両国共、平和を求めた筈だった。静かで美しい海を。家族で暮らす平凡な毎日を。思いはすれ違い、時にはぶつかり合う。悲しい定めがまた道を開く・・・
・他者の行動・行為を著しく制限、または指定する描写・単騎で戦局に多大な影響を与える描写・俗に言う無敵と思われる行為、行動や描写・世界観が大幅に無視されている描写・その他、不躾であったり、不快に思わせる行動や描写以前の戦争スレより転載です。以上の行為は他者の迷惑と為りますのでお控えください。自分だけでなく皆が楽しめるよう心掛けましょう。
http://www.geocities.jp/kichi_k/LG_map/top.html(大判/製作:クロゼット様)http://lgtisiki.blog89.fc2.com/blog-category-8.html(携帯用/製作:コルナ・コルチェット様)お二方には多大なる感謝を(深礼
戦火で故郷や家族を失ったものたちが集まり作られた勢力最大の特徴は人種の坩堝ともいうべき民の層元々戦火に焼き出された人々が集った勢力という事もあり兵の中にも戦災孤児や家族を戦火で失った者が多い元はローゼンが指揮を執る自警団の様な組織、設立経緯から積極的な侵略よりも防衛を当初は主にしていた後にドラバニア帝国騎士団第一部隊長・ヴァリゾアが祖国の変貌に悩み出奔、ローゼンはヴァリゾアを新リーダーとして迎える時を同じく広がり始めた戦火の中で解放軍も大きな変革を迫られる
ドラバニア初代皇帝ゼオノクスの革命その政策に従えず国を出奔した帝国きっての名将ヴァリゾア戦火に抗う為に戦災被害者を中心に組織された解放軍そして戦火を広げる事を拒んで祖国を捨てた男ヴァリゾアこの二つの融合をして戦火を止める為にはやはり戦火を起こさなければならない矛盾彼に解放軍と戦いの行く末を託したローゼンは穏やかに自らが望んだ雷帝と呼ばれる男を見守る「守るという行為もまた命を奪う事なのだ」と【兵力】ナイト、ソルジャー足軽ハンター、マジックハンター、マジシャン種族の差なく魔法、武力共に充実した兵種に恵まれている人種の坩堝である為、兵種のありとあらゆるものがある
美しき人魚の女王、アーリアが導く海の一族の国。此処でしか取れない貴重な鉱石アクアマイト(この国では石ころ同然の様だが)を人間達が乱獲して海を汚す為、カエル達が報復を決意。それに押される形で争う事を嫌いながらも、海を守る為陸に住む者達と戦う事を決断するマーメイド、カエル達が戦力の殆どで水を舞台としての戦いで彼女達に敵う者はいない【兵力】マーメイド、カエル
諸事情にて解放軍へと潜入中に戦場へと駆り出される此度の敵はアクアマイト人魚の女王アーリアが導く海の一族の国故に敵国の本拠を攻めようとすると必然的に海戦もせねばならないところだが海に慣れぬ山育ちの身としては船酔いで苦しまないためにも、可能な限り陸路を往きたいローマスから出港し、海都を攻略する軍艦を見送って解放軍領内で最も敵地に近いファディア城へ進軍し現地の港湾施設などを防衛する隊に従軍する進軍中、兵士達の何気ない会話が耳に入る「俺、この戦争が終わったら結婚するんスよ」「ウチは今度、2人目のガキが生まれるんだ」何か危険な会話のような気もするが、彼等の未来に幸あれ
解放軍には多種多様な種族が入り乱れていた。私はその雰囲気に圧倒される。「新入りか。何処の国から来たんだ?」肩を叩く方を振り返ると、カエルがいた。驚きの表情を隠せずにいると、カエルは笑いながら言った。「カエル族を見るのは初めてか?この国に居る連中は、殆どがワケありだ。お前だって例外じゃない、ここに居る理由がある」自分が居る理由──私は表情を硬くし、カエルの問いに答える。「──ドラバニア」カエルは一拍置き、そうかと呟く。「この国の指導者も帝国の出身だそうだ。お前は──いや、言わんでおこう」私の背をポンと叩き、頑張れやと一言残してカエルは人混みの中に消えていった。
静かに響く波音を聞きながらのうたた寝中に届いた知らせ。書簡には「海都アクオールへ」の一文のみ。…新たな戦が始まるのだ。「もう少し眠っていられると思ったんだけど…ね」抱えていたクッションを軽くはたいて立ち上がる。先ほどまであった眠気はすでになく、手際よく戦装束を纏っていく。迎え撃つ・攻める。どちらにしても海戦は必須と考えるべき?それなら、のんびりはしてられないよね。準備を急がないと…翼を広げ慌しく海都へと飛び立つ。その姿を見送った風霊が海へと向かう…海に棲む兵達へ開戦を伝えるために。
