ただ一つしかない頂其処に到る国には何が有るのか語り継ぐ者の中にソレを知る者は居ないだろう全ては各国の王のみが知る境地其の果てに彼らが得るのは名声かそれとも富かはたまた他の…国の王が幾度も目指し、そして幾度到達しようと到る事無き未踏の場統一と言う名の頂点此度その場を目指すのは平等という言葉を掲げ立つ深緑の森解放を胸に抱き進むイカヅチの群果たして、言葉を抱き掲げる者達の行末は語るのは言葉ではなく、剣戟の音と魔法の色彩行く者に武運を、待つ者に守護を赤く焼ける空を背に戦が始まる
・応対に時間の掛かる場合は一言連絡を・他者の行動・行為を著しく制限、または指定する描写・単騎で戦局に多大な影響を与える行動・俗に言う無敵と思われる行為、行動・世界観を大幅に無視した表現・その他、不躾であったり、不快に思わせる行動や描写上記は注意事項です相手のある場ですお互いに気を付けあい、そして楽しみましョう惜しむらくは短い逢瀬となりますが、両国も、そしてゲリラも御武運を
http://www.geocities.jp/kichi_k/LG_map/top.html(大判/作成:クロゼット様)http://lgtisiki.blog89.fc2.com/blog-category-8.html(携帯用/作成:コルナ・コルチェット様)お貸し下さる両名に感謝を
夜の明ける前朝露の滴る草を踏みながら進むザッ、ザッと歩を進めるたびに足元に冷たい雫が染み込んで行くが、皮の軍靴は僅かな侵入も許さない全ては乾くか土の中へ偵察、ネェ傍らを共に進む連中へ少し視界を走らせ、改めて溜息をつくついた所で同行者の性別は換わりはしないのだがもう一度溜息女性二人に男二人一人邪魔がいる四人一組での偵察行動故にバランスを見ての編成なのだろう二人一組を申し出たが森に強いエルフのみの編成の為に断られたお陰で平地側の偵察。行軍前に済ませねばならないとは言え布告後間もない自国領内に、敵軍が居るはずも無く無駄足と解ってますのに、ネェ
ま、定石通りですけれどガイロナの先、森の横に広がる平地には敵影は無いけれど、明日にでもなれば敵の群で賑やかになるのだろう隣国同士他の国のように領地を侵害して横っ腹を突かれると言う危険性が極端に少ない、組み合っての殴り合いのような戦争明日には乱戦の中に放り込まれると考えると、面倒臭さに辟易してくる偵察任務で適当にゲリラや突出した解放軍を狩って過ごしたい気分だと言うのにゲリラ、いませんかネ無駄とは知りつつ目を凝らす。けれど平原には何も見えない暫くしてもソレは同じ退屈だ…海路を希望すればよかったか。視線と思考の休む間も無く、時は過ぎてゆく
大樹の太く張り出した枝の上黒装束の男が何か集中するように目を閉じ、耳を澄ませている「…ルートB、巡回部隊、防衛部隊、共に多数…ルートC、兵数少なし、ただし多数の罠が有り…ルートD、迂回路なれど進軍は比較的容易か…」エルフィネスの森に潜入し異能の耳をもって後続の部隊のための進軍ルートを探る斥候任務森に分け入り、幾らか進んだところで現状の探索情報を式神たる鴉に託し、後続の部隊へ送るひとまず、これで一応の任務達成しかし、敵地へ深く潜入し得た情報ほど価値は高い金銭的な意味においても一瞬、身の安全と家計を天秤にかけ更なる情報を得るべく、樹上から森の奥へと身を躍らせる
ナントカと煙は高いところが好きだ尖塔の上でポーズをキメている(らしい)大トカゲ……いや竜を見上げながらホントどうしよう森の中にあんなの入らない前回の戦で竜騎士ごっこも気が済んだかと思ったらまだまだマイブームは去らない様で、俄然やる気だ元気だな仕方ないからファディア城での監視に志願してみたが意外にご満悦の様子を見ると城とか塔とか好きらしい多分宝箱とかも好きだその中身はもっと好きだろう城の上から見る公国は緑が美しいそういえば友人があの森の下に眠っている叩き起こしに行くのもいいかもしれん
決戦の報が知らされた後私はしばらく仕事から戻る彼を待っていました・・・が、未だに彼が戻る様子はありません「仕方ないですね・・・とりあえず先に出ましょうか」私は、行先などを書いた手紙を置いて部屋を出ますそして、そのままガイロナを出ると陸地を北上して国境を越えるルートに進みます「ちょっと遠回りになりますが潜入部隊の進攻の確認にもなりますし陸地なら、彼も私の後を追い易いですからねそれに、何より新緑の中を進めるのがいいですよね♪」私は、そんな事を呟きつつ新緑の森の中へと足を踏み入れました・・・
ウェーデン地方、北西部中継地近郊…後方支援の為の荷馬車の上…中継地に向かいながら、揺れる道を乱暴に手綱を引きながら傭兵の男の傍らで、人前では珍しく不機嫌な顔をしていた。大切な装飾の鎖が朝方、家を出る前に、ぷつりと切れたからだ。直して貰えば済むのだが…その時間が無かったのだ。「何故、こんな時に…壊れたのだろう」縁起でも、無い。端正込めて創られた手元の漆黒の十字架を見やり、青年は小さく呟くように、溜め息をついては、司祭服の左胸の内側にしまい込む。二半刻前に先に森へ向かった斥候の情報が届き、急遽、正規の隊から離れ少数で先を急ぐ事にしたのだ。
国境での少数での移動は避けたかったが、余り時間が無かった苦肉の策だった。公国の動きも気になるが…ゲリラと称する他国の精鋭にこんな場所で逢うのは尚更、嫌だった。「一緒に来てくれ」…か…それは、信頼するからこそ…言える言葉自分達の力を。新緑の深まる森に向かう途中に…何度となく傍らから吹く風の心地よさに助けられながら、何時しか目的地周辺にたどり着きそうだった。何とか、無事に…
周りに自然が増え始めると、途端に乗り心地は最悪になる荷馬車は、沢山の荷物と人を運ぶが、乗り心地はいまいちだ幌の中では、恐らくこの部隊の長が、ああでもないこうでもないとこれからの作戦を話しているだが、男の興味は其処に無かった傍らで司祭服を纏った青年が、先程から酷く不機嫌そうに溜め息を吐いている出掛けに、鎖が…と呟いたのを…耳にしていた移動中ならば時間的には問題無いが、此処で直せば…間違いなく馬車酔いをするそれで戦力外は笑えないな…と、首を振って「そんな顔をしていると…折角の美人が勿体無い」囁く様に言うと、自らの漆黒の十字架を外し、何やら術を施してそれを青年の首に掛けた
「ところで…この馬車の、行き先は何処なのかな…?」少数で編成されたこの部隊は、確か後方支援がどうこうと聞いた気がする情報が入ったとか兎に角慌ただしい中、男は大して話も聞かぬ儘に司祭服の青年の後だけを追ってまぁ、正直なところ行き先なんて何処だって構わなかった目の前に敵が居れば、大切なものを傷付けようとするものが居れば排除するただ、それだけだから携えた長剣は、何時でもそれを遂行せんと光り輝いている傭兵だった頃の勘は…最早過去の産物で、戦いからは随分と遠ざかっていたものだが…森が近い事は、身体が報せていた先ずは目的地に…着かねば始まらない
自宅に置いてあった手紙を読み、一路ガイロナ北の森の到達した目の前には新緑の森が広がっている…持っている装備も問題無し「ここからフィーナさんは、奥に向ったようですね…私も後を追うとしましょうか」手紙によると、陸地を経由して国境を越えるとあったここから向うとなると、地図を確認してみたが、一番近い敵拠点はファディア城である「さて、急いで合流しないといけませんね」そして、フィーナさんを追いかける為に森の中を走った
私は、新緑の森の中を北に北上してファディア城を目指して進んでいきます森は、今の所、人の気配も感じられずただ、鳥や獣の声が時々木霊するだけです「本当ならのんびりと森林浴でもしたい所ですが森に敵が潜んでる可能性もあるこの状況ではそうもいきませんよね今は、とりあえず周りを警戒しつつ城を目指す事にしましょう・・・」私は、周辺を気にしつつも森の中をさらに北へと向かうのでした・・・
