから自分も攻撃に参加すべく、二丁拳銃を取り出し。二つの銃口を敵の先陣へと向け、躊躇いなく引き金を引いた。放たれた催眠弾は、敵兵の腹部や胸部辺りに突き刺さる。それを受けた彼は、ゆっくりと気だるそうに倒れていった。いつもより少し多めに魔力を込めたから、すぐには起きないだろう。
ふとティエンマさんが殿を勤める後方を見やる。彼と対峙する魔術師達は、皆々眼を固く閉ざしていた。先程感じた強い光は、前の戦でも見舞った閃光弾だろうか。しかしネコ族は、嗅覚と聴覚に優れた獣。ある者は彼の気配を察して、氷結の魔術を彼に放つ。他の連中も同じような行動を取れば、彼は蜂の巣だ。銃口を敵陣へと向け、銃身が焼け付くほどに乱射した。弾の幾つかは詠唱を始めた敵に当たり、その意識を奪っていく。それは百発百中とはいかなかったが、攻撃をあらかた封じたつもりだ。後のコトは彼に任せて、僕は目線を甲板に戻す。進軍する敵を迎え撃つべく、銃に魔力を込め直した。
ふむ、と男の言葉には気の無い返事をした「お前の言う"信じている"には興味はないなぁ」わざわざ聞こえるように、嘲笑うように言ってみせるほら、と見えぬはずの暗闇を示し「お前は振り向かないが、彼女は振り向いたお前は彼女の盾になったが、彼女は一人で戦うに精一杯」――まるでちぐはぐだ。吐き捨て、振り下ろされる剣へ斧の刃をかち合わせるしかし今は剣に競り勝つ必要は無いただ数瞬、相手の動きを止めさえすれば良い戦場で組むには即席の仲間だが、中々、機転がきくものだ周囲に舞い上がった紙が数枚、呪を受けて形作られる「砕けろ」剣から溢れ出た真空の刃が腕を簡単に切り裂いていった
こちらに斬撃を放つ男と呪いによって鶴の形を形成する紙しかし呪いの方は威力は低い様だ…「お前は振り向かないが、彼女は振り向いたお前は彼女の盾になったが、彼女は一人で戦うに精一杯」嘲笑うかの様に言うが、世の中即席のマンセル程事故の起こり易い物は無いそう、一時的に孤立させられる危険性を孕んでいるのだから「貴方の剣を受けるつもりは無いですよ、この闇を生み出してる張本人に参上して貰います…元々、2対2の戦闘は相棒をいかに上手く、そして動きやすい様に立ち回るかで、勝敗が分かれるのですからね」
一気にその場から離れ、形に悪い気弾を男の足元に向かって転がす今度は爆発力を重視しているので、転ぶ位はするかもしれない先程のような閃光弾と勘違いしてくれればこちらとしては御の字だ(ならば、私はフィーナさんの放った攻撃に合わせれば良い!!)フィーナさんの放った拳に合わせる様に、闘気を纏わせた飛び蹴りを気配のする場所に向かって放った
風の魔法であれば中和出来るが、その他の魔法は防ぎようが無い。救われたのは、船に火が及ぶのを慮って、彼らは炎の魔法を一切使わなかった。私は剣を抜く。先程まであった結界が作り出した濃霧も、徐々に消えつつある。お陰で敵の姿を、はっきりと捕らえることが出来る。私は魔法使い達に向かって走り出す。刃が届くのが先か、魔法が貫くのが先か。そう思った瞬間、上方から援護の射撃があった。目の前の魔法使い達が、次々と倒れていく。「ケーシィ殿か…有り難い」彼は水の結界を解除し、甲板に残っている兵を一掃したようだ。
「ケーシィ殿に伝達を」私は前から更にやってくる敵を見据えたまま、二翼に言伝を頼む。(聞こえるか、ケーシィ殿)二翼が風に乗せて言葉を伝える。(足止め出来るのも僅かだ。貴殿にやって頂きたいことがある。 船の帆を…焼き払って頂きたい)それは、彼の足場を無くしてしまう危険な方法。だが船の推進力である帆を焼けば、この船は使い物にならない。(呼べば我らは助けに参る。我らを信じてくれまいか)弓で悪戯に甲板を焼いても、船に出来るだけ早く決定的なダメージを与えなければ、我々の身が危ない。獣の身であるケーシィ殿にそれを頼むのも酷だが、今はそれに賭けるしかなかった
(聞こえるか、ケーシィ殿)ふと風に混じって聞こえた声は、二翼さんのモノだ。焼け付いた銃身に息を吹き掛けながら、耳を傾ける。次に下された指示に――。(船の帆を…焼き払って頂きたい)手にした銃はすっぽ抜けて、甲板へと落ちていく。停止しかけた思考が回復したのは、下で銃が砕ける音を聞いた時。その指示の手段と理由は、ちゃんと理解できる。甲板にちらほら見える炎は、小火程度だからまだ耐えられた。けれど、広がった帆に群がる激しい炎の大壁を目にして。僕はその後も、自我を保っていられるだろうか。脳裏に浮かぶのは、炎に巻かれて狂った自分の姿……。
『船首に行きな、そこにゃまだ火はない』判断を渋っていると、頭の中で相棒の声が割り込む。そちらの方に眼を移せば、確かに火は燃え移っていない。言葉通りの指示に身を任せ、火の手のない甲板に飛び降りた。『まだ火が怖いのか? そんなんじゃ大魔導師になれねぇぞ』「僕の専攻は水と風と闇なんだってばぁ!」悲鳴に近い声で騒ぎながら、降りかかる火の粉を風術で払う。やっとの思いで船首に辿り着けば、『耳畳んで目ぇ閉じてろ』と相棒が言う。『レッドクレストッ!』その呪文の名を聞いた瞬間、僕は素直に耳を塞いで目を閉じる。宙に浮かび出た赤い紋章が、炎の壁を築き上げる様なんて見たくなかった。
予想よりも馬の脚は強く、撓った緑の鞭を飛び越えた。一呼吸の間。己がそうであったように、敵将も1つの隙も逃さぬ覚悟。探りを入れる目も鋭い。『もっかい!いくぞ!』どこか突き抜けた心からの声。澄まさずとも聞こえる簡単な音と共に、目の前の男は動き出す。
左右に重心を揺らしながら、尾の狙いを定めさせない動き。次も懐に来るか…ならば…。1つの制約にして限られた唯一の魔法。黒い剣士の口はその文言を囁く。「受け取れ・・・・天魔…。」水平に広げられた右腕は、張り詰めた魔力を帯び、淡く赤く光る。1本の竜巻の様な炎の柱が地面から噴射。1本から2本、2本から4本と歪ながら、敵を捉えんがために増えていく。術者から離れてゆくほど威力も高さも落ちていき、柱と柱の隙間も目立つ。だが、近距離であれば数本でも命中する代物。