仕度の済んだ者から海路と陸路に別れる。先程のカエルの男はやはり港へと向かった。私は彼とは逆の陸路を選ぶ。海での戦いは、私には向かないだろう。水上の戦いを得意とする者が海に向かえば良い。私のような者が居ては足を引っ張るだけだ。直線で飛んで行けば楽だろうが、慣れぬ場所で、先頭を切っていく程愚かではない。湾に沿って進む歩兵に加わり、黙々と前進する。息を付いたのは、オーロ洞窟付近。私は皆が笑い合って休んでいる場所から少し離れ、小さな高みから北を見つめた。ファディア城へ向かい、レバン辺りで迎え撃つのだろうか。無意識に胸のポケットに入ったコインを、上から握り締めた。
無事にファディア城に進駐し早速、城下の港湾施設の警備にあたる今頃、ローマスを出発した艦隊はイトス近海辺りで激しい戦いを繰り広げている最中だろうがこちら側は未だに敵影は見えず、のどかなものでうみねこのなき声が一層の平穏さを醸し出すこれは嵐の前の静けさか…水平線を見守りながら、退屈な時間が過ぎて見張りの交代時間となり次の当番の兵士が雑談を交わしながらやって来る「これ、婚約者の姿絵なんスよ。結構な美人でしょ?」「ガキの名前は何にするかなぁ〜。お前は如何思う?」何か噛み合ってない会話を交わす交代要員彼等の未来は幸薄くても良いけれど自分にとばっちりが来ませんよーに
時計台を見上げた。何の事情か。出港時刻より、若干過ぎている。時計台から目を離し、視線を港に集まる人々に向ける。時間の遅れに、ぶつぶつと不満を言い合う兵士達。戦に恐れをなし、隅っこでじっとしている者。見送りに来た家族。恋人との別れを惜しみ、抱き合ったまま離れない男女。自分、と言えば。意味も無くぶらぶら歩いたり。咲いている花を指でつついてみたり。遠くまで広がる、輝く水面を見つめてみたり。――水面。――海。――アクアマイト。こんなにも美しい青に、黒く渦巻く怒りは沈んでいる。――海の、怒り。目を、細めた。
歩兵隊がファディア城に到着したのは、先に着いた隊の3日後だった。歩き疲れた足を、冷たい水を入れたタライに浸す。まだこの辺りに戦火は及んでいないようで、呑気な兵達が私のように井戸の周りで水に足を浸す。どう見ても戦った経歴のなさそうな平民が腰に剣をぶら下げている姿は、申し訳ないが滑稽だ。それでも、と。ここに居る者は、何かを思い、決意しやって来ているのだ。迷い、行く末を悩んだ私など、彼らの足下にも及ばない。
「やっべー!出遅れた!」アクオールの正門付近。一人の兵士が何やら呟きながら大慌てで準備を進めていた。戦も既に中盤。状況は劣勢。前線の詳しい状況が伝わって来ないほどに、既に事態は逼迫していた。「傭兵にあるまじきだぞ。戦に遅刻なんざっ・・・」自分の他に、出撃準備をしている人間は見えなかった。前線勤務のものは既に出撃したのだろう。素早く地図を確認し、船に乗り込む。とりあえず、目指すは最短距離にある防衛地点。ファラディア城。船頭を小突き、海を駆ける。
普段長距離を歩くことは少ない。熱を持った足を擦りつつ、こういった移動も考えて、日々鍛錬すべきなのかもしれないとぼんやり思う。少し温くなった水を捨て、足を拭いて靴を履く。これからは靴を脱ぐこともなかろう。何時敵に襲撃されても良いように、剣を胸に抱き、靴も履いたままで眠るのだ。簡易的に作られた兵士達の村は、戦独特の熱を持ち、ゆったりと時が流れていく。私は眠れずにそっとテントを抜け出した。やはり同じ様に眠れぬ者数人とすれ違い、水平線の見える港へと出た。
陸地が見えてくる。船頭に魔導力エンジンを切らせ、船は慣性と手漕ぎにより静かにレバンへとたどり着いた。ココからファディアまでは目と鼻の先。上手くいけば敵兵の起きる前に侵入し、内部工作も出来るかもしれない。「さて、一仕事しますか・・・」剣を腰に挿し、槍の刃に着けた保護布を取り払う。極力音を立てぬように、靴底に布を張る。馬を進める船頭に手で答えると、徒歩のまま駆け出した。敵に発見されなければ、早朝、日の浅いうちにファディア城の門をくぐれるはずだ。
ファディア城下の日も暮れて、星の瞬く夜の港今夜の警備の当番ではないが何の気なしにふらりと海辺に足が向く手には釣竿、腰には竹篭昼間に目を付けておいた当番兵の邪魔にならぬポイントで釣り糸を垂らす戦時とは思えぬのんきな夜釣り釣り糸と竿で海の様子を見ながら、一刻…二刻…待てど暮らせど、当たりすら来ずあるいは、魚の方こそ鋭敏に戦の気配を感じ取っているのか夜風に乗って哨戒中の当番兵の会話が耳に届く「俺の婚約者、料理上手なんスよ。今度ごちそうしますよ」「そうだな、生まれたガキ連れて、必ず行くよ」何か不吉な予感がするから今夜はとっとと引き上げて、明日の朝に備えるとしよう