エルフィネスの森の奥深くへと進む当然、奥へ進むほど、警戒は密になっていく足元に倒れる二人のエルフの兵士その二人は急所を刃で貫かれ、既に事切れていた潜入中に戦闘など、下策の下ではあるが止むを得ない場合も存在し侵入者感知の結界を解体中に発見されて、戦闘に至り何とか二人を屠ったものの巡回の兵士の行方が知れぬとなれば敵の警戒も更に増して、コチラにも少々都合が悪いさて、この状況はどうしたものか…どのみち、この二人が戻らぬ事は、何れ敵軍に知れる事ならば、この状況を逆手にとって…我が得意とする幻術でエルフの兵士の片割れに化けて偽の情報でも流して、森の警備網の撹乱を試みるか
ファディア城より南下した、森へ続く沿岸沿いの最短ルートを進むのは、獣人の三名ばかりの傭兵隊。軍の足並みも揃い斥候からの情報が届いたことで、正規軍の進行も少しばかり歩みが早まり始めていた。この、小隊と呼ぶには心許ない人数の傭兵部隊は自軍の仕掛けた罠などの確認をしながら、平地の先にある森を目指す。幸い、此処までゲリラや公国の偵察部隊に遭遇することも無かったのだが‥(そろそろ馬を降りた方が良いかもしれねえな。)半獣の女は後ろで退屈そうに馬に揺られていた傭兵達に、森までの残り数キロを歩くように促す。気軽な女の呼び掛けに、傭兵たちの返事。まるで戦が日常の一部でもあるかの様だった。
「はぁ、斥候の護衛ですか。いえ、不満は有りません」初日の偵察も無事に終え、その後の平野での戦闘が一段落したと思えば急の呼び出し何かと思えばガイロナ近辺の斥候の護衛ときた告げられた言葉に気の抜けた返事を返す其の様子に呆れたのか、上官は追い払うかの様に手を振ったさっさといってこい、と言われなくても行きますヨ漸く望んだ任を与えられたのだ二人一組四人一組とは違って自由が利く組み合わせ相方を殺そうが、どうしようが、環境さえ整えておけばやりようは幾らでもあるほんと、戦争様々ですよネェ任務先は森の中御誂え向きの状況城の中を歩きながら思わず笑みが零れそうになった
未だ、敵と呼べる者は出てきていないこのまま行けば順調にファディア城に向える筈である敵の気配もまだ感じられない…「フィーナさんは大分先に進んでいるみたいですね…まだ敵と遭遇しないのは幸いと行ったところですか…」まだ、ガイロナの森ならば周囲に警備のエルフ達もいる筈だ何か居ればそちらに任せておけば良いだろう…「手早く、フィーナさんと合流するとしましょうか」再び森を走り出し、ファディア城へと向う
森の中をさらに進んでいく私の視線の先に誰かが倒れているのを発見します私は、その人影へと駆け寄りましたがすでに、その兵は息絶えていました「味方の兵ですね・・・いったい誰がこんな事を?すると近くに敵がいるという事でしょうか?」私は周辺を見回しますすると、同じ格好をしたエルフの兵を発見します私は、彼の元に歩み寄ろうと歩を進めますしかし、同時に、他の方向からもこちらへ近づく気配を感じます(誰か来る!?もしかしたら敵の増援部隊!?ならば、他の味方と合流しないと・・・!)私は、周りを伺いながら、その兵の元に駆け寄りました「ここは危険ですよ!早く味方と合流しましょう!」
銀鏡の首飾りの呪力を用い黒装束に身を包んだ赤銅色の髪の男の姿が長い耳を持つエルフの姿へと変貌するさて、まずは二つの骸をどうにか…する前に、近付いてくる気配を察知するマズイ…せめて、姿を盗んだ方だけでも何とか隠してしまわねば苦肉の策で、片方の骸をうつ伏せに寝かせ顔だけ見えぬようにしたところで森の奥から現れたのは、紫の長い髪を束ねた美人さんその美人さんは倒れた二つの骸を確認した後こちらへと歩み寄ってくる仕方ない、殺るかそう決意しかけた時に…「ここは危険ですよ!早く味方と合流しましょう!」
このねーちゃん、歳の割りにポヤポヤしてs…もとい…いつまでも素直さが失われていない雰囲気の持ち主のようだならば、上手く騙してしまえるか?「いえ、私の事は結構です!それよりも我等を襲った解放軍の特殊部隊がゲルリナ方面へ向かいました!至急、兵の手配を!」…準備不足な即興の作り話で、少し苦しいか?だが、この人ならばと期待するこれで彼女がゲルリナ方面へ兵の手配をしてくれれば敵兵力を分散できて最善それが適わずとも見た目と雰囲気の割りに手練そうな彼女が去れば次善彼女がこの場に留まり、更に近付きつつあるもう一つの気配と合流されるのが一番マズイさて、どうなる事か…
船の甲板にて風を受けているRay。巫女服の格好で彼女は現在幽霊船ごっこ中。他の船員は実体の無いレイスやスペクターやリッチやら悪霊ばかり。戦争の勝敗よりもむしろ生物の精気さえ獲れればよい連中ばかり…。どちらかと言うと『幽霊船』そのものとも言う。(ふふ…前にもこんな事があったような。)遠い記憶を思い出し少々口元が緩む。
当初陸路での進軍が検討されていたが上官の中には「アンデットが神聖な森に入る事は許されん!」って事で船による進軍となった。もちろん、いい上官も多くちゃんとした軍艦を用意されていたが、あえてRayは幽霊船を準備してもらった。(悪霊達はこっちの方がテンション上がるしね♪…実は私もだけど^^;)「さて、このまま何も無ければ真っ直ぐアクポリス城を攻略しましょう!」国旗も掲げていない幽霊船は冷たい霊気を帯びて静かにアクポリス城に進む。
ファディア城に向う途中、フィーナさんの後姿と倒れているエルフの兵士、そして無事に居るエルフの兵士を見つけるよく聞こえなかったが、特殊部隊が来た等が聞こえた「敵襲ですか?」最初に行う事は遺体の確認である的確に急所を攻撃されていて、一瞬で殺された事は目に見えて分かる無事なエルフの兵士を確認してみる…パッと見で無傷だ特殊部隊に襲われたとなれば、信号弾の一発は飛ぶ筈である「すいませんが…特殊部隊が来たとか聞こえましたが…もう一度復唱を御願い出来ますか?何か違和感を感じますので…」
襲われ事切れた兵士と無事な兵士、両方を見ながら剣に手を掛ける「まだ遠くには居ないと思います…先ず、信号弾を上げましょうこの周辺を固めれば見付かるかもしれないですね…遺体もそんなに時間が経っているとは思えませんしね」懐から信号弾の入った筒を取り出して、信号弾を上げた「後、兵士殿…問題無ければ、我々と同行して下さい…只、どちらに逃げたか分からないので、貴方に先行して貰う事になりますが…宜しいですね?」胸の中に疑念を残して、警備の為に剣を抜き、周囲を見渡した…
「ライア・・・なっっあぁ!?」傍らの耳元で囁かれ、首に掛けられた十字架の魔力の重力に…ただでさえ道のりが悪く揺れる荷馬車…危うく、手元が狂って手綱が乱れて横転する所だった。中継地カルガダスに向かう予定が、危うく行き先が血の海になる所だった……など、おくびにも出さずに背中に冷や汗を流しながらも…不機嫌だった顔を何時もの穏やかな微笑みを交えては主人の後の問いに答え告げる。行き先は…と
ガイロナ城内の広場をうろつく人影が一つ「…あれれ、確かここだと思ったのですが」志願し兵として城の周囲を警護をする部隊に配属された…までは良かったのだが上官に言いつけられた雑用を済まして戻ると誰もいない足手纏いと見て、適当な用事に回されたのでしょうか確かにあまり腕は立ちませんけれど!それに、戦時に不要な事をさせたりもしないだろうと思い直す所属部隊の人を捜そうと、周囲を見回すと知人の姿が目に入ったどうやら森へ向かう隊の様「あ、ティエンさーん」ぶんぶんと手を振りつつ声をかけた少し遠いので聞こえるかどうか
合流を促す私の言葉に大丈夫と答える彼が彼らを襲った敵がゲルリナ方面へ向かったと話します「ゲルリナですか?意外な方へ向かいましたねそうなると、とりあえず早く味方にこの事を・・・」そんな事を話していると、森の南の方から誰かがやってきます一瞬敵かと思いきや、来たのはライさんでしたライさんは、遺体を確認すると兵士の彼に向かっていくつか質問をしていますそして信号弾を打ち上げると、彼に同行を促しています言われた彼は急の話のせいか少し困ってるようです私は、ライさんの態度にいつもと違う何かを感じつつも2人の間に立って話しかけます