トルスタンより、医療団がマロロ洞窟へ向かう。先行して飛んでいた精霊は、あるものを見つけて舞い降りた。一人の女性が獣人を手当てしている。「ロマジーナ? 一人でここまで来たのか」慌てて救護セットを手渡しながら、手当てされている獣人を見る。獣人の兵士は…正直、ルドラム兵なのか帝国兵なのかわからない。だが…「うん、まあ、…死にかけてるのを手当てしない理由はないわなー」うんうん、と精霊は頷いた。獣人の傷を良く見ると、何か大きな傷が目に入る。「何だろこれ。でっかい動物にでも引きずられたような傷だな…」首を捻り、ふと周囲を見渡した。
敵との距離が詰まる。尻尾での迎撃も、ない。上手く懐に入れそうだと、思ったその時だった。相手の上がった腕が、淡く光る。「受け取れ・・・・天魔…。」いやな予感と、静かなその声が耳に届いたのはほぼ同時。慌てて馬を止めようとした瞬間だった。目の前に現れたのは灼熱の柱。まるで相手との間にある壁のように、次々に吹き上がるソレに、馬は驚き、恐怖し、暴れ始める。「くそったれ!やっぱり隠しだまがありやがったか!」馬を必死に御しながら忌々しそうに吐き捨てる。再び距離が開く。しかし先ほどと違うのは、向き直ったその体や顔に、無数の火傷を負っていた。
(厄介な。本当に厄介な。甘く見すぎてたか・・・。)拙いながらも、ある程度なら自分の魔法でかき消すぐらいは出来ると踏んでいた。が、現実は甘くは無く。予想をはるかに超えたレベルの魔法。「対抗策がねぇ。なら、どうするか?」自問自答。やがて一つの結論。「逃げるのはやっぱ、性にあわねぇモンなぁ。コレだけ火傷負っちまったし、も少し位かわんねーや」そう言い聞かせるように呟くと、覚悟を決めたように火柱の向こうの敵を睨み、再び火柱に馬を走らせる。
駆けながら、口は呪文を唱える。自らの体を、薄い氷壁が囲み始める。簡単な氷雪系魔法。少しでも火を抑えてくれれば御の字。(相手は大技出して油断もあるはず。そこを突く!)今一度無茶をする覚悟を決め、馬が火柱に近づいた瞬間自らその中に飛び込んだ。氷壁が、嫌な音を立てて壊れていく音がする。(持ってくれ!もうちょいだから!)やがて、火傷を酷くしつつも火柱の向こうへ躍り出る。「やってくれるじゃねーか!」腰の剣を抜き、手に持った槍を渾身の力を込めて、敵の乗る蜥蜴に投げつける。まずは足を潰す腹だ。更に、相手が蜥蜴を操作する暇を作れないよう、上から全体重を乗せた斬撃を放った。
次々とやってくる敵兵。長引けば、少人数の我々が不利だ。魔法使い達は火を消す為に、半数は桟橋の方へ向かったようだ。(隊長!敵兵が増えてきました。あといか程ここを守れば…っ)桟橋の前を死守する部下からの声が聞こえる。2人ずつしか入れない狭い桟橋でも、切れ目なくやってくる敵兵相手に疲れが出て来ている。(今少し踏ん張ってくれ。火が回ったら指示を出す)魔法使いの援護が入れば、そこも長く持ちそうにない。次にやってきたリザードマンと剣を交えながら、私は祈るように呟く。「早く…頼む…っ」
突然、後ろがオレンジ色に明るくなった。敵兵達が呆然と燃える空を見る。剣を交えていた兵の動きが止まった隙に、私は剣を弾き飛ばした。(弓兵!お前達の近くに居るケーシィ殿を保護し、 小舟へ引け!槍兵も撤退せよ)(はっ!)槍兵は懐から小瓶を取り出す。中身は油だ。それを彼らは足元で叩き割った。これで近くまで回って来た火が、自分達の代わりに足止めしてくれるだろう。「ケーシィ殿っ!!」弓兵2名はケーシィ殿に駆け寄り、がっしりと両腕を抱える。「飛びますよっ!」2人はふわりと宙に浮いた。
「フィーナさん、素敵なお名前ね」目を瞑って記憶に刻む。本に記すように。戦場で目を閉じればまるっきりの無防備、けれど帝国の娘は背後の気配を感じたのか振り返っている。苦し紛れの援護射撃が、こちらの役にも立ったらしい。「・・・ユーバー」その隙に新たに呪を綴る。もう一人の援護に走るようならその甘さに付け込むませてもらう。だが帝国の娘はすぐに向き直る。その瞳に映るは夜闇にでも揺るがせないモノ、信頼か。「怪異を相手に素手でなんて」なにが気に障ったのか不機嫌に怪異が唸る。「どれだけ勇敢なのよ・・・ヘーァファレン・・!?っっ」娘の繰る拳にあわせ、呪に命令を下そうとした瞬間。
怪異は己の甘さこそを悔いた。帝国の娘の背後から、もうひとつの攻撃。怪異から見ても疾風のごとき速さ、合図したでもなくのその連携。「・・・気に入らないったらっ」最後まで言わせてももらえない。こちらは呪の最終準備中、もとより近接戦闘など嗜み程度の怪異が、不意を討たれて避けられるはずがない。拳撃、蹴撃。双方の直撃に「―――っは」戦闘は、危機は甘美。けれど先程の様に笑えるだけの余裕はない。何とか空気だけを吸い込んで「・・・っりぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」夜闇を纏うもひとつの呪。ならばその夜闇が、彼女の意に従わない道理はない。
悲鳴のごとき命令に辺りから闇が奪われる。光が届いていないはずの洞窟さえ、闇を奪われ陽がさすかのように視界が開けて。かわりに、怪異の周りには無数の黒い折り紙。それは次第に集まり形を成す。人の体ほどの巨体の―――黒い狼が織り上げられた。「フィーナさん、それとそちらの殿方。 夜の獣にさえ素手でのぞむのかしら? この子はちょっと気が荒いわよ」もっともそれは・・・はったりのたぐい。闇を払って見せたのも演出、実際に狼の力はこの二人に及びはしまい。『二人がこちらに向かうなら、背後はどうするつもりかしら?』口にしない本当の問いかけが、彼らをきっと襲うだろう。