ようやく船が動き出したとき、船内は兵士達の苛立ちが肌で感じ取れるぐらい最悪な雰囲気だった。――甲板の上では。何人か兵士の姿が見受けられたが――少女が一人、隅の方で蹲っていた。「――…」体格的に、ボクよりいくつか年下かもしれない。そっと歩み寄る。その割に、床が音を立てて軋む。「――お医者様を、呼びますか?」少女は驚いたのか、びくりと身体が跳ねたが、伏せた顔を上げようとはしなかった。「気分が、悪いのですか?」少女は、俯いたまま。『私、ネレイドなの』唐突に、涙声で、言った。
――ネレイド。人間とマーメイドのハーフ、だったか。ようやく気づいた。――彼女は、泣いていたのだ。『お父さんもお母さんも、戦争で死んでしまったわ。だから、解放軍に入ったのに…』小さな少女の声が、更にか細くなる。『まさか、お母さんの故郷と戦うことになるなんて……ああヴァリゾア様…お父さんお母さん…私どうすれば…』そう言って咽び泣く少女の肩を、ボクは黙って抱いてやるしかできなかった。――船はもうすぐ。彼女の母の故郷の海域に。
夜通し駆け続け、ファラディア城の目視出切る位置まで辿り着いた。戦場独特の緊張感で出るアドレナリンのせいか、日々の鍛錬のせいか、不思議と疲れはなかった。城周辺を見渡せそうな近くの丘に登り、敵情を視察する。「敵兵はまだ、起きてないか。見張りは1、2、3・・・」城に見える松明の光を数え、大まかな敵兵の見張り兵の位置を把握する。一通り確認し終えると、靴底の布を取り、もう一度装備を再確認する。「万全だ。さて、行こう!」両手で己の頬を張り、気合を入れると、一気に丘を駆け下りた。
辺りに注意しつつ作戦を練る。敵兵の目を盗んで進入し、場内にある敵兵の食料庫と火薬庫に火を放てば、敵兵の混乱は避けられないだろう。そこまで考えた所で、話し声が聞こえて近くの茂みに身を隠す。恐らく敵の偵察か、歩哨だろう。(厄介だな。数は2人。どうするか。)考える前に体は動いた。通り過ぎた敵兵の背後に踊り出し、槍を突き出す。慌てて振り返った残る1人に、白銀の刃が振り下ろされた。遺体を隠し、せめてもの慰めとして遺体の上に花を沿え、頭を垂れた。「恨むなら、戦をうらめ・・・」酷く無責任な発言とは自覚しているが、それ以外に言いようはなかった。気持ちを切り替え、再び城を目指す。
真っ黒な空と真っ黒な海。星が無ければ、空と海との区別がつかない。「もう少し高い場所から見れば、漁り火ぐらいは見えるかな」その呟きに、背中の翼が答える。(では広場にあった教会の屋根にでも登ってみるか?)「頼む、二翼」翼の申し出に軽く微笑んだ。先程歩いて来た道の上を、白く大きな翼を広げてなぞるように飛んだ。「・・・あれ?なんか・・・」上空から見た違和感。あれから然程時間は経っていない筈なのに、来る途中すれ違った人の姿がない。(ティエンマ、血の匂いがする)二翼が警告を発した。背筋が泡立つ。剣を抜くと、ゆっくりと音を立てぬように地上へと降りた。
夜釣りから帰って、寝床に潜り幸せな一時を満喫するもその至福は敵意の音で破られる我が異能の耳『天耳之神通』はその聴覚や、この兵舎で密やかに囁かれる兵営の恋の睦言すら鮮明に聞き取るがソッチの気は微塵も無いのでシャットアウトするとして迫る敵の気配を些か離れたこの寝所でも察知する「朝も早よからご苦労なこっちゃで」欠伸をしながら、察知した気配の方へ向かう途中未だ明けぬ空を舞う白き閃影あの男が向かったならば、安心して任せられるか…という事で、再び寝床に戻りたいところだが流石にそんな事をしたら給金に響くだろうならば、彼とは違う一手敵の退路を塞ぐ手回しでもしておこうか
最初の接敵後暫くは何事もなかった。城内にも動きは見られない。味方が2人減ったことに気づいていないらしい。そう思って安堵した直後だった。「っと、そんなに甘くねーか。バレたな。」空気が変わる。ふと、視界の端、漆黒の空の中に白いモノが浮かんでいるのが見えた。ザワリと、全身の毛が逆立つ。「さて、どうする・・・」その方角を睨みながら考えた。敵が空を飛べるのなら、例え逃げても徒歩の自分に勝ち目はない。敵が城内に凶報を知らせていれば、退路も塞がれるだろう。なれば取りうる道は一つ。迎え撃つのみ。その場で静かに槍を構えなおし、いかなる事態にも対応出切る様に神経を研ぎ澄ます。