「でも、あまりこの方に無理をさせるのもどうかと・・・先行して貰うとなると、この方も大変でしょうしましてや、今さっき敵に襲われたばかりみたいですからね」ライさんにそう言うと、私は今度は兵士に向かって話します「でも、もし同行して貰えるなら私も貴方をなるべくガードしますので出来れば私達に協力して貰えませんか?」実は、私には他にこちらに向かう気配らしきものを何となくですが感じていたのですそして、それが、もし敵だった場合ここに留まったままでは、彼の身が非常に危険だと思ったのです私は、彼を見つめながら、その返事を待ちました・・・
森の中、紫の髪の美人さんにテキトーな事を言ってると彼女の後を追ってきたのか、現れた黒髪の男美人とはいえポヤっとしてそーなねーちゃんと話すと無駄に長くなるのは不変の道理か…何か違った方向の諦念を抱きつつ合流を許してしまった黒髪の男の方は美人さんより目端がききそうな様子コチラに簡潔に事態を問い、信号弾を上げる等必要な措置をこなしていくこの手の相手には下手に逆らうよりも素直に従った方が良いだろう「お気遣い無く、私が先導しましょう」テキトーに森の中を引き摺り回してバックレるか、仕留めるか…ともあれ、保険の一つも手を打ちながら薄暗い茂みの方へと二人を導いて行く
北の領に有るファディア城にも、南のアクポリスにも、窮すれば国境を越えてガイロナへの足掛かりに成りうる場所。中継地に辿り着けば、荷馬車を置いて最小限の物資を手渡し、暫し休息したい所だが。そんな時間は無いかも知れないかもだが。「行き先は…ふふ…、一緒ならば何処だって構わないがな?もう少しで中継地だから…ライアナイト」目的地が見えてくると、荷馬車の揺れが更に激しくなる。己自身が落ち着かなくなってきたのは、戦場近くの緊張のせいだろうか。それとも、十字架から身体に流れ込む主人の魔力の熱さのせいだろうか。もう、到達するだろうから…
荷馬車が、ぐらと傾く「お………っと…」後ろの方で、作戦会議を開いていた数人が転がり、鬼の形相で怒鳴っていた「済まない…、只のおまじない程度の魔法だったのだけど…」其方は気にせず傍らの伴侶へ申し訳なさそうに、しかし何時もの笑みを見れば安堵して「ふむ…カルガダス…」告げられた行き先は大方予想通り、と言うところかガイロナは本拠地、一番の激戦区だろう支援に来たなら、其方へ向かうべきか或いは他を駆逐して本隊を優位に進軍させるか…「ふふ…一緒ならば俺も何処だって構わないよだがしかし…良く揺れるな、本当……」
やがて、荷馬車は目的地カルガダスへと到着手早く荷物を纏め、ふと伴侶を見る「大丈夫かい?アレク…」やや、落ち着きの無さそうな表情を心配そうにこの辺りはまだ、静かだ懸念されたゲリラもまだ見当たらず、割と穏やかな時が流れている平時なら、弁当でも広げてのんびり…といきたいがしかし、時折流れる空気は酷く鋭利で戦場独特の…何とも言えない緊張感が走っていた矢張り元は傭兵、か…己の血が、僅か高揚するのを…男は小さく苦笑して「さて…どうしようかね?」行き先を、決めねばならない剣を確かめる様に手にして、男は伴侶へと問いかけた
…静かに進む船。人を怖がらせ、怯えさせる幽霊船だが今はちっとも怖くない。(…むむぅ、遭遇しないじゃないですか。)そう、敵艦にも味方の艦にも遭遇しない。順調過ぎるのだ。(まぁ、その方がいいのかもしれないのですが…サービス精神旺盛な幽霊船としては寂しいです。)幽霊船は順調にアクポリス城へ向かって進む。しょうがないので船内で幽霊達とロシアンルーレットでもしてましょう。…良い子はマネしないでね(ーー;
茂みへ進んでいくエルフの兵士彼が少し離れた所で、もう一度遺体を調べるうつ伏せにされた遺体をひっくり返して、顔を確認する自分の中にあった違和感が一気に氷解する特殊部隊に襲われた無傷の兵士、そして急所攻撃を受けて絶命している兵士…「なるほど…そう言う事ですか」茂みに進む兵士に悟られない様にフィーナさんに囁きかける「フィーナさん、あの兵士…おそらく敵ですよ的確に急所を攻撃できる敵に襲われて無傷で居られるなんて有り得ないですから…どうしましょう?背中を見せてくれている事ですし、後ろから攻撃させてもらいましょうか?」エルフの兵士に視線を向けたままフィーナさんの反応を待つ
彼は私の申し出を丁寧に断り私達の先頭になって茂みの方へ導いていきますその時、ライさんがこっそりと私に囁きます私は、その言葉に内心驚き、そして考えつつも表情を変えずにライさんに囁き返します「そうですか・・・確かにライさんのいう通りかもしれませんねただ、背中からと言うのは何か卑怯な気がするのでやはり、私はちょっと嫌ですね・・・」私は、そこでさらに少し考えて言葉を続けます「なら、ここは私が彼に言いますよそれで戦闘になるなら仕方ないでしょう」そう答えると、私は先行する彼へと近づきますそして、彼の耳元に囁きかけます「貴方、私を騙しましたね・・・もう逃がしませんよ」
テキトーなトコに二人を誘導しようと薄暗い茂みの方へ歩を進めかけるけれど、二人は未だ腑に落ちない様子でヒソヒソと何やら話し合っている・・・まぁ、全部筒抜けに聞こえてるんですけどね?異能の耳『天耳通』の聴力をナメちゃイケマセンともあれ、バレてしまったようで背後から攻撃するだの、それは卑怯だのと二人は真面目な顔して話し合ってるそして、結論は出たようで紫の髪の美人さんの方が、エルフの姿に近寄ってその耳元で囁く…「貴方、私を騙しましたね・・・もう逃がしませんよ」 エルフの口元が笑みの形にニヤリと歪む
「ボクは遠慮なく後ろから攻撃させてもらうけどな?」その声を発したのは二人に背を向けたエルフでなくエルフの後方に立つ黒髪の男の更に後ろ先程まで誰もいなかった空間に滲み出るように現れる黒装束の男その手に握るは白塗りの弓とつがえられた矢薄暗く見通しの悪い茂みに踏み入りそこでエルフの姿だけを虚像として残し本人は更に幻術でその姿を隠蔽して相談中の二人の傍らを気配を消して抜き足、差し足、忍び足せこいだ、卑怯だ言うなかれただでさえ2対1、加えて男の方はSっぽいそんな相手に嬲られて喜ぶ趣味は無いのです役目を終えたエルフの虚像が消え二人の背後から続けざまに放たれた矢が襲い掛かる
「行き先は、ライアナイトに任せるさ…」一段落すると、周囲の兵士達も慌ただしいらしく…主人と二人で取り残されたように、荷物の部屋の中。補給物質の荷物の上で傍らに腰を下ろし、受け取った十字架に口付けては、主人の目の前で地図を広げる。そろそろ、次の伝達が有る時刻だが…ガイロナ近郊に向かった最奥の斥候の連絡が途絶えている。アクポリス近郊では不穏な空気が漂っている様子だが…詳細は不明。ローマス及び首都への帰還は報告されては居ない。…一気に話したせいか、息が乱れる
フィーナさんがエルフの兵士に話し掛けると、エルフの姿が消え、更に自分の後ろから無数の矢がこちらに向って襲い掛かるここは森の中、フィーナさんも茂みに進んでいる「…ッ!」即座に走り、フィーナさんを抱き抱え木陰に隠れる矢の一発がマントを貫き、脇腹に突き刺さる何とか悲鳴だけは押さえ、フィーナさんの安否を確認する「…っ!大丈夫ですか?」矢を抜き、ポケットから消毒液を取りだして患部にぶっ掛ける専門職から見たら何やってんだと突っ込まれそうな処置だが、今は非常時だ木陰から、相手の姿を探して周囲を見渡した(まだ、反撃は出来そうにないな…)
私の問いに彼は答えませんそして、何もなかったはずの背後から声がしますその瞬間、私の前の男の姿は消え同時に背後から続けさまに矢が放たれます慌てて矢を気弾で弾こうとしたその時ライさんが私を庇って抱き抱え木陰に飛び込みます「…っ!大丈夫ですか?」そう私に問う彼の脇腹に矢が刺さり血が流れます彼はその傷を乱暴に処置すると木陰から相手の姿を探しています「私は大丈夫ですよ、どうもありがとうですでも、またこんな無茶をして・・・駄目じゃないですか」戦闘中で無ければ思わず叱り飛ばしたい所でしたがそれは堪えて、すぐにライさんの傷に治療の気を流し込み応急処置を行ないます