私が右拳を放つとほぼ同時にライさんが相手へと飛び蹴りを放ちます相手は直撃を喰らって声を上げますその直後に私達を覆っていた闇が消えていき本来の洞窟の明るさ・・・いえ闇が本来の暗闇をも吸い取ったように洞窟の視界が広がり、目の前に青髪の女性が現れます(見えないままでの戦いが続いていたら闇の中で弄られるかもと思いましたがこれで、その不安も危惧に終わりましたね・・・)しかし、少しだけ安堵する私の目の前にまるで、彼女を護る様に黒い紙が舞いそれが大きな黒い狼となって私達の目の前に立ち塞がります
(なかなか強そうな狼さんですね・・・ただこちらに集中し過ぎるとまた背後から急襲される可能性もありますし・・・)私の脳裏に、先ほどのライさんと敵の男性との場景が浮かびます(ならば一応牽制をしておきますか・・・!)私は咄嗟に背後を向くと、斧を持つ男に両腕から気弾を連射しますそして、そのまますぐに再び狼に向き直すと気を込めた右脚を狼の腹部めがけて蹴り込みました「私はどんな獣の相手でも勿論、素手でお相手させて戴きますよ!」
剣は引かれ、かち合わせようと振り上げた斧は中を掻く。そのお陰で真空も軌道と威力が削げたのか、出来た裂傷は思ったより軽く済んでいた。傷口を押さえるが、止血までしている時間は無い。場を離れた相手の後を追う。目くらましを警戒して顔の前を腕で覆いながらだったが、それが災いして足元を掬われて転がった「…!くそ…っ」そうして足止めを食らう間に、出来上がっていた数個の折り紙が帝国兵へとぶつかっていく。前に転がる勢いのまま立ち上がり、斧を構え直すと男とすれ違う様に気弾がこちらへ放たれたようだった。
暗闇で良く見えず、気配を感じただけだったが丁度、男へ向かっていた鳥の折り紙が気弾によって弾け飛んだ。それによってできた、気弾のない道を駆ける。「助かった」千切れ、力無く落ちる紙へと小さく呟きルドラム兵――キシュと黒い獣の形へ襲い掛かる帝国兵の二人へと。二人の攻撃を防ぐには間に合わなかった。キシュは平気なのか。確認する間も今は無い事がもどかしい「これで二人一緒に殺してやれるな」背後から纏めて斬りかかる。
耳を塞いでも聞こえるのは、轟々と吼える炎の声。それから少しでも逃れたくて、震えた足は後退りを始めた。火は怖い。相棒は平気な様だけど、僕にとっては恐怖の象徴そのモノだ。満たされることを知らない紅蓮の獣は、触れた物全てを食い尽くす。今でも忘れることが出来ない、あの日の光景――。両腕に突如掛かる重圧。驚いて眼を開くと、目の前の視界は紅一色に敷き詰められていた。相棒の呼び起こした紅き紋章が、あの炎を呼び起こしたのだろう。その後に見えたのは、大きな鳥の翼。体はふわりと浮き上がり、燃える船から遠ざかっていく。両脇を見てみれば、ティエンマさん直属の弓兵が僕の腕を抱えていた。
『念の為言っとくが、暴れんなよ?』炎の壁を目の当たりにして、血の気が引いた顔をしている僕に。高度な炎術に定評のある相棒が、呆れたような声で喋りかけた。本陣への物資配給を食い止めるため、輸送船に火を放ったこの作戦。……あまり実感は湧かないけれど、成功ってコトでいいのだろうか。元々"火を扱う"という考えがなかった僕では、その判断が出来なかった。ちなみに僕と弓兵達は、離れに置いてきた小舟に向かってるんだとか。本日二度目になる空中散歩の最中、僕はずっと周囲を見回してばかりだった。「えーっと……、ティエンマさん…、見失っちゃったのかな……」
火柱は次々と大地から噴出し、術者の視界をも遮った。敵の姿は炎の中に消えた。あまりの熱と光でオオトカゲも怯み目を瞑る。敵のものではないことを理解している、恐れない賢さ。味方であることを誇りに思える。そう脳裏に浮かぶ思いを押し留めながら、赤い光を湛えていた右腕を、じっと見つめる黒い鎧の男。やがて、その光は染み込むように消えていく。よく見えるように炎の柱にかざした指先は、しわが増えて痩せはじめ、萎むように老いていった。力を込め過ぎた代償か己にしか見えぬ幻覚か。いずれにしても右腕が麻痺していることに変わりはなかった。突如、馬の鳴く声。目線を指先から上に向ける。
火の竜巻を突き破り、炎と煙を纏いながら塊が飛んできた。それが敵だと認識するまでには、何もかもが遅すぎた。塊から打ち出された杭は怯んでいた蜥蜴の腹に命中した。悲鳴を上げて乗っている者をも気にせず暴れ、逃げ出す。足の力だけでは蜥蜴を静止させることは適わない。振り落とされるように蜥蜴の背から飛ばされる。刹那。細分化された目の前の光景の中、呟く。…落ちるわけには行かなかったのだがな…。待っていたとばかりに、塊は人の形の影を取り滑空、鋭い切先を一閃。左手一本に任せた剣の盾では、力を込めて相殺させることも出来なかった。肩から腰にかけて一筋の線が走る。
鈍い音と鎧の金具が共鳴して体に響く。そのまま地面に叩きつけられた。「っっぐ!」僅かな声と眉を顰めるだけの表情だが、この男にとっては、それでも人らしくなった証。気絶しなかっただけが救い…十分過ぎる痛みだ…。あぁ・・・そうだったな…。次があることを思い出させる古傷。周辺を見回し近くに降り立っただろう敵を探り、距離を取る為に転がり、揺らぎながら立ち上がる。額から流れる血の匂いと焦げの匂い。右腕が動かないことを悟られぬように、構える。「無茶をする…命…長くはないぞ…。」相手の挙動を見ながら距離を詰める。二つの剣を囲むように周りには炎の残骸が蔓延っていた。
こちらの援護は上手く行き、洞窟の中で作られた闇が洞窟自体の薄暗さに変わる(よし、これで後はフィーナさんに任せても大丈夫だ…必要であれば援護をすれば良い)振向きざまに振り下ろされる斧に対し、横薙ぎの一閃で返す斧で斧を受けたまま、男に向かって話しかける「仲間を見ていないのはどちらですか…?肝心な時に援護が出来ないなんて、洒落になりませんよ」