暗い石畳に黒い水溜まり。濡れた路面は、もちろん雨が降った訳ではない。暗闇だからそう見えるのであって、血溜まりに他ならない。何気なく挨拶を交わしてすれ違った兵士が、細い道で2人、折り重なるように果てていた。誰が、などと問うまでもない。侵入されたのだ。私は兵士の脇に跪くと、何か手掛かりがないかと探る。遺体の上に名の無い花が一輪。死を悼む心を持ち合わせている者のようだ。だがそれが何だというのだろう。命を奪った張本人が何をしようと許されるものではない。更に調べると、血の付いた足跡があった。私は爪先の向いた方を見、立ち上がる。
見やった先にはファディア城。裏に回れば、苦労して運んだ武器や食料が保管してある。それに工作する為に忍び込んで来たのかもしれない。「早く探し出さねば…」先へ進もうとする私を、二翼が静止する。(待て、ティエン。先に報せに走った方が良いのではないか)私は振り返って遺体を見た。そして再び城を見る。「…逃げられたら、こいつらがうかばれない」まだ近くにいるかもしれないのに、ここで私が離れたら、敵に逃げる隙を与えてしまう。「行くぞ。気配を探れ」二翼に後ろを任せ、極力自分の気配を消して前へと進む。(トレヴィル殿、宜しくお願いします:礼)
戦の爪後が…まだ城壁に残っていた海都にて復旧作業にあたっていたが無情にも開戦の知らせは届いた「城壁が直るまで待って欲しかったなぁ」でも、始まってしまったものはしょうがない「頑張ろうー!」独り言にしては大きい声で…ぐっと力拳一緒に作業にあたっていた人達に声をかけると海都を後にし、クレマス城に向かう船に乗った「船は…なかなか慣れない…ぅっp」軽く船酔いしたようだ(ぁクレマス城で一休みし今度は多少装備のある実戦向きの船に乗換える船は、夜の闇に紛れて慣れた海を走りだした
甲板を、冷たい潮風が渡る。波の、音。船の、揺れ。繰り返される、リズム。夜の闇は、真っ暗だ。海と空の境目は、黒に塗りつぶされて判断できないほど。夜空を仰げば、星々。漆黒と、いくつかの光。それだけしか、存在しないかのような。そんな、世界に見える。――良かった。星が、在って。首を引っ込めて、外套にくるまる。闇のみだなんて。恐怖で気が狂う。――コツン。小さな足跡。振り向くと、毛布にくるまったあのネレイドの娘。何か言いたいような、複雑な顔をしている。
「気分は」微笑んで、こちらから話しかける。『大丈夫…』「では、無さそうだね」娘の言葉に被せるように言い、笑った。この顔の何処が大丈夫なのか。「明日には、バイハール島に着くだろうから。今のうちに、体を休めた方がいいでしょう。――早く寝なさい」『は、はい、あの…ありがとう』驚いて、少し目を大きくした。ぺこりと頭を下げて、ぱたぱたと駆けて行く娘。その背に、おやすみなさい、と手を振って。海に視線を戻した。――雷帝。あの娘は、どうしても戦わなければなりませんか。夜明けは、まだ遠い。
敵兵の潜入を上官に報告し警備兵の増強や主要施設の防護など必要な手配を一通り済ます敵兵の単独潜入ならば、その目的は破壊工作を行いコチラを混乱させ、ファディア城側からの進軍を封じる事だけか否、混乱に乗じ、後続の部隊がこの地を制圧し陸側から解放軍領を攻める橋頭堡としようとしているとその程度は考えておいた方が良いだろうならば、港の方に緊急に防衛線を構築しついでに、ファディア城や港湾施設の各所から海側からも確認できる程の煙を立ち上らせれば後続の部隊に破壊工作は成功と油断させられるかも知れないその考えを上官に具申して七輪と団扇と鯵の一夜干しを抱え、港に急ぐ
「っち、流石に撒けないか。」確実に迫る追っ手の気配に、軽く舌打ちして呟く。恐らくは、足跡を追われている。靴底の保護布を早めに外したのが凶と出たようだ。逃げ切れない。ならばどうするか。答えは選ぶべくもない。応援を呼ばれる前にカタをつける以外に道はなかった。槍を利用して近くの城壁の上に隠れ、己の気配を極力消す。敵からすれば、いきなり足跡が途絶えたように見えるはず。「さぁこい・・・もっとだ。」近づいてくる気配と足音に小さく呟き、緊張で高まる鼓動を抑えながら槍を何度も握りかえす。
気配が更に近づく。城壁から飛び降り、上から追っ手に襲い掛かった。「喰らえ、っと!?おぉ!?」思わぬ敵に素っ頓狂な声を上げ、慌てて槍を引いて相手と距離をとった。「ティエンマさん!?」隙のないように構えつつも、思わず出てくる声。ふと、俄かに周囲が騒がしくなる。進入がバレたらしい。退路は既に塞がれたと考えた方がよさそうだ。生き延びるには、敵陣を突破し新たな退路を切り開くしかない。「すいませんね。ここ、通してもらいますよ?」知人であれ、今は敵。認識を改め、距離をつめ、下から救い上げるように突くを連打した。(ティエンマさん、よろしくw)