「これで少しだけ楽になると思います本格的な治療は戦闘後に改めてしますので・・・」私はそう言うと、体の気をさらに高めます「さて・・・相手は不思議な術を使うようですねこうなると二人一緒だと狙い易いでしょうからここは二方向から攻撃を仕掛けましょう幸い私はライさんのお陰で無傷ですし私が動いて囮になりますので、そこを狙って下さいライさん、よろしくお願いしますね!」私は、そこまで話すと木陰から走り出しますそして、相手の姿めがけて複数の気弾を発射しました・・・
足を止める城内の広場まで降りた所で、聞こえてきたのは自分の名を呼ぶ声誰ですか、全く。これから楽しい楽しいお仕事の時間だというのについと視線を向けた先に居たのは水色の髪の少女少し遠くから元気良く此方へ手を振っていた…オヤ、珍しい場所で会うものだ、と笑顔で手を振り替えしながら歩いてゆく合流した隊の者へは後で追いつくと声を掛けて「リル、意外な場所で会いますネ」とは言え、城内なのだから戦闘が不得手な者もいるだろうまぁ、今はソレは別段良いとして「此処に居ると言うことは志願したのでしョうけれど、お仕事はどうしたんです?サボっていたら怒られますヨ、なんて」
「…うぅん…」男はただ伴侶を護りにきただけだから…はて、と首を傾げた必要な物資を二人分詰めながら、目の前に開かれた地図に目を通して話を聞く伝達が途絶えた、となれば何らかのトラブルを想定せざるを得ないアクポリスは海に囲まれた場所、不穏な…とすると船での侵入かさて……ここ、中継地カルガダスは海に面した場所どちらへ…と問われれば、諸々を考えてアクポリス方面が無難か…戦にリスクはつきものだから、無難も何も無いのだが一気に伝えてくれた伴侶に水を手渡して彼を心配をしながらも、地図の一点を指差す「ゆっくり休みたいところだが、ね…大丈夫か?」アクポリスへと
二人に向けて矢を射かけるが黒髪の男が女を矢から庇い、木陰のへと身を隠すあれだけ矢を放ったのに当たったのは男の脇腹への1本のみか良い反応をしていると舌打ち混じりの賞賛を男に贈りそして、女を庇った男気には偽らざる心底からの賞賛をけれど、ここもまた戦場そんな賞賛の念も躊躇や手加減には微塵も繋がる事はないむしろ、してる余裕こそ無い木陰から飛び出してくる紫の髪の女ゴツイ手甲から格闘家かと踏んでいたが見かけによらず気法師の類だったか練った気を弾幕として放ちつつ、コチラへと駆けて来るこの手の相手との近接戦闘は出来る事ならば避けたいがならば…
二人が木陰でやり取りをしている間コチラもボーっと待ってた訳でなく弓を手放し、新たに手にした得物は使役せし式神を喚ぶための霊符「啄ばめ、猛禽共!」霊符より現れたるは白い鴉の群れ飛び立った鴉はその身を白い魔弾と化して紫の髪の女の気弾を相殺……はせずに彼女の周りを異なった軌道で迂回して傷付いた男の身こそ、その嘴にかけようと飛翔する傷付いた者から狙うのが狩りの基本狩らなければ、狩られる事こそ獣の理なれば弱点があれば徹底的に突かせて貰うしかし、虎の子の式神を攻撃に使ったからには気弾に対しての備えはあらず牽制用だろうけど、痛いだろうなぁ…と腹をくくって受けるとしよう
「さて…アクポリス城はそろそろのようです。みんなも準備しなさい。…準備があるならね。」…話相手は悪霊達しかいない。ついさっき見張りの悪霊からの報告でアクポリス城が視界に入る距離まで来たとの事。(きっと戦場は張りつめた空気なんでしょうね…油断大敵です。気持ちを切り替えないと…。)一人気持ちの切り替えに集中する。周りの悪霊達は身体が資本、準備もいらない。これから対峙する敵を脅えさせ、精気を奪える期待にテンションが上がってお祭り騒ぎ状態。(…うるさい幽霊船だ(ーー;))
フィーナさんの気の治療によって脇腹の傷はある程度楽になる「これで少しだけ楽になると思います本格的な治療は戦闘後に改めてしますので・・・」フィーナさんの言葉に頷いて答える「さて・・・相手は不思議な術を使うようですねこうなると二人一緒だと狙い易いでしょうからここは二方向から攻撃を仕掛けましょう幸い私はライさんのお陰で無傷ですし私が動いて囮になりますので、そこを狙って下さいライさん、よろしくお願いしますね!」フィーナさんは木陰から飛び出し敵目掛けて複数の気弾を打ち出したその攻撃と入れ替わりに白い鴉がフィーナさんを通り過ぎ、こちらに向ってくる
「ちぃ…っ!」木を背中にして鴉をギリギリまで引き付けるこの手の誘導攻撃はすぐに動いても避けられない鴉達が後自身から一寸先程まで来た所で鴉達に向かってマントを投げつける即座に飛び込み前転で別の木陰へと身を隠す目標を失った鴉達はマントを啄ばみ引き裂いていく「結構高いんですよ…あのマント」マントに向って闘気弾を転がすボンッと言う音と共に鴉達は霧散するこのまま、隠れ続けていても、攻撃され続けるだけだろう弱った方から攻撃する、戦いのセオリーである「2対1の状況なら、こちらは相手の動きを縛る程度で良い」木陰に隠れつつ、闘気を纏わせたナイフを敵に向かって投げつけた
木陰から飛び出して走り出した私に相手は術にて白い鴉を生み出しそれをこちらに向かって放ちます私はそれをさらに気弾で相殺しようとしましたが鴉は私の周辺を避けるように飛んでいきますそして、そのままライさんの方へと向かっていきますしかし、ライさんは何とかマントでその初撃をかわしてさらに反撃を開始します(どうやら何とか大丈夫そうですね・・・ただ一羽の攻撃力はともかく、あの数はちょっと脅威ですねやはり早めに術者を倒してしまわないと・・・!)
敵の方は術で攻撃に全神経を集中したのか私の気弾を数発喰らったようです初撃の牽制用なので威力は普通に殴る程度ですがそれでも動きを止めるくらいは出来たようですね「では、今度はもっと痛い目にあって貰いましょうね」私は、相手に一気に接近するとライさんの攻撃にあわせて瞬時に体を逸らしながら回転させますそして、その勢いでそのまま相手の体めがけて気を纏った蹴りを思い切り蹴り込みました・・・
「気遣いを有難う、ライアナイト。」手渡された水を、コクリと飲み干すと喉の渇きと熱さが潤って、身体の中迄ゆっくりと染み渡って、いく。主人の示した先は…南の城だった。元よりガイロナへは正規の隊が向う筈で、ある。主人の的確な見解は深い。ならば、手薄なアクポリス城に向かうのが妥当だと頷いた。暫しの休憩と短い眠りの後に慌ただしく、出立する。アクポリスへ…
竜が塔をよじ登ったり降りたり、城壁の縁を行ったり来たりしている何かに似ている……ああ、「でんでんむしみたいだ」『なんぞ言うたかえ』「何か面白いものでも見えるのか」『うむ』首を伸ばして遠くガイロナの方を伺い見る様子は実に楽しそうだ「見えるのか」『目に映るという意味ではちょっと違うがのう…』楽しそうなのでそっとしておく下手に絡んで行きたがられても困る今頃本隊はどこまで進んだのだろうこっちはこのままピクニックで終われば楽なんだが…『む…主がけしからん事を考えておる』「そんな事はないぞ、俺は働き者だ。ちょっと城の中でも見てくるかな」敵の前にまず竜から逃げる
女が放った気の弾を受ける黒装束の下に帷子や霊布を仕込んでいるとはいえ痛いものは痛いが、やはり牽制用か戦闘には差し支えなさそうだそれよりも式神の魔弾を大盤振る舞いしたというのに男の方は凌いだどころか、投擲剣を放ち反撃までしてくるこの二人、予想以上の難敵のようだ気弾の弾幕と男の援護によって一気に肉薄した女の鋭い一撃回転による遠心力と更に気を上乗せしたその蹴りは容易に皮を裂き、肉を抉り、骨を砕いて臓腑を潰す勢いでまともにくらえば文字通り、一撃必殺だが、惜しい…そう、女の装束がスカートでないのが実に惜しい!…まぁ、当たらないって意味でも惜しいんですけどね?