微笑みを浮かべてみる…挑発と思い逆上してくれるなら、相手の動きは単調になり分かり易くなるのだが、そんな簡単な相手では無いだろう(場数も踏んでる様な相手だ…これ位じゃ揺るぎはしないでしょうね…)受けた剣を引き…二、三歩後方に下がる繰り出すのは剣による突き…男の斧を持った手元を目掛け、剣を突き出した
(隊長は?)風の通信に私は苦笑いを浮かべた。「さて、どうしたものか」後方の大きな運搬口は、当然足場も広く、多くの敵に囲まれ、逃げる隙がなかった。何人目かの敵兵の肩から剣を引き抜いた。こう数が多くては、何人切ったかなど覚えていない。二翼が後ろに注意を払ってくれるお陰で、何とか切られずに済んでいるが、それでも次第に切り傷が増えてくる。(退路を確保せねば…)二翼が言った。だが、剣を振るうだけで精一杯。閃光弾を手に取る余裕もない。多勢に無勢、体力が尽きた時、私の命も尽きるだろう。
「隊長!」上空から叫び声が聞こえた。1本の槍が私の前に突き刺さり、敵兵を数歩下がらせる。部下が私の脇に降り立ち、怒りを込めて言った。「何故お呼びにならないっ!」槍を引き抜き、敵兵に突き付ける。「損な役回りは私だけで十分かと」極り悪そうに言う私を、もう1人の部下が睨む。部下達だけでも無事に国へ帰らせようと思っただけなのだが、返す言葉もない。2人が私の両脇を固めてくれたお陰で、やっと余裕が生まれ、閃光弾を手に取った。「閃光と共に空へ。散開し、各々船に戻れ。いいな?」「はっ!」私は再び地面に閃光弾を叩き付けた。
閃光が辺りを白くし、私達は空へ散じた。魔法や弓矢の攻撃が届かぬ程、上へ、上へ。閃光は暫くの間、敵兵の視力を奪い、闇を照らす船の炎は、私達を空の闇に隠してくれる。私達が最初飛び出した場所、あの小さな船へと向かう。海の闇の中、それを探すのは困難だが、先にケーシィ殿と弓兵達が戻っていれば、声を便りに探すことも出来るだろう。多分私達の姿は、あちらから見れば、光に浮ぶ影のように見えるだろうから。
大蜥蜴の悶える声と、剣に伝わった手応え。狙った以上の成果を確信し、着地する。体中に、なんとも言えない痛みが走る。(流石に無茶しすぎたか・・・)平時なら、そのまま入院の、包帯で包れそうなほどの火傷を全身に負っている。「無茶をする…命…長くはないぞ…。」片手で剣を構える敵が、血を流しながらそう言った。「ここは戦場だぜ?恐れた方が死ぬ確立は上がるんだ。多少無茶した方が活路も開けるってモンだ」火傷の程度を察知されないよう、不適に笑いながら立ち上がって構えなおす。だが、実際は体のどこを動かすにも無視できない痛みが走った。
相手が距離を詰めて来る。こちらもそうしたい所だが、火傷のせいで意思に反して足が出ない。「チクショーが。情けない体だぜ・・・」小さく悪態をつき、相手を睨み付けた。手に持つ剣を、両手でしっかり握り締める。攻勢がダメなら、相手から間合いに入ってくれるのを待つのみ。(そのまま来い・・・刻んでやるぜ・・・)心の中で呟く。切っ先を下げ、ひたすら間合いに気を配り、相手がいつ、どのタイミングで踏み込んできても対応し、カウンターを繰り出せるように神経を尖らせた。
演出には意味がある。攻撃が集中したのならば次の凶器が、侮って分散したのならば次の狂気が。演出には裏もある。視界が開けたと思うならば勘違い、獣が見た目通りの姿だと思うならば勘違い。言葉には嘘がある。素手を誘う言葉も表裏、夜を集めた呪いに、かぶせただけの張子の獣に気性などない。言葉には呪いがある。端々の韻を合わせれば、夜色の折り紙に与える本当の命令が完成される。帝国のヒトの娘の、右足が獣に触れた瞬間―――狼は夜闇の如く霧散し、舞い散る紙吹雪。
帝国の娘の攻撃は空を切る。不意の出来事に体制を整えきれないその隙に。夜色の折り紙は彼女を取り込み命令されたカタチを構築する。それはちょうど、フィーナの体がぴったりと入る大きさの、黒色のビンの容。ありったけの夜を詰め込んだ「ヒトの娘と、夜の瓶詰め。 できばえは上々というところかしら・・・あは」それが怪異の本当の狙い。夜の主が今宵のために用意した最高級の呪は、完成してしまえば内側から破れる事はまず叶うまい。「蓋を閉めれば出来上がり。 凝縮された夜の中に一晩だけ拘束されるだけの呪だけど」この戦場では決定的よね、鼻歌交じりに蓋をしようと怪異は最後の命令を口にしようとする。
狼の腹部めがけて蹴りこむ私・・・しかし、そこには想像を絶する罠が待ち受けていました私の蹴りが狼に触れた瞬間その体は再び元の紙に変わってしまいますまるで、攻撃をすかされたような状態になり私は思わずバランスを崩します「ええっ!?何が・・・あうううっ!!」次の瞬間、折紙は私を取り囲み瞬時に取り込んでしまいます私の回りは闇に包まれ、周辺には夜の壁が立ち塞がりますそれは、まるで闇の蛇に丸呑みされたかのようです
「ううっ!しまったっ!こんな手に出るなんて・・・!」私はすぐに脱出しようと壁を拳で殴りつけますがまったく破れる気配はありません「駄目っ!破れないっ!くうっ!ううううっ!!」それでも、私は、なおも懸命に壁を攻撃しますが私を飲み込んだ闇は、そのまま私の体を掴むように拘束し私は、両腕を上に上げた状態でほとんど身動きが取れなくなります「あああっ!そ、そんなっ!・・・むぐううっ!このままじゃやられて・・・ぐむうっ!」焦る私は、何とかしようともがき続けますがすでに闇の壁はぴったりと私の体を捕まえ締め続けます(ううっ、動けない・・・これでは闇に囚われてしまう・・・)
危機的な状況に、私の心に絶望感が沸いてきます・・・そして、遂に唯一僅かな光が差し込む上側に私を絶望の闇へと誘おうと蓋が出現します(あ・・・あれで上を塞がれたら、もう駄目・・・・・・いえ、諦めてはいけない!こうなったら・・・!)私は懸命に両腕に気を集中し、さらに氷の呪詛を纏わせますそして、絶対零度の氷気弾を生成し願いを乗せて、唯一の光の穴をめがけて撃ち放ちました(お願い!間に合って・・・!)