血の付いた足跡は、次第に薄れていく。曲がり角毎に立ち止まって調べ、僅かに残こされた血で行く先を見定める。やはり間違いなくそれは城へ向かっていた。足音を立てぬよう、それでも素早く路地を駆け抜ける。大きな道へ突き当たると、そこはもう城壁だった。「侵入されたか?」今度はゆっくりと歩きながら、隙無く辺りを伺う。侵入したのなら、何処かに痕跡が残っているかもしれない。だが気を付けて見ないと見落としてしまう程、足跡は薄く消えかけていた。(我が周りに注意を払う。お主は足跡を追え)私は二翼の言葉に従い、地面の足跡に集中し追う。
血の跡が突然途切れた。「あった、二翼!多分ここから…」(危ない、ティエンマ!!)私が言うと同時に二翼が叫び、引き戻されるように数歩後ろへと下がった。敵が城壁から頭上目掛けて飛び掛かって来た。だが、私の姿を見ると慌てて振り下ろそうとした槍を引いた。『ティエンマさん!?』私もその声に覚えがあった。以前彼と共に戦場を駆けたこともある。「トレヴィル…殿」同じ国で戦った2人が、違う国の元で今度は敵として出会う。なんと皮肉な巡り合わせか。
『すいませんね。ここ、通してもらいますよ?』彼はそう言うと一気に距離を詰め、槍で突いてきた。それを飛び跳ねながら幾度か避け、最後の一撃を剣で叩き、地面に着いたところをギリリと踏み付けた。彼の選択は正しい。例え知人であっても、戦場で出会えば敵だ。馴れ合わず、躊躇わずに戦うべきだろう。それが分かっていても、問わずにはいられなかった。「兵を2人殺したのはトレヴィル殿か?」戦争で殺し殺されるのは当たり前だ。それでも、と。彼らの最期を看取った者を、私は知りたかったのだ。
闇に紛れ…船は迷いなく進む海の上なら強い味方が揃っているから。月明かりに見える波間に人魚さん達の姿フィディア城の影が見える頃になると船上もしんっと…息を呑む様に…この船一艘で突撃しても…なんだか危なっかしいという訳で二手に分かれる案を立てる「船長さん、別行動でフィディア城を目指すね」少しでも撹乱出来ればと思う。というか…船を囮に使うようでちょっと気が引けるような気もしつつ…どぼんっと海へ飛び込んだ。アクアで習った泳ぎ…人魚さんにも手を借りて人気のない岸を目指した
夜が明ける寸前の闇の最後の名残その名残にまぎれてファディアの港に近付く一艘の船ご丁寧に船体も帆も真っ黒に染め上げられた明らかに隠密行動用の船である本来なら、暗い空と暗い海原で見つける事も困難なその船もバラエティ豊かな人材を誇る解放軍が相手ではその隠密性を十全には発揮できずある種の爬虫人が備えた赤外線感知能力によって見えざるはずの存在を看破されてしまう「よし、射撃開始。できるだけ船体を狙うように」命令が下されるや否や、一斉に射撃を始める兵士達魔法弾や火矢に照らし出された船体は特殊な能力を持たぬ兵士達の目にも映るようになり彼等の攻撃は更に精度を増して船を襲う
船体は傷付き、帆は燃え破れやがて自らに纏った炎でその姿を闇に浮かび上がらせる黒い船船の側からの攻撃もあるが、集中砲火に晒されている現状では散発的なものに留まって、大した損害は出ていない「飛べ、白八咫!」霊符より召喚された真白い鴉は高熱の魔弾に姿を変えて水面付近の船体に大穴を穿つそれがとどめだったのか、遂には沈みゆく黒い船緊急用の小船で脱出する暇も余裕も与えられなかった乗員は我先にと暗い海へ身を躍らせる春前のこの時期、未だ水温は冷たかろうに彼等には寒中水泳を存分に楽しんでもらうとして些か敵戦力が少な過ぎた気がしなくもないこれで終わりなのか…いや、違う…
黒い船の迎撃地点よりも離れた場所で水辺より密かに上陸する者の音普通では聞こえるはずのないその音を我が異能たる天耳通はかすかながら捉えていた「やられたな、あっちが本命やったか…」船を囮に、あえて冷たい水の中を進めば爬虫人の熱感知にも引っ掛からず本来、捕捉して然るべき我が耳も黒い船との戦いに気を取られ、不覚にも気付かずにいたまったく、こんな冷たい海を泳いでくるとはとんだ物好きか、はたまたドMかまぁ、フツーに魚人種という可能性が妥当かもしれないが…早速、兵士達の中から足に自信がある者を寄せ集め即席の分隊を編成し、急いで駆けつけたならばあるいは、何とか追いつけるか…