女が繰り出した必殺の蹴りと、男が放った投擲剣その両方が届く前に、黒装束の姿が霞の如く掻き消えるまた幻術を使ったのかと急に視界から敵の姿が消え失せた女の方は思った事だろうけれど、それは否女の傍らをすりぬけて駆ける赤銅色の狼人の身ならば回避不能の一撃けれど、生憎と我は人ならざる者女の蹴りがこの身に届く寸前にもう一つのあるべき姿…狼となって難を逃れるただでさえ、人よりも体高の低い狼の中でも最小種の体躯人のカタチを狙った攻撃が当たるはずもない確か、同郷の同胞はこれを霞避けと呼んでいたか…疾風の如く駆ける狼は再びその姿を人へと転じ木陰の男に抜き放った刃の形の牙を剥く
カルガダスからアクポリスまでは、そう遠い距離ではない海沿いを警戒しながら進むが、陸は穏やかだった彼の体力と魔力は、出来る限り温存しておきたいあの短い休憩で、少しは疲れが取れただろうか…さて…アクポリス城が視界に捉えられる距離に来た頃「ん…?」海の上、何か影が…見えるアクポリス城を警護する兵もそれに気付いたか、周囲が慌ただしい風に包まれた船だろう…ただ、軍艦にしては小振りな気がするのと…それ以上に、辺りに流れる空気は異様に冷たく感じた「アレク…、視力は…良かっただろうか…?」海を見据えたまま、後で思えば少し間の抜けた事を、傍らの伴侶に問う「あれ…何…?」
真っ直ぐアクポリス城へ突っ込む幽霊船。上空からは矢が雨のごとく降ってくる。解放軍からの警告を無視した報いだ。もちろん、こちらが国旗を掲げていても矢を放つだろうが…。甲板には誰もいない。見えないだけかもしれない。いくら矢を放っても無駄。しかし、異様な空気を漂わせる船を近づけたくないのだろう、解放軍兵士も必死だ。船はそのまま港へ衝突する。一気に船内から悪霊が放出されると、警戒していた解放軍兵士を襲う。恐怖と混乱がアクポリスを覆う。無数の悪霊達は、恐怖に慄く兵士を次から次へと襲い生気を奪う。Rayもその中に混じり刀(日本刀)を片手に兵士を傷付け、精気を奪っていく。
フィーナさんの攻撃を回避した男の姿は小さな獣へと姿を変え、こちらに向って進んでくる、狼は人の姿へ戻り自分に向って刃の形をした牙を剥いたその牙を手に持った剣で受け、肉迫する僅かに押し返した所で剣と身を引き、フィーナさんの傍に飛びのく「…困ったな」先程の立ち回りを見る限り、大振りな攻撃の効果は薄そうであるならば、同時攻撃かどちらかが攻撃を受け止め、隙を作るか…相手の動きを確かめる為に、フィーナさんとの同時攻撃を試みてみよう「フィーナさん!私の攻撃に合せて気弾を!!」フィーナさんに向って叫び、剣から闘気の真空刃を男に向って飛ばした
こちらが蹴り込んだ瞬間、相手の姿は再び掻き消えます「くっ!またですか!・・・今度はどこへ!?」振り向くと狼のような獣がライさんに向かっていきます私はすぐに獣を追いかけて走り出しますそこへ、狼との攻防から飛び退いてきたライさんが私の元へと合流して来ました「フィーナさん!私の攻撃に合せて気弾を!!」そこで、ライさんが言葉に続き真空刃を放ちます「わかりました!」私は、すぐに彼の真空刃に続いて複数の気弾を発射しました・・・
ざあぁっと、耳元を樹々がざわめくようで、風が髪を撫でては首筋を腕の中を駆け抜けて行くと共に、海の南の城を主人と急ぎ、目指す。何も言わないが主人の瞳は、時折何か言いたそうに俺に向けられる。護られるのは、心の寄りどころかも知れないな。「…?」おかしい…城が近付くにつれ、身体が軋むように痛みが走る。闇…いや…尋常ではない死霊達の楽しそうな声が聴こえる…飢えた声が、笑い声が…生きる者には…背筋を凍らせるような…冷たい空気と狂乱の叫び声。闇を司る身…戦場なれば、剣の露となりし幾多の魂の悲鳴も聴こえる数は限り無く…だが…それとは…違う…死者の声しか聞こえない左耳に聴こえるのは…
黒髪の男と刃を交えるこの男、見かけによらず着やせするタイプかマッスル野郎め!人としても軽量級のこの身体マッチョな者との力比べでは、どうしても押し負ける剣圧で我を押しのけた男は飛びのいて、女の傍らに並び立つしかし、あれだけ動いて傷口が開かんものかあるいは、これが若さか…ともあれ、お次は二人の同時攻撃かそれはそれでコチラとしても二人を纏めて討つ好機元より出し惜しみできる相手でないなら我が奥義のひとつを披露しよう先程のように霊符から白鴉を召喚けれど、今度は使役可能な最大数「啄ばみ穿て、三十六猛禽!」二人の同時攻撃と三十六の魔弾が互いに真っ向からぶつかり合う
『アレク…、視力は…良かっただろうか…?』海を見据えた主人の声に戸惑いの色が、混じる。あれが不穏な空気…冷気の…正体か…確かに報告は難しいだろう…高レベルの司教や司祭、或いは古代研究の魔術師ならば、必ず知っているのだが…「噂には聞いたモノならば…幽霊船、かも…知れない」国籍不明の幽霊船はかつて、何処かの戦場にも出没した噂は聞いた。船に人影は一切無い通常では見えないだけだが…身体が…震える
『噂には聞いたモノならば…幽霊船、かも…知れない』伴侶の答えに、男は苦笑した船に人影は無く、ただ…気配だけが漂う兵士達は姿無き敵を迎え撃たんと矢を放つが、霊が相手では通用しないやがては精気を吸われ、倒れていく兵士達を目に男は小さく唸った普通の武器が効かないとなれば、かなり不利だ実体の無い霊を相手にした事も、無いこういう類は…魔術師である彼の方が詳しいだろうか考えてふと見れば彼は僅か、震えている様にも見えた「大丈夫かい…?」心配そうに背中を撫で、問う混乱するアクポリス城周辺不意に目に入ったのは巫女の様な格好をした女性…だった
幽霊船の突撃による轟音から始まった戦い。所属不明の船から一斉に出て来たのが悪霊で問答無用に襲い生気を奪い去る。解放軍兵士は戸惑いと恐怖に最初は混乱する。しかし、解放軍を襲う軍であればどちらにしろ敵であるのは間違いない。解放軍兵士もだてに戦に負けていない屈強の兵揃い。しだいに反撃をしかける。…しかし、押し返すほどの勢いとはならない。(さすがは解放軍兵士です。少しづつではありますが、対抗してきてますね。…でも。)悪霊は普通の武器では簡単に倒せない。魔法の類・聖の類・魔法や気が宿る武器でないと…。
(…それにしてもアクポリスの防御は薄いですね。森の方での戦いに集中してるのかしら!?…んっ??何っ?誰か来る!?)アクポリス城に大きな魂(気)が近づいて来る。…しかも二つ。この二人が解放軍の応援であれば、悪霊が押している今の戦況が変えられてしまうかもしれない。(…早く消さないと!!)二人の距離を気にしつつも兵士達の生気を吸い続ける巫女服の姿があった。
こちらの同時攻撃に合せ、36の鴉がぶつかり合う流石に数が多いだけあって、真空刃と気弾は掻き消されて行くしかし、それは相手も同じだ「…ッ!」右手に握り拳程度の大きさまでの闘気を集め、闘気弾形成し残った鴉達に向って投げつけるこの闘気弾は手榴弾的な物だ、爆音が響き渡ると同時に鴉も何とか消える数匹残っている物を剣で切り落とし、再び構える(さて、どうするか…)剣を構えたまま、フィーナさんに提案する「フィーナさん、ここは貴女の最善と思う攻撃をして貰えますか?私が合せます」相手の行動、攻撃を考えた結果である男を見据え、フィーナさんの動きを待つ
ぶつかり合う双方の攻撃切り札のひとつを切ったのだ押し負ける事はあるまいが手練たる二人ならば、またしても凌ぎ切る事だろうそれも計算のうちではあるが相殺し合う魔弾と闘気が爆ぜその余波は土煙を盛大に巻き上げて作り上げられた分厚い煙幕の壁が双方の視界を遮断する切り札を使い捨てて作った、視界の利かぬこの状況異能の耳が何よりの強みとなる見えずとも、この耳を以ってすれば相手の位置も行動も感知するのは容易い事連携こそを大事とする二人は次の攻撃のための意思の疎通をはかっているがそれを待つほどお人好しではない土煙の向こうの二人へと再び弓を手に取り、続けざまに矢を射かける