「何だろこれ。でっかい動物にでも引きずられたような傷だな…」と、シーファさん。「そうですね。傷が複雑で縫いにくいです・・・」うっすら汗をうかべて、痛みに耐えている獣人。本当に敵なのか味方なのかわからない。しかし、傷付いている人に尋ねてみても仕方ない。ロマの役目は、看護。傷付いた人がいれば手当てする。それだけなのだから・・・処置が終わり、軽く麻酔が効いてきたのか目を閉じて静かな息づかいになる獣人。シーファさんに手渡された毛布を、ふわりとかけ、茂みをもとあったように戻して目隠しにする。「この先は、もっと傷付いた人がいるのでしょうか?」尋ねるともなく、口に出てしまう。
ロマジーナが獣人を診ている間に、医療班が到着したようだ。獣人と彼女が居る場所より、少し離れた場所に野営地を設営している。誰も何も尋ねなかったのは、きっと同じ気持ちだったからだろう。彼らも医療に携わる人達なのだ。ロマジーナが獣人を隠していると、設営が終わったのか、こちらに手招きしてきた。『この先は、もっと傷付いた人がいるのでしょうか?』「…多分、な」呟く様に出た彼女の台詞に、精霊は短く答えて、野営地へと促した。ここで待つ衛生兵に、怪我人を運ぶのが精霊の今の仕事だ。
剣と斧とが合わさって競り合う「おや」真正面に向き直った男に対して、意外に思って声を上げたこちらを挑発する言葉や余裕のある笑み「敵の心配か。それはどうも面目ないなぁ」剣を引いた男が間を空けるまた気弾でも放ってくるかと身構え、男の向こう側に黒い瓶を見つけたキシュの様子からどうやら形勢は大分優位になったようだ「あちらの力量を見誤ったな」くっく、と笑いながら、繰り出された突きに斧を弾かせ、空いた手で剣の刃を握り締めた。勢いを失った刃、布を巻いた手ならば切られずに一瞬掴む事はできる。削ぎ切られる前にと剣を手繰り、相手の手、更には腕を捕らえようと手を伸ばす
突いた剣は斧を弾く、しかし勢いを失った剣を掴まれ、こちらの腕をつかもうと手を伸ばす(致し方ない…ここは…)剣から手を放し、伸ばされた手を回避する「あちらの力量を見誤ったな」男の言葉を聞き、少し視線をフィーナさんの方向に向けるフィーナさんを包み込む瓶…蓋を閉めようとしているが、中から氷の魔力を感じる(援護のしようが無いぞ…下手に突っ込む事も出来ないな…)しかし、あの瓶に背中を向けたまま戦うのは色々な意味で危険かも知れない破片が飛び散って闇の硝子で針鼠などは勘弁である少々、体術には覚えがある両手に闘気を集め、目の前の男の動きを待った
ぎしり、と小舟の床板が撓る。輸送船から大分離れた海面に、僕達はいた。少し落ち着いたところで、ティエンマさんから伝えられた指示を聞いた。僕達を保護し、弓兵と槍兵共々撤退せよ。弓兵らはその言葉に従い、僕をこの場所まで避難させたらしい。『で…。その指示を与えた本人はどこだ…?』融合した魂を分離させ、再び仮の肉体を得た相棒が唸る。弓兵の二人は互いに顔を合わせてみると、その表情に影が差した。…この二人は、ティエンマさんの行方を知らないらしい。「僕達も弓兵も槍兵も先に逃がして…。たった一人で敵の足止めを…?」『ちょっと待てよ…、そいつは隊長に有るまじき行為だぜ…?』
不安げな声の後に、ため息混じりに呆れた声が被る。気が付けばネコ族二人で、眼下の有翼人達に詰め寄っていた。「なんでそんな指示に従ったんだよ!? 隊長一人だけ戦地に残してくるなんて、そんな馬鹿げた話があるか!?」『長ってのはなぁ、最後まで指揮を取り続ける義務があんだよ! そんなヤツが早死にしてみろ、その時点で部隊は壊滅も同然だろうが!』牙を剥き出して、咆哮を上げる獣が二匹と。その勢いに呑まれ、翼を震わせる鳥が二羽。そんな状況だったからかもあり、僕達は気が付かなかった。話題の隊長は既に、敵から逃げ延びていたことを。そしてこの怒声を頼りに、僕達との合流を図ろうとしていることも。
「あー」怪異の口からは間の抜けた声が漏れる。放たれた冷気の塊、それが呪いの瓶の蓋を破壊していた。「・・・こちらの予測を尽く上回ってくれるのね、フィーナさん」怪異はぺたりとその場に座り込む。「でもそこまで。瓶そのものは壊せないでしょ? 呪が蓋から抜けきるまでの小一時間くらいは捕えられるわ」そういう怪異の呪いも空っぽ。もはや立っていることも出来ないほどの消耗。不完全な呪いの瓶はそれでも中の娘をしばらく拘束するだろう。しかし瓶の強度は外側からの衝撃には酷く脆い。おそらくもう一人の帝国の兵、彼はそれに気付いているだろう。中の者が傷付く事を顧みなければ破壊できるはず。
そうなれば怪異にはもう打つ手もないが。「ね、フィーんさん?」空いている瓶の口に向かって話しかける。瓶は不完全だから声も届けば、内側から外を見ることも出来るだろう。「彼って貴方のナイト様かしら? 囚われのお姫様を救うためにここまで来れるか、 私と一緒に観戦といきませんか」彼らも今は一対一。「私の夜はどうせもう打ち止めだから あとは彼らのどちらが勝つかに委ねましょう。 そういうのもちょっと面白いでしょう?」霞みかけた姿で、怪異は楽しげにささやいた。
氷気弾で栓を破壊して、何とかぎりぎりで闇の瓶に封じられる事だけは回避できたようですしかし、上が開いているとはいえ体は闇に拘束されたまま・・・攻撃も防御も出来ず、ただ自分を無防備に晒すのみですそこへ外から声が聞こえました・・・彼女によると、どうやら1時間ぐらいはこのままのようですしかし、彼女はこの一方的に優位な状況なのにまったく攻撃を仕掛けてきません(今なら私を好きなように弄る事も出来るのに、何故・・・?それだけ相手も疲弊しているという事でしょうか・・・?)その時、再び彼女が私に話しかけてきます
「ね、フィーナさん?彼って貴方のナイト様かしら?囚われのお姫様を救うためにここまで来れるか私と一緒に観戦といきませんか私の夜はどうせもう打ち止めだからあとは彼らのどちらが勝つかに委ねましょう。そういうのもちょっと面白いでしょう?」どうやら、彼女は私に攻撃を仕掛ける事はせず彼らにこの戦いの勝敗を託すつもりのようです私は、その問いに同意する事を伝えます「私は、これでは戦闘は出来ませんし本来なら嬲り殺しにされてもしょうがない状況ですですから、貴方さえいいのなら、私はそれで構いませんよ」