矛先を踏まれ、追撃が阻止される。反撃を予想し、腰の剣に手をかけるが、飛んできたのは予想外にも質問だった。「兵を2人殺したのはトレヴィル殿か?」静かな口調。恐らくは先に遭遇した歩哨のことだろう。軽く受け流そうと口をあけるが、言葉を失う。彼の目はそれほどまでに真剣だった。「肯定はしない。否定もしないけどな・・・」知られたく無かった。だから精一杯、名言を避ける。「だがまぁ、気の毒なことをした。ちゃんと弔ってやりたかったが、状況が状況だ。」小さく、だか相手に聞こえるように、そう呟く。だが、いつまでも感傷には浸れない。
「だが、後悔はしない。罪を背負って生きてく覚悟は、随分前に終わらせてるんでね」再び相手の目を見るそのまなざしに、既に迷いは微塵も無く。矛先と、取ってとの間の槍柄に思い切り膝蹴りを叩き込み、その衝撃と槍の弾力を利用して踏みつける足を真上に掬い上げる。「さぁ!重い空気はココまでだ!ティエンマさんを倒してココを切り抜けなきゃ、今度は俺が危なくなるんでね!」生きて帰る。待つものの為に。掬い上げた槍をそのまま回転させ、相手の体勢の崩れた所へ、遠心力のついた強力な切り上げが放たれた。
彼は自分が殺ったとは言わなかった。小さく呟き、少しだけ目を伏せる。それだけで十分だった。彼が殺ったのだ。「だが、後悔はしない。罪を背をって生きていく覚悟は、随分前に終わらせているんでね」彼の言葉に、私は苦笑いを浮かべた。殺したことを責めるつもりはない。戦場では死が当たり前のように傍にあり、昨日まで隣で飯を食っていた者の存在すら、憶えていられなくなる。誰にも忘れられてしまうような死は、あまりにも寂し過ぎから…だから、もし私が生きて帰れたのなら、彼らの存在と死を誰かに伝えてやりたい。
僅かな迷いを払拭し、彼は私を見据える。そして踏み付けた矛先を、柄を蹴って掬い上げた。「ティエンマさんを倒してココを切り抜けなきゃ、 今度は俺が危なくなるんでね!」私はしなる槍から跳ねて逃れたが、咄嗟のことにバランスを崩す。「くっ!」二翼が翼を広げ、後ろへ体を回転させる。そこに風を切った矛先が背をなぞった。白い羽が飛び散り、背中に熱い痛みが走る。「大丈夫かっ、二翼!」(羽が散っただけだ。お主の傷も大したことは無い)私は体を低くすると、槍の柄に添うように剣を滑らせ、懐に飛び込んでゆく。
放った渾身の一撃は、彼の背の翼の機転によって大したダメージを与えることは出来なかった。意思を持つ翼。厄介極まりない2人目の敵だった。カレは空中で体勢を建て直し、槍にそう様にして迫ってくる。ガリガリと、刃が槍の柄を削る嫌な音が迫る。「甘い!」気合の一声。手に持った槍を素早く操作し、相手の剣を巻き込むようにして下へ払い落とすと、そのまま槍で相手の剣を押さえつける。「情けや容赦はしませんよ!?ティエンマさん!」どこか楽しそうにそう叫び、一歩踏み込むと、逆手に抜いた剣で横薙ぎの一閃を放つ。
『甘い!』懐に飛び込んでみるも、長い柄で剣が絡めとられる。『情けや容赦はしませんよ!?ティエンマさん!』槍使いの懐へ飛び込むにはそれなりのリスクがいる。剣の間合いに比べ、槍の間合いの方が深いからだ。「…甘く見ているつもりはないがな」私は呟き、腰の後ろに付けた短剣を抜いた。そして勢いのついた一撃を、その刃で受け止める。幾ら力が強いといっても、少々体勢に無理がある。剣に押されて、自身の刃が浅く脇腹を傷付けた。が、傷を気にしている暇はない。私は左手で腰の鞘を掴み、それで彼の鳩尾を狙って突いた。
逆手の一撃は、短剣に阻まれて大したダメージを与えられずに終わった。キメに行った一撃の反動は大きく、大きく体勢の崩れた状態を相手に晒す。(・・・ヤバイ!!)この隙を見逃す程度の相手ではないことを、重々承知している。長年戦場に身を置き鍛えられた野性の勘が、考える暇もなく大勢を立て直させる。が、時は既に遅く。鞘の先端が直ぐそこに迫っていた。「間に合えっ!!」喝を入れるように声を出しながら、剣を間に割り込ませる。鞘と剣の擦れあう音。直後に、鳩尾の少し脇に重い衝撃が走る。メリメリと嫌な音が髄から響いた。
「がはっ・・・つぁ・・・」思わず漏れる声。相手の攻撃の衝撃を利用して、距離を取る。相手の一撃は、確実に肋骨を砕いていた。(くそったれが!右の10番と11番が持っていかれた!肋骨はマズい!)頭の中に危険を知らせるアラームが鳴り響く。肋骨。そこを壊されたということは、今後すべての動作に痛みが伴うということ。そしてそれは、隙に繋がる。(この状況で長物はもう無理・・・か)槍のような長物を使えば、その分痛みは増す。戦闘での優位より、確実性を選ぶことにして、槍を地面に突き立てる。