「ふふ、有難う…ライアナイト。大丈夫…寒い訳では無いから」恐怖心では無い。ふふ…むしろ、歓喜に震えるのだろう。本来の冥い暗紫色に瞳が翳り、口元に薄い笑いが浮かぶ。背中をさすられると寄り添い、鎖の切れてしまった漆黒の十字架を大切そうに取り出し、主人の剣にしっかり巻き付ける。霊体を通常の武器では、対抗出来ないが…主人の剣にエンチャント(魔力付与)を行っても、持続力が不明だ。ならば…元より力の込められた十字架と合わせ。主人の手を取り、うやうやしく礼をする左指に嵌められた指輪に、守護の魔術を…持続時間は短いが。後は主人と連携出来れば、上出来か。
城周辺に視線をずらすと大勢の中に和刀を持つ、巫女服の…「…ほぅ…確かに幽霊、だな。」…幽霊船を動かす程の霊力の強さ…他の死霊と引き離し、此方に引きつけなくてはな。巫女服の女性に向かって容赦なく雷魔法を叩き込む。ふふ…なぁに、ほんの挨拶代わりさ。漆黒の十字架を手に素早く詠唱して狙いを定める。「編まねく雷光の矢よ、我が主に刃向かうモノ達を全て射抜け!ライトニング・アロー!!」光を帯びた魔法の矢の雨が幾重にも巫女服の女性に降り注ぐ。
悪い予感は的中する!近づく二人は解放軍の応援であった。内一人の気が高まるのを感じる。直後、幾多もの稲妻の矢が雷鳴と共にRayと周囲に降り注ぐ。先に気を感じたRayは余っている片手を振り上げ、霊力による闇の壁状のドームを張り難を逃れる。降り注いだ稲妻をもろに受けた何体かの悪霊達は唸るような悲鳴を上げた。稲妻の矢の雨が降り終わり、砂煙が去ると彼女の周囲いた仲間は、忽然と消え去っていた。(…この気は!?彼女は、この気の持ち主を知っている。…そう、彼は解放軍に付いているのですね。)自然、一人の魔術師の存在が判ればもう一人の彼が誰であるのか判る。
「ここで会うなんて、ちょっと寂しい事よね。でも、今は互いに敵同士。容赦しませんからね!アレス!ライアさん!」ここに居ては、仲間の悪霊がもたない。…早く私の間合いまで行かないと!「さぁ、眠りについた兵士よ!再び起きて、あの者達を襲うのです!」彼女の言葉に先ほどまで死んでいた解放軍兵士がムクッっと起きだす。所謂、ゾンビって存在。彼らには、恐怖心のかけらも無い。起き出したゾンビ達は真っ直ぐ彼ら二人へ向かい襲い掛かる。(ちょっとグロいけど…。その間に私も近くまで向かおう。)彼女の姿はその場で、フッと消える。
大丈夫、と言う言葉に小さく頷いた己の剣に、十字架が巻き付けられる成る程、確かにこの十字架にならば僅かではあれど魔力が籠められているし、大打撃とはいかないが、普通に攻撃も与える事が出来るだろう左手を取られ、礼をされれば指輪に魔力が流れ込む守護の魔術、ダメージを軽減してくれるだろう突如、彼の魔力が高まった瞬間…聞き慣れた声が詠唱し光の矢が巫女服の相手に向かい飛んでいく周囲の悪霊が矢を受け、断末魔の声と共に消えるが、流石と言うべきか当たり前と言うべきか…難無く交わす相手に、男も笑みを浮かべた不敵な、と云うのではなく嬉しそうな
『ここで会うなんて、ちょっと寂しい事よね。でも、今は互いに敵同士。容赦しませんからね!アレス!ライアさん!』聞き覚えのある声それと共に、動き出したのは死んでいた筈の解放軍兵士達だった「ふむ…成る程、ね…無論、俺達も…容赦はしないよ?」当たり前だが、襲い来る兵士の目は虚ろで…ただ、命令のままに男達に牙を向くそれを、何の感情も持たないまま斬り伏せて時折、身体に衝撃が走るが先程の守護の魔術のお陰か、大きな怪我には成り得ない左右へ、上手く動いて出来る限り彼の元へは行かせない様に不意に目の端に入れていた女性の姿が消えた「…ッ?!」尚も襲い来る兵士達を相手しながら、気配を探った
私達の同時攻撃に、相手は先ほどより大量の白鴉を召喚しこちらに攻撃を仕掛けますここでライさんが闘気弾を破裂させさらに残った白鴉を剣で切り落とします(ライさん、さすがですね・・・ただ、ちょっと傷口の方が心配ですけれど・・・)ちょっと心配になる私にライさんはそんなそぶりも見せずに私に、この後をどうするかと話してきます私は、その時すぐに答えを言う事が出来ませんでした(とにかく、あの術を展開させられたらまともに攻撃を当てられませんからね・・・かと言って、遠距離だと白鴉や矢で仕掛けてくるし・・・・・・なかなか難しいですね)
その時、思わず言葉に詰まった私の隙を付くように土煙の向こうでの気の変化を感じ取ります同時に、こちらに一気に近づく何かを感じました「いけないっ!!ライさん、伏せてっ!!」私は、その方向に複数の気弾を打ち込みながらライさんを地面に押し倒しますしかし、次の瞬間、私の左腕に激痛が走ります「あううううっ!!・・・くうっ!こんなものっ!」私は、自分の左腕に突き刺さった矢を懸命に引き抜きすぐに治療の気で応急処置を行ないますしかし、左腕の痛みは治まらず、力が入りません
「もう、これでは左腕は使えませんね・・・それなら!」私は、治療を止めると、右手で傷口に触れ自分の血に右腕の気を絡ませますそして、紐状に形成して、それを相手に向けて放ります赤紐は蜘蛛の巣の糸のように広がりながら、相手に向かっていきますその状況を確認した直後、私はライさんに話しかけます「これを相手にへばり付かせて、少しの間動きを止めますその時を狙って仕掛けてみてください!」
こちらが連携するよりも前に、無数の弓が放たれる連携に合せる事を考えていた為、即座に反応が出来なかった…「いけないっ!!ライさん、伏せてっ!!」フィーナさんが言葉を放つと同時に地面に押し倒される彼女の左腕に、弓が突き刺さる「あううううっ!!・・・くうっ!こんなものっ!」悲鳴を上げながらも、懸命に矢を抜き治療を行なっている今の自分には驚きと沸々と湧き上がる激情を抑えるので手一杯だった
「もう、これでは左腕は使えませんね・・・それなら!」治療を止め、右手で傷口に触れ、フィーナさんは自らの血を使って紅い紐を形成する命の紐…にも見えるその紐を相手に向って投げ、フィーナさんは自分に話しかけてくる「これを相手にへばり付かせて、少しの間動きを止めますその時を狙って仕掛けてみてください!」 立ち上がり、フィーナさんに向って力強く頷く剣を強く握り締める…手から血が出るのではないのかと思う程、強く握る剣に全身全霊の闘気を籠め、剣に纏わる闘気は蒼から紅へと変わるフィーナさんと同じ色の剣を持って飛び上がる全体重、全身全霊の闘気を籠めた一刀を男に向って振り下ろした
土煙の向こう側の二人に射かけた弓撃は女の方にそれなりの傷を負わせたものの相手も黙ってやられてくれるはずもなく傷付いたはずの女は力を振り絞り何かを投げ放ってくる風を切り飛んでくるは紐か?ならば、巻きつけて拘束する気かあるいは、ムチのように打ち付ける気かいや、どちらも違う…紐は蜘蛛の巣を思わせる網状に広がって包み込むように迫ってくる土埃に混じって匂う僅かな鉄臭さ自らの血に気を通し、この網を形成したかここまで器用な錬気の業命のやり取りをするこの場でなければ惜しみなく感嘆し、賛辞を贈れたものを…とはいえ、コチラも大人しく捕まってはいられない
大きく広がり迫り来る紅い蜘蛛の網避けるべきか?いや、網の範囲が拡がり過ぎて攻撃の質は分かっていても、ギリギリで逃れ切れまい下手をして、足でも取られたら目も当てられないならば、この場は我が切り札を破った黒髪の男に倣うとしよう懐の霊符を探る先程からの大盤振る舞いで残った符は僅かに三枚か……符代、経費で落ちるよな?一瞬、そんな事も考えつつ、喚び出した一羽の白鴉迫る網へと狙い澄まして魔弾を飛ばし「爆ぜろ!」羽毛を撒き散らしたかのように炸裂する魔弾一羽の炸裂の威力など、たかが知れ網目に穿った穴はヒト一人分にも満たないものけれど、人よりも遥かに小さい狼の姿ならば…