私は、さらに言葉を続けます・・・「彼は、私にとっては大切なパートナーですでも、別にナイトって事は無いんですよですから、私の為に自分の命を晒すような事だけはしないで欲しいと思うんですけれどね・・・」私は、今の自分の状況が凄く情けなく思いました正直、彼に守られなければ勝てないようでは戦場に向かう資格は無いと思うからです(もっと強くならないといけませんね・・・私がみんなを守れるくらいの力が欲しいです・・・)私は、そんな事を考えつつ僅かに晴れた闇の向こうで戦う2人を祈りを込めて見つめていました・・・
コルトア監視所にある知らせが届く。「そうですか…、終わり…、ましたか…。」本国から敗戦の知らせ、すなわちこの戦の終わりを意味する。ここでも、前線と比べて激しくはなかったものの何度かの防衛が繰り広げられた。参戦していた私は、思わずそっと杖をおろした。「さて、これからが大変ですね…。怪我人の救護にあたらなければ…。」幸いまだ動ける状態であった私は、兵士達や救護班とともに慌しく動き始めた。「最前線に出た方々…、大丈夫でしょうか…。」時折、前線の方向を祈るように眺めながら。
呪いは込めるもの。込めるとは篭る事。蓋の無い呪など風にも吹き消える儚い想いに過ぎぬもの。彼女になら、周囲に気流を起こし呪いを飛ばす事も出来るかと思ったが。「弱みには気付かれていないようね」怪異の扱う力など知られないからこそであり、知れてしまえばヒトに討たれるが必定。今宵の優劣も、彼我の決定的な戦力差ではありえぬも。「・・・それを口にしては立つ瀬が無い 御免なさいね、フィーナさん」傍らの帝国の娘に、聞こえぬように怪異は呟く。そして今一度記憶を書き記すように瞳を閉じた。戦ももう決する。夜が明ければ怪異の存在も掻き消えるから・・・せめてページに残せるように。
負傷した兵を運び、軍医や衛生兵が治療を施す。衛生兵から水を貰い、飲み干してからまた飛び立つ。そんな事を繰り返していると。衛生兵の一人が、悲鳴のような報告をした。それは、敗戦の知らせで…皆、落ち込みかけるが、そうは言っていられない。場の空気が一変する。「了解。俺は全軍に通達するから、あんたらは撤収準備を」衛生兵が頷くのを確認し、看護師の肩をぽんと叩くと、精霊は空へと飛び立った。
「この場にいるドラバニア帝国全兵に告ぐ! 19:14:34、敗戦。全軍、退却命令が出ている。 …マロロ洞窟後方にて退路を開く。皆無事に帰って来い!」風の力を用いて、広範囲へと声を響かせる。風は洞窟まで吹き抜けていく筈だ。医療班なれど、戦闘訓練は受けている兵達。退路を開くその術も知っており、また行動も出来る。「尚、ルドラム兵の方々には、義ある行動を望む。 …帝国の一兵士として、願う」ふと思い浮かぶのは…彼の姿。少しだけ、胸が痛むが、首を振った。
相手の剣を奪い、それを構える。手のひらが少し切れて痛んだ。武器を奪ったとて、相手には気弾がある。先程からの身のこなしを見ても、恐らく素手での戦いも心得ているのだろう。案の定、武器を失って焦るでもなく、男は冷静に構えてこちらの出方を窺っている「……」ちらとキシュへ視線を向けたが、力を使い果たしたのか瓶の横に座り込んでいた。援護は期待できない。折り紙に助けられたほどだ、目の前の帝国兵相手に一人ではどうにも分が悪い…捕えた女を人質にでも使って欲しいくらいの憂鬱な気分になった、が仕方が無い。考えを固め、腹をくくって一気に走った
キシュの身体を掻っ攫い、瓶の後ろへ滑り込む瓶の中は見えなかったが、先程までの姿や話し声から分かる。帝国に所属していた頃彼女の姿は見ていた「やあ、フィーナ。悪いな…おい、上手く拾えよ」再会の挨拶もそこそこに、瓶を担いで男へと放り投げた。血で手が滑ったため瓶がぐるぐると回っている。中身はきっと大変だろうその間にキシュの身体を担ぎ上げた「気絶しても運んでやるから目くらましをやれ」返事も待たずに洞窟の出口へと走り出す。出口にさえたどり着けば、自国の本拠地は目の前。援軍を呼ぶこともできるはず仲間の妙な軽さを肩に感じながら、ただ後ろから気弾に当てられないよう願い、走った
拳を構えて男の出方を待っていると、男は突如瓶の方向に向かって走り出す(まさかフィーナさんを人質に取るつもりか!?)懐の投げナイフを取り出そうとした時に思い出すわざわざ素手で戦う必要は無く、懐の投げナイフを武器として戦えば良い事をすっかり失念していた…「投げナイフを持っていたのを忘れてた…」最近は闘気を使う事が増えていたので、普通の牽制武装を忘れていた僅かな硬直、もう一度男の方向に目をやると目の前にはぐるぐる回って飛んでくる瓶「おおっと!!」何とか瓶を受け止め、地面に置く男を捜すが、既に仲間を肩に抱え、洞窟の出口を目指し走っている…
(助かった…去る者の背中を攻撃する必要は無いからな)安堵の吐息が漏れる正直、武器を奪われた時はどうなるかと思ったが、引いて貰えて本当に助かった…今度は瓶を見るどうやら、中からの衝撃には強い様だが、外からの衝撃には弱い様だナイフを使って、思いっきり瓶に向かって突き立てる突き立てた部分から、波紋の様に瓶全体にひびが入り、丁度人が一人通れる程の穴が開くその穴に、上半身を通してフィーナさんの体に向かって手を伸ばした「フィーナさん、大丈夫ですか?」目を回してなければ良いのだが…ちょっと冷汗を流しながらフィーナさんの身を心配した…
お互いが距離をとって睨み合い、牽制し合う緊張の時間が流れる、そんな時だった。「この場にいるドラバニア帝国全兵に告ぐ!19:14:34、敗戦。全軍、退却命令が出ている。…マロロ洞窟後方にて退路を開く。皆無事に帰って来い!」聴きなれた声が響く。後方からの訃報。思わず振り向けば、城から煙が立ち上っているのが見えた。後方の戦の気配は、既に無かった。負けたのだ。苦い思いが頭を占める。「尚、ルドラム兵の方々には、義ある行動を望む。…帝国の一兵士として、願う」そう告げる声に、緊張は解かぬまま、相手を見た。