「やっぱり、楽じゃないねまったく・・・」愚痴るように呟き、剣を両手でしっかりと握る。そうしなければ、剣をもまともに扱えるかが不安だから。そのまま、軽く慣らすようにステップを踏み、次の瞬間、相手に向かって一気に駆ける。姿勢を極力低く。これで攻撃の飛んでくる範囲が狭まる。歯をかみ締めて一歩事に響く痛みに耐え、目指すは懐。「おらぁぁぁぁ!」もはや話をする余裕はなく。間合いに踏み込んだ瞬間気合の声と共に、突きや切り上げ、薙ぎと、休む暇なく連撃を繰り出す。すべては、ゼロ距離に入るため。危険な行為だからこそ、相手の意識を守備に持っていかせる必要があった。
流石と言うべきか、それとも愚かなと言うべきか。素直に鳩尾に入れば、余計な痛みを感じずとも済んだのに。咄嗟に腹に入りそうな鞘を避けるべく、彼は剣を滑り込ませた。本来狙った場所からずれた鞘は、彼の肋を強かに打ち付ける。鈍い音の手応え。呻きを上げて彼は数歩後退する。あの様子では、肋を数本折っただろう。(これで意識を奪えなかったのは辛いな)二翼の呟きに私は無言で頷く。手元にある武器は、短剣と左に握った鞘のみ。先程絡めとられた剣は、彼の後ろの路上に転がっている。「何とか手に戻さないと…」焦りの色を見せぬよう、じりじりとにじり寄る。
何を思ったか、彼は槍を地面に突き立て手から離す。そして剣を両手で構えた。(来るぞっ!)殺気を感じた二翼が叫ぶと同時に、彼は姿勢を低くし弾丸のように切り込んできた。「おらぁぁぁぁ!」声に込められた覇気。手負いの獣宛らだ。私は連続の攻撃を短剣と鞘でただ受けるしか出来ない。それでも少しずつ回るように右に移動し、武器へと近付いていく。闇雲に打ち付ける刃は、とうとう鞘を二つに折った。短剣だけでの防御は非常に厳しい。「一か八かだ」私は折れた鞘をトレヴィル殿の顔面目掛けて投げ付けた。彼が目を閉じた僅かな隙で…!
脇を転がるようにすり抜けたが、その時、彼の剣先が左肩を引き裂いた。「ぐ…あ…っ!!」それでも何とか地面に落ちた剣を抱え込むように拾い上げ、しゃがんだまま向き合った。肩にぞわりとした感触がし、二翼が言った。(痛みは肩代わりする。だが、分かっているな?)痛みで二翼の空へ飛ぶ動きが鈍くなる。そして痛みを感じないということは、己の命の危険が分からないということだ。私は短剣を戻し、剣を右手に握った。そして立ち上がって駆け出すと、右上段から力の限り斬り付けた。
連撃の中の一つが、彼の手の鞘を叩き折る。残るは短剣。懐に入るのも時間の問題と思った矢先だった。視界に鞘の残骸が飛び込んで来た。思わず、標的から眼をそらす。眼を開けると、彼は間合いの外、先ほど手放した剣を手にしていた。「・・・ちっ!」また、懐に入る気の遠くなる作業をしなくてはならない。しかも今度は、ちゃんとした得物を持った相手に、だ。どうやって懐まで入るか。だが、相手は考える暇を与えてくれなかった。猛烈な勢いで距離を詰めてくる。けが人とは思えない動きだった。
「俺のまだ知らない能力か?」だが、傷は治ったようには見えない。我慢だろうか。だが、相手が距離を詰めてくれるならば、こちらから攻めるより懐に入るのは楽な作業になる。右上段からの強烈な斬撃。「ありがたい・・・」不適に呟き、臆することなく相手に一歩踏み込む。左手に持った剣で、斬撃を受ける。が、そこは渾身の一撃。片手ではキツく、受け止めた己の剣が、左肩を引き裂いた。痛みに顔を歪める。だが、折角掴んだ好機を逃すつもりはなかった。
「肋骨のお返し、させて貰うぜ!?」踏み込んだ足を相手の足の内股を通して、距離を取れないように引っ掛ける。腕を引き絞り、腰を深く落とし、狙うは鳩尾。発勁。長い傭兵経験の中で体得した自身最強の、そして最もえげつない打撃技。肋骨が折れ、威力は落ちても、浸透系のこの技なら骨といわず相手の内臓系に直接ダメージを残せるはず。足、腰、上半身を連動させて激しく体を捻る。その勢いと、全体重を乗せた渾身の発勁を、鳩尾に向けて放った。
渾身の力を込めた一撃は、受け止めた剣を押し左肩をえぐる。だが彼は僅かに顔を歪めただけで、思ったよりダメージを受けたように見えなかった。「浅いか!?」剣に込める力を緩めず、私は更に押し込んだ。彼はギリギリで持ちこたえながら、不敵に微笑んだ気がした。「肋骨のお返し、させて貰うぜ!?」「な・・に?」頭をもたげる警戒心。離れた方が良い。そう思ったが、彼は深く足を踏み込んで、後ろに下がろうとした私の足を取った。