狼の姿へ変じ、紅い蜘蛛の網の拘束からは逃れたが一息つく暇も無く、飛び掛ってくる黒髪の男彼の感情を反映したのか、手にした刃に纏った闘気は炎の如く真紅に燃え上がる再び人の姿となり男を迎え撃とうとして感じた違和感地に落ちた紅い網は粘着性の血の沼と化し、足に絡み付くこれで機動力を封じられたままで迎撃を余儀無くされる振り下ろされる男の一撃よりも刹那でも早く相手に届くよう選んだ技は刺突足の動きは封じられていても、その場で全身の筋肉を駆動させ刃の切っ先一点に力と殺気を集中し放つ高速の刺突技これも我が切り札の一つ「大口戸牙」狼の鋭い牙という意味を持つ一閃が男を迎え撃つ
気を込めた赤い蜘蛛の糸は相手の脚に絡み、その動きを封じますそこへライさんが闘気を込めた一撃を振り下ろしますしかし、相手もそれを迎撃するように素早く刃を一閃させます「そうはいきませんよ・・・」私はこの瞬間に、赤い網に氷の呪詛を流し込みます網を冷気が伝わり、一気に凍り付いていきそのまま相手の脚へも襲い掛かります「貴方にはちょっと冷たい目に合って貰いましょうね・・・」
恐らく咄嗟に相殺する防御を張られたのだろう…彼女の周辺の死霊達の幾ばくかは、断末魔の悲鳴と共に消え去った。だが…本人はそう、簡単にはいかぬか。更に、たった今…事切れた解放の兵士達を此方に向けるとは、な。「…寂しい場所か…ふふ…そうかも、知れないな、Ray…」
「ハァ…ハァ、…ッぅう…」魔法を放てば僅かな一瞬、呼吸が乱れ隙が生じてしまう。そして、主人への守護魔術はプロテクションの…禁呪…自らの指輪を通し、精神力の続く限り主人の指輪に魔力を送り続ける。主人の受けた衝撃を半減させる為に術者もダメージを半分受ける犠牲術。躊躇えば、戸惑えば…次は己が倒れ、次は虚ろな瞳で自らが最愛を手に掛けてしまうかも知れない。主人の剣が躊躇いなく無く、兵士達を切り裂く。大切なモノを護る為ならば…何人も容赦など…しない「…生きてたら、後で弔ってやるぜ…悪く思うなよ…」小さく呟くと、印を切った
(さすがは二人ですね。動じる事なく対応してる。素晴らしい結束力。この二人と同時に対戦するのはキツいかも。)二人の男はゾンビ兵士に全く動じる事なく、見事な連携で対応している。一人が斬り伏せ、もう一人が守護の役割を言葉の取り交わしも無く、まるで互いが分かりあっているように。そんな事を静観しているRayは実は既に彼らの背後に回っている。もう、かなり近い距離だ。二人からの同時攻撃を防ぎたいと考えたRayは、一人でも傷さえ負わせれば、少しは有利になるかもしれない。(…まずは!)騎士のフォローに集中している魔術師に、スゥ〜っと駆け寄ると刀による突きを仕掛けた。
フィーナさんの援護を受け、高く飛び上がった所で突き出される剣避ける事は出来ない、もしここで避けてしまえばフィーナさんの援護が全て無に帰してしまう受ける場所、それは矢を受けた傷口…剣が矢を受けた傷口を開き、血が噴出す「…っ!!」表情は変えない、絶対に変えてはいけない渾身の力を籠めて、男に向って剣を振り下ろした
「…成る程…」守護の魔術を理解して、男は苦笑したならば余り無茶は出来ない数歩下がり兵士と一定の距離を保つと、剣を天に掲げ詠唱を始めたその時「……ッ」先程消えた女性の気配が、極近い…後方にこの距離は、如何に素早さに自信があれど無理があるならば左手で懐から一枚のタロットカードを取り出し、後背へ投げた只の紙製だが、カードは投げ方で相当のスピードが出る上手く刀に当たれば、一瞬の隙くらいは出来るだろう…後はカードの行方と、彼に任せるしかない…祈りながら「往け…シルフィード!」詠唱を終え、男は目の前の兵士達へと…風の聖獣を放った
(あぁ…違った…こんな場所であうのが寂しい事だと言ったの…か)…どちらにしても、寂しい事だが…息を整えた僅かな時に…前方の巫女服の姿も気配も…不覚にも見失った。霊の厄介な所は素早さ。俺も朦朧したモノだな…自然、主人の安全を確認し周辺を警戒して、視線も集中力も其方に向かってしまった。『往け…シルフィード』主人の声と共に…風の…聖なる気を纏う獣が現れる…では、何処に行った?…故に…背に彼女の冷気を感じ…気配に気付いた…次の瞬間には…「……ぐっ…!!」突かれた刃を避けきれなかった…左胸近くを深々と………口の中に血の味が…溢れる。
タロットカードが風を切り、俺の手元に落ちると、止まらない吐血にみるみる染まっていく。紙製の其れは……『 』のカード…ふふ…主人らしいな「ライアナイト、…有難…うな…」激痛と出血と絶叫しそうになる…意識が途切れそうになるのに耐え、タロットカードに己の血でルーンを描く。其れは霊体を切り裂く刃にも等しいモノとなる。彼女を足止めする位は出来るだろう…
繰り出した刺突の一閃、大口戸牙はその名が意味する、狼の鋭い牙の如く黒髪の男の腹を突き穿つけれど、急所を食い破るべく、狙い澄ましたその牙を男は巧妙に脇腹で受け、致命傷を避けている男は我が剣にその身を貫かれても尚、止まらないそのまま刃を深く潜り込ませながらも真紅の闘気を纏った一撃を振り下ろすその時、下半身に感じる刺す様な冷気紫の髪の女の術であろう未だ我が足を絡め捕らえて離さぬ血の網が凍て付いて両脚を氷の柱に強固に封じ込める振り下ろされた男の刃は我の左の肩口に食い込んで黒装束の下に着込んだ帷子と更にその下に仕込んだ守護の霊布さえも斬り裂いていく
男の炎の如き激情の闘気を纏った刃本来ならば、帷子も霊布も物ともせずにこの身と命を文字通り断ち切っただろうが我が刺突を脇腹に受けるために空中で体勢が揺らぎ必殺の威力を発揮しきれていない男の身体を貫く刃を握った腕に力を込める瞬く間に筋肉が異常なまでに盛り上がり、赤銅の獣毛に包まれて異形と化す右の腕両の脚は氷の柱で強固に封じられ、一歩たりとも退けはしないが男の身体を宙に支えて尚、大地に根付いたように支えられ微動だにも揺るがない喉の奥から漏れ出たのは人ならざる狼の咆哮男の刃に左半身を裂かれながら我もまた渾身の力を込めて貫いた男の身体を硬く凍った地面へと叩きつける
私が放った氷の呪詛により敵の脚は凍り付き、大地へと固定する事に成功しますライさんの攻撃は、相手の体へと喰い込みますが彼もまた再び刃を脇腹に受けてしまいますしかも、次の瞬間相手の右腕が異常に盛り上がるとそのままライさんを地面に叩きつけようとします「そんな事はさせません!!」私は、瞬時に両脚の気を高めるとそのまま一気に走り出して敵の横へと回り込みますそして、気を纏った右腕を相手に向かって思い切り振り下ろしました・・・
狼の咆哮は古来より禍を祓う力を持つとされる黒髪の男を貫き、その身体を支える刃膂力に不安がある人の姿で、そんな力技をやってのけるのに氷の柱で封じられた両脚は大地に根付いたように安定しむしろ、我に好都合であったが男の身体を支えきり、地に叩きつける段に到っては最早、その束縛は用済み錬気の業でも、ただの氷結魔法でもなく『呪詛』を用いた術式ならばそれを祓い、破るのはもう一つの商売柄、大の得意分野である森に響く狼の咆哮は呪詛を打ち破る解呪の祝詞地に脚を縫い付けていた氷の柱はその呪詛を祓われて、微塵と砕けてキラキラと風に散るそれと時を同じくして駆け込んでくる紫の髪の女
氷の呪詛を祓い破り彼の身を地に叩きつけようとしたその時駆け込んでくる紫の髪の女我が男を地に堕とすのが早いか女が彼を援うのが早いか僅かに早かったのは女の方紅い蜘蛛の網を構築するために多量の血を失いながらもその速さは疾風の如く、その挙動は旋風の如く我の側面へと周り込んだ女の一撃は男を叩き付けるべく振り下ろされている異形の右腕に思い切り振り下ろされるあれ?おねいさん…振り下ろそうとしてる腕を更に打ち下ろしちゃうと地面に叩きつける勢いが増してしまうのでは?哀れ男は二人分の力で地に叩きつけられて…この女、もしや我を利用して、男を亡き者にしようと…何て恐い子!!