「どうやら、終わっちまったらしいが・・・?」相手に、静かに話しかけた。「どうする?お互い、まだ動ける。決着でもつけるかい?」冗談のように言うが、目には冗談の色は無く。戦に負けて、勝負にまで負けるのは癪だった。それが結果に何を及ぼすでもないのは分っていたが、自分から退くのはプライドごと負ける。そんな気がしてならなかった。が、やがて肩を竦めた。「コレじゃ、只の悪あがきか。なさけねぇ」苦笑して、剣を収めるて、相手に両手を上げて見せた。「降参だ。いい加減、火傷が痛いしな。帰らせてもらってもいいかな?」顎で馬を指し、これ見よがしに火傷を強調して見せ、相手に笑いかけた。
後ろには燃える輸送船。我々が退いたことで、沈下作業が始まるだろうが、甲板も桟橋も、風を受けるマストさえも炎に包まれ、沈下しても、あの船が再び海を走るのは難しいだろう。(ティエンマ)「なんだ?」(…声が届かぬが、どうする?)声を送った先は、もちろん先に戻っている筈の弓兵2人とケーシィ殿。声が届かなければ、船の確かな方向が分からない。いや、最悪彼らがまだ戻って来ていないことも考えられる。もしまだ火中にいたとしたら…嫌な想像が過る。(非常に言い辛いが、向こうからの叫び声は聞こえる。 これは我らへの怒声だ)「はいぃ?」二翼の言葉に、思わず語尾が上ずる。
(聞く余裕がないというのが正しいだろうな)怒りの声を発しているのは、猫族の2人。闇夜に少し目が慣れると、暗闇に浮ぶ小舟が波間に揺られ、ぼんやりとその上に居る人影も見えてきた。部下2人は船の端に追い詰められ震えている。私はその反対側にゆっくりと降りた。あまり気が進まないが、怒り狂うケーシィ殿に後ろから声を掛ける。「すまんが、あまり彼らを責めないでくれないか」怒りの矛先はきっと私に向くだろう。少し遅れて槍兵2人も私の後ろへ降りる。何が起きているのか分からず、戸惑う表情を浮かべて。
ふと、横にいるキシュさんの方に視線を移すと何かを呟きながら座り込み、体を休めていますやはり術の多用でだいぶ疲弊しているようです(どうやら、命の危険に晒される事は無さそうですね・・・)私は、その雰囲気に思わず緊張感が途切れますしかし、その直後、敵の男性が私に向かって駆け出してきます(え?まさか私を人質に・・・!?)彼は、私の後ろに滑り込むと、私に話しかけますその声と微かに見える姿に、私は相手が誰だか確信します
「やあ、フィーナ。悪いな…おい、上手く拾えよ」(そ、その声はphandemさん!)私が、彼を認識したと同時に、私の体が宙に浮いた感じになりますそして、次の瞬間、私の空間ごと飛翔し物凄い勢いで回り始めます「きゃああっ!?な、何!?目、目が回るうっ!あああああ〜っ!!」恐らくほんの数秒だった筈の回転時間が私には途轍も無く長く感じられましたそして、体を受け止められるような感覚がありようやく回転が止まりますそして、何かを突き立てた様な音がすると空間の上部に大きめの穴が開きます
「フィーナさん、大丈夫ですか?」ライさんの声に、私は思わずほっとします「だ、大丈夫ですよ〜ちょ、ちょっとまだふらふらしていますが・・・」目が回り、思わず返事の声が裏返ってしまう私・・・そして、まだ視界が歪む中に、彼の手が差し出されます私は、それにしがみつくようにその手を掴みました・・・
時は満ちた。月は明るくなる空と雲に紛れて、やがて夜明けが来るのを告げている。構えたままで動き出すことも出来ずにいた。一手が出ないままの剣、武の極みなど程遠い。未熟と怠慢。緊張の糸を切る雑音。風の中を通る言葉が聞える。『どうやら、終わっちまったらしいが・・・?』戦場において、敵の言葉では信用にならないが、終戦の知らせ。獣人達が帝国の槍を防いだらしい。『どうする?お互い、まだ動ける。決着でもつけるかい?』やや悔しがる相手の表情。敗戦の傷。だが、未だ戦意を見せる勇ましい言葉。惜しくなどないが、この体では存分に相手も出来ない。
ここでこの男と命の削り合いなど重要ではなかった。それこそ短い命。長らえば、いつかまた見える時も来るだろう。その時こそ、「…。」目を瞑り思考の間。見開き構えを解き、剣を収めようとした瞬間。『降参だ。いい加減、火傷が痛いしな。帰らせてもらってもいいかな?』火傷と煤塗れの男が笑う。炎が弱まり視界が開けると、追い付いた数名の部下が周りで援護しようとしていた。「あぁ…構わない…私にも用事がある…」部下達を制止。頭を軽く下げ一礼、剣を仕舞う。…義か。
殺してまで武勲を得ようという考えが無くなっている自分に、人の通りを通そうとすることに、違和感を感じながら、翻ったマントを抑える。振り返り、暴れていたオオトカゲを一喝。力なく従う弱った巨体。無表情のまま、空を見、望んだ者の元に行くため気配を探る黒い鎧。「槍は預かっておく…生き抜けば…何れ…帝国の志士…。」蜥蜴の腹に刺さったままの槍。戦の証。言葉を投げかけ歩き出す。巨体を引き、傷の痛みで遠く感じる道筋。黒い鎧の男は、マロロ洞窟に消えていった。
『すまんが、あまり彼らを責めないでくれないか』背後から聞こえた羽音に被る声。踵を返してみれば、噂の隊長はそこにいた。体中に切り傷を沢山作ってきて、やや困り顔で。その後に降りてきた槍兵は、戸惑った表情を浮かべていた。鋭く細めた双眸を彼に向け、獣のそれのように唸る。剥き出した牙を仕舞うのに、少し時間がかかった。胸に当てた右手は拳を握り、ローブに爪を引っ掛けて傷つける。やっとのことで落ち着きを取り戻して、そっと口を開く。「……やーれやれ、ティエンマさんも隊長には向かないみたいだね」紡がれた言葉は、皮肉から始まった。
「敵の大群を前に一人で殿を務めるなんて、とんでもないよ。 まるで、自分から汚れ役を、買って出たみたいな感じだけど、さ……」ぼそぼそと、呪言を唱えるような声で呟いて。「今回は無事だったから、まだいい……。 でももし、無事に済まなかったら……。 傷付くのは……、貴方一人だけなんかじゃない……」糸が切れた人形のように、ぺたんとその場に座り込む。今の顔を見られないように、膝を抱いて顔を埋めた。「置いてかれる人のことも……、考えて欲しいよ全くもぅ……」締め括りの言葉の後、目からは涙が零れ落ちた。