「二翼っ!!」翼は声に合わせて、空へ逃げようと試みる。しかし浮き上がる力が弱い。肩代わりした痛みが邪魔をしているのだ。何かの武術だろうか。体を後ろへしならせ、右手を大きく開く。(気が右手に集中している。あれを食らっては不味いぞ)「分かっている」しかしどうせ逃げられぬのなら・・・鳩尾を狙った一撃。間に左腕を挟めば、幾らか威力を軽減出来るかもしれない。・・・だが捕らえるチャンスだ。(防御しろっ!)察した二翼が叫ぶ。私は右手が鳩尾に入った瞬間、彼の手首を掴み取った。
衝撃が背中へと突き抜けていく。それでも掴んだ腕は放さない。その手を自分の体から引き剥がし、彼の後ろへと捻り上げる。痛みに耐えているのか、二翼の声は聞こえない。すまないと心の中で詫びた。息がかかる程近くに相手の顔がある。「どうする?両腕を封じられては戦えまい?」そして更に左の剣を押し込んだ。血の味が喉を伝い、小さく吐血した。あまり時間は残されていないようだ。
少しずつ、足元から崩れていくような。じわじわと、侵食する戦火。――此処にも、及んでいた。街は荒れ。人々は殺気立ち。早く出て行けと言わんばかりの、圧力。「何故来たの」隣の、ネレイドの娘が唐突に問う。「旅人さんでしょう、貴女。戦う必要は無いじゃない」彼女は、真っ直ぐボクの目を見つめる。「それとも、戦争を憎んでいる?解放軍の皆のように」――息が、詰まるような。胸が、チクリと、痛んだ。右腕が、少し疼いた気がした。
さっきまで乗っていた船が攻撃を受けて燃えあがり沈んでいくぶるっと体を震わせるとついでに頭もぶんぶん振って水気を飛ばす「みんな大丈夫かな…」寒っ…流石にまだ水は冷たい…お腹冷えそう…不安な気持ちを振りはらうように走り出すなるべく手薄な所から見つからないように進んでいけばなんとか一糸報いる事が出来るかもしれない何かをして後悔することも多々あるけど今は何もしないよりは…っと思う全身の感覚を研ぎ澄まし、あちこちで戦う気配を感じながら黒く浮かぶ城の影を目指して走る
敵軍の船を撃破して、別行動の敵部隊を追跡するおそらく敵が上陸したであろう場所に辿り着いた頃にはそこには影も形も無くて、ただ水の滴った跡があるばかりいや、こうして未だ地が濡れているという事は上陸してからそれほど時間は経っていないはずならば、まだそう遠くには行っておらず位置や人数を探る事も可能か耳に意識を集中する・・・魚人種が中心の部隊編成敵部隊の位置は・・・って、あれ?・・・魚人種中心の敵部隊の中で異彩を放つ騒々しくも聞きなれた足音は・・・「ちゅーか、何でアレがこんなトコおんねん・・・」アレ扱いではあるけれどこんな状況ではそんなモンである
魚人達の中で異彩を放つ騒々しい音の持ち主それは既知の女性・・・というには少々語弊があるような見た目、言動ともに明らかなチミっ子けれど、実年齢は妙齢・・・というかイイ歳した・・・ともあれ、そんな知己であったまぁ、相手が魚人中心の編成で行き先が分かっているなら、追い付く事は難しくはなくやがて、見知った後姿が見えてくるその姿に向かって大声で呼びかける「降伏せよ降伏せよー、今やったら手荒な真似やなくておしおきプランBコーススペシャルで勘弁しとくでー!」・・・あれ?何か加速シマシタヨ?こうして、彼女達が捕獲されるまで追跡・・・もとい、追いかけっこが続くのであった
「――戦争は」遠くに視線をやった。海が見える。強い潮風が、前髪をさらう。視線はそのままで、片手で直した。「憎んでいない」娘はきっと、驚愕の表情の後、ボクを睨みつけただろう。戦争を憎み、解放軍の一員となった彼女なのだから。当然だろう。「此処に居るのは、もっと汚い理由」――代償行為だ。守った気に、させてくれれば良い。守るべきものを放棄した事実を、埋めて隠してくれれば良い。守りたいとさえ思っていなかった、自己中心的で、非情の、我を。
「でも今は――」少女に向き直り、少し微笑んで。「この世界を、知りたいのだと思う。争ってばかりの、此処を」それがこの世界の姿なら。それに正義を捧ぐ者がいるのなら。ボクは、世界を見つめる旅人として、それを見てみたい。そっと、頭を撫でようとしたら。パン、と乾いた音がした。じわり、と熱を帯びる右手。娘が、ボクの手を払いのけたのだ。『綺麗事よ!!!!!』叫んで、走り去る娘。じーんと痛む右手を、そっとさすりながら。その小さな、似つかわしくないほどの憎悪を背負った背が遠ざかるのを見つめながら。ボクは、解放軍の勝利の歓声を聞いた。