自分の手にしがみ付く様に手を取るフィーナさん返事の声も裏返っていたので、結構大変だったのかもしれない…彼女の体を抱く様に掴み、瓶の中から引っ張り出す「目立った怪我はないみたいですね…」安堵の息がまた漏れるあまりサポート出来なかった事や、立ち回りの反省点もある戦場から引く帝国軍の様子を見ると、戦争は敗戦という形で終了した様だ…「さぁ、皆の場所に戻りましょう、走れますか?」安堵の笑みを浮かべて、返事を待った
「?」竜骨の悪魔の、視線を感じて首をかしげる。それが突然こちらの駆け出す。「え?」何の意図かと思考する間もなく竜骨の商人は夜の瓶を放り投げ「ちょ、ちょっと―――」怪異の体をひょいと担ぎ上げる。『気絶しても運んでやるから目くらましをやれ』応えられる程にも手持ちの呪は残ってはいないが。「ふふ・・・あははっ」なんてこと。戦争はと見ればこちらの優勢だったのに、私はずいぶん撤退に縁がある。「お手を掛けてしまって御免なさい、phandemさん」もはや呪もこもらない、折り紙だけをばら撒いて。最後にふと、一羽だけ鶴を風に流した。
振り向いた彼は、怒りの表情を露にしていた。瞳に炎を宿し、咽の奥から唸り声が漏れる。当然怒鳴られるものと覚悟をしていたのに、彼は暫く無言で己の胸を掴み、息を大きく吐きながら言葉を紡いだ。『……やーれやれ、ティエンマさんも隊長には向かないみたいだね』あまりに静かな物言いに、私は逆に面食らった。ケーシィ殿の声は次第に小さくなり、言葉も切れ切れになる。『傷付くのは……、貴方一人だけなんかじゃない……。 置いていかれる人のことも……、考えて欲しいよ全くもぅ……」彼はその場に座り込むと、膝に顔を埋めた。…泣いているのだろうか?私は小さく丸まった彼の前にしゃがみ込んだ。
己の存在等、取るに足りないものと思っていた。死ぬつもりで戦ってはいないが、自分の命を軽んじていたことは確かだ。私は少し躊躇いがちに手を伸ばすと、ケーシィ殿の頭に手を置いて、わしゃわしゃと撫でた。「ごめん…心配を掛けた」そして、4人の部下達の顔を見る。「お前達も…すまなかったな」彼らはただ小さく頷く。私は腰に付けた荷物から小さな水筒を取り出すと、蓋を開け、一口ぐいと煽る。中身は消毒の代わりにもなる強めの酒だ。「ケーシィ殿も」そう言って、水筒を差し出す。「いつもは帰還した時に飲むんだ。今日は皆で飲もう」一口ずつしか飲めない、僅かな酒ではあったが。
「あぁ…構わない…私にも用事がある…」こちらの問いかけに、相手は構える部下を制止してそう答え、そしてこちらに、一礼をした。少々面食らい、気恥ずかしそうに苦笑して、片手を挙げて礼に答える。「槍は預かっておく…生き抜けば…何れ…帝国の志士…。」背を向けながら、相手が言う。そういえば、槍は蜥蜴に刺さったままだった。「どうせ支給品だ。持ってけ。アンタの戦利品だ。そうだな・・・何れどこかで・・・」こちらも振り向き、馬に向かって歩き出した。その顔には、嬉しさともつかぬ笑みが浮かんでいた。
驚き戸惑う女へは返事もせずに走り、洞窟の道を幾度も曲がる。荷物同然に大分荒っぽく運んでいたが、聞こえた笑い声に少しは元気があるようだと安堵の息をついた程なく、無数の紙が舞う音が後方に聞こえる。しばらくして終戦を告げる風が吹き抜けていき、追撃も敵の気配も無い事を確認してからやっと走る速度を緩めた。まだ手負いの帝国兵など潜んでいやしないか気は抜けなかったが。「有難う、キシュ」意識が残っているかは分からなかったが、無理をおして目くらましをしてくれた礼を短く言った。洞窟の出口はもうすぐ。病院まで女を送り届けたらゆっくり帰ろうと、陽の光を見ながら思った
『ごめん…心配を掛けた。 お前達も…すまなかったな』ぽんと頭に手を置かれ、くしゃくしゃと撫でられた。袖で涙を拭って顔を上げれば、ティエンマさんが目の前にいる。彼は腰に下げた鞄から、小さな水筒を取り出した。中の水を一口煽ぐと、それを僕に差し出してくる。『ケーシィ殿も』と勧められたが、コレには戸惑ってしまった。理由その一、香りからしてそれはお酒であること。理由その二……。(僕…、未成年なんですケド…)それでも好意に背くまいと、恐る恐る手を伸ばす。丁度その時だ。
『ドラバニア帝国全兵へ伝令っ! 19:14:34、敗戦。全軍撤退せよとの事です!』羽音の後に聞こえた声には、聞き覚えがあった。余計な発言をしようとする度、相棒に黙らされていた若い有翼人だ。……そういえば、戦闘中は彼の姿を一度も見ていない。有翼部隊は最初、四人ではなく五人はいたハズだ。船に足をつけた四人も、『お前今までどこに!?』って顔をしてる。『おう、報告ご苦労。 しっかし負け戦になるたぁな…、先に本軍が崩されたか…?』そして皆の視線は、唯一普通に対応して見せている相棒に向けられた。
『…軽口の新兵は足引っ張るのに定評があるからな。 襲撃し始める前に、アウトレットの転送術使って帰らせた』アウトレットの転送術。事前の準備に手間が掛かるため、戦場では1回しか使えない僕の切り札だ。相棒の話によれば、『港に入る前にはもう飛ばしてた』らしい。本陣同士の決戦に幕が下ろされた時に、それを報告しに来いとの指示だそうだ。『弓兵は好きに使っていいっつぅモンだから…、んじゃ伝令として、な?』「今回は無事だったからまだいいケド…。 …何で僕の切り札無断で勝手に使うんだよぉっ!!」それから数秒後。頭にコブを作って気絶したヤマネコ族が、水面に浮かんでいたという。
ライさんに助けられ私は、ようやく闇から出る事が出来ました息が詰まったような感覚から抜け出せて私は、思わず大きな溜息をつきます「ふぅ・・・酷い目に合いましたでも、怪我とかは無いので大丈夫ですよただ、戦いは終わってしまったようですね・・・」すると、キシュさん達が去った方から紙吹雪が流れ込んできますそして、私の手元に一羽の鶴が舞い降ります(また、お2人にもお逢いしたいですね・・・)鶴を見つめつつ、そんな事を考えてるとライさんが私に声をかけます
「さぁ、皆の場所に戻りましょう、走れますか?」私は、彼に笑顔を向けて答えます「もちろん!さあ、皆さんの元に帰りましょうか・・・♪」そう言うと、私達は洞窟の出口に向かって走り出しました・・・