相手の男の左半身を切り裂き、相手にダメージを与える事に成功するしかし、相手も右腕を獣の様な異形の形に変え、自分を身体を地面に叩き付けようとするそこに、フィーナさんの攻撃が男の振り落とす手に向って振り落とされる振り下ろされる…?流石に焦る、男に突き刺さった剣の柄を咄嗟に蹴り飛ばしフィーナさんに向ってダイブする一緒に悲鳴も上げながら…「フィーナさん!私を殺す気ですか〜!?」そこは蹴り上げる所でしょう!と心の中で突っ込みを入れながらも男の顔に向って闘気の閃光弾を投げつける若干涙目になりながらも、フィーナさんの胸元目掛け身体を伸ばした(これは家に帰ったら反省会ですねぇ…)
気を纏った右腕を相手の「体」めがけて振り下ろした私・・・でしたが、タイミングが狂い相手の振り下ろした腕が、私の拳の前を邪魔をしますこれでは、相手の腕に当たってしまってライさんの危険度が増してしまいます(いけないっ!)しかし、次の瞬間ライさんは相手の体を蹴って閃光弾を放ちながら、私の方へと飛び移ります私は、彼を受け止めると抱きかかえながらそのまま後方へと飛び、距離を取ります「ごめんなさい・・・私のせいで危ない目にあわせてしまって・・・」その時、私は彼に、ただ謝る事しか出来ませんでした(表現力不足な文ですみません〜(^^;)
「…!?」背後からの不意打ちにいち早く気付く戦士は、魔術師を私に何かしらカードをような物を投げる。彼女は直後に、魔術師の身体に刃を貫ぬく。突きへの集中がカードにより若干逸らされたか、急所からは大きく逸れた。(…まずは、一人。)苦しむ魔術師は、先ほど戦士から飛ばされたカードに血文字で何かしている。(…まさかっ!?)これも連携なのかと気がついた時はすでに遅い!?カードからは膨大なエネルギーが集まると一気に風の刃となりRayを切り裂きに来る。
「…ぐわぁ!!」重心が前のめりになったままの態勢で風の刃を交わすどころか受け身すら取る暇もなくRayは風の刃とともに爆風をもろに受ける。彼女が気がつくと、身に付けている服は見事に引き避けている。…そして、爆風をもろに受けた左肩から腕にかけて見事に消失していた。「ふふふ、さすが二人は凄いね!強いです!…でも、一人に怪我さえつけさせれば生気はこちらの物です!」彼らから一度引いて間を取る。…んっ??…あれっ??言って実行したものの、魔術師から生気をうばえていない。それどころか気がつけば周りの兵士も消えていた。
カードは、僅かに集中力を逸らし致命的ダメージを避ける役を果たすだが、それだけだった呻き声と共に、彼に刀が突き刺さる気が乱れ、風が乱れまるでスローモーションの様に、周りの景色がゆるりと流れた…気がした『運命の輪』投げられたカードの名前このカードだから、この結果なのかそれすら、解らないが男は苦笑する湧き上がるのは怒り他の何にでもない、自分への「……空駆ける風も…堕ちたものだ…な」しかし、彼は其処に自らの血で何かを描き、それは風の刃に変わる女性はその風の直撃を受け、吹き飛んでいた霊体にダメージを与える、何らかの魔術だろうか?
無言のまま、血塗れた彼の元へ行き、手を翳す僅かな回復魔法、精々…擦り傷なら治る程度のだが、彼がこれ以上ダメージを喰らうよりはと兵士達を相手に、その上聖獣召喚を使った今、男も魔力は尽きていたが口元にはただ、笑み…「ふふ…君の素早さと的確さもかなりのものだ」早さには自信があったのにな…と懐から再びタロットを取り出す『太陽』燃え盛る炎の象徴魔力を使い果たした今…それは精神力を削って発動させるしかない、背中合わせの…「どちらが先に朽ちるか…」一種の賭けだね…満面の笑みを浮かべて自らの剣でカードに傷を入れると、其処へ精神を集中させた剣は炎を帯びてゆらり、揺らぐ
(状況は…互角か!?不利か!?)辺りにいた兵士達はどうやら戦士の彼が放った風の聖獣によって倒されたようだ。魔術師の彼は吐血するほどのダメージを負っている。しかしその彼の術によりRayの身体も(血が無いから)血が噴き出てはいないが左肩・腕と消失させられている。(…ッ…痛い。)肉体的な痛みは無くとも、精神的・霊的な痛みはもはや気絶しそうなほど激痛を負っている。戦士は魔術師へ寄ると回復魔法をかけると、こちらへ振り返る。
『ふふ…君の素早さと的確さもかなりのものだ。…どちらが先に朽ちるか…』戦士の目は怒りと狂喜に満ち、その手にあった剣は炎に揺れている。(…やばい。マジ切れてるかも。)霊力はもうほとんど残っていない。魔術師から生気を奪うにも…彼の持つ十字架だろう…吸収出来ない。戦士の力を計る事も今は困難な状態だ。「一気にかたをつけましょう!」こちらも残った右腕に刀を持ち下段の構えで対峙する。
敵味方を越えたツープラトン攻撃で地面へ叩きつけられる直前、男は剣の柄を蹴り女の方へと身体を伸ばし女は男を抱きかかえるように後方へと飛ぶされど、目眩ましの向こうに霞んで見えた抱きとめる女に伸びた男の手が、どさくさにまぎれオッパイを触っていた情景彼の故意か、偶然か、はたまた我の見間違いかともあれ、相手が跳びずさった隙に苦痛を堪えて低く唸りながらも、受けた傷の具合を確かめる黒装束の下の帷子と霊布は切り裂かれているが傷はすぐさま命に関わる程ではない傷を確かめる指先に触れる硬い感触それは砕けた金属の欠片元は友人に贈られたお守りの細工物そうか…あの子に助けられたか…
友人のお守りの加護のおかげで未だ幾らかの余力は残っているけれど、我の異能の耳に届く音それは周辺の兵士達がこの戦闘を察知してこの場へと次々に駆けつけてくる物々しい音まぁ、あれだけ激しくドンパチしたり、大声で吠えりゃ周りに気付かれん方がおかしいわな周囲に巻き上げた土煙は晴れかけて切り裂かれた左半身も致命傷ではないが流石に限界は知れているしかし、腕利き二人をこの場に拘束し周辺の防衛網を引き付けられたなら、陽動としての首尾は上々ならば、ここらが退き際か…残った霊符より、最後の白鴉を召喚する喚び出された鴉はその三本足の爪で黒装束の姿を掴み高く空へと舞い上がる
『フォーチュン・オブ・リング(運命の輪)』のカード。己が血で風のルーンを描き、彼女に放つとチャクラのような風の刃が巫女服や霊体の体を切り裂いた。何時しか地に跪いて、立ち上がれない…其処で俺は死ぬ迄に二度と忘れられないような…長い生涯で一番恐ろしいモノを目の当たりにするのだが…此の世で何が一番恐ろしいか?以前は人の心だと、思っていた。移ろい偽り…裏切られる。だが、今なら言える。一番恐ろしいのは…俺の前に来て、無言で見据える眼鏡越しの怒りに満ちた主人の紅の瞳だった。
手を翳されると、とっさに目を瞑り、ビクッと子供のように身を竦ませる。絶対に殴られるのだと思った。全身の激痛さえも凌駕する、恐怖。だが、おそるおそる目を開けると…そんな筈も無く…俺の傷を癒やす回復魔法を唱えている。「…ライア…ナイト」傷が塞がり止血される…吐血が続く口元を抑え…呪文詠唱は出来ぬ…言葉も伝えられぬ。名前を言うのがやっとだった…
フィーナさんに受け止めて貰い、距離を取る相手の男は鴉に捕まれて大空へと舞い上がった「ごめんなさい…私のせいで危ない目にあわせてしまって…」苦笑いを浮かべて頬を掻くまぁ、あの状況では咄嗟の判断は難しい物だ特に左腕を負傷しているのだから、足技を求めるのは酷と言うものである「いえ、大丈夫ですよ…まぁ、何とか助かりましたからね…」脇腹の傷を左腕で押え、フィーナさんに少し体重を預ける流石に今回は無理をし過ぎたかもしれない…「すいません、フィーナさん…ちょっと休みましょう…すぐには動けそうに無いですからね…」痛みを堪え、フィーナさんの反応を待った
痛みが和らげば、と思ったが…予想以上だ十字架に、僅かだが魔力を注いでおいて正解だったのかも知れない…『一気にかたをつけましょう!』刀を構えるのを見て、口元を歪めるこの状況でも闘志を失わないとは流石だ、と「最後まで…楽しまなきゃ、ね…?」喉の奥が灼ける様に熱く、血を送る臓器は何かを訴える様に不規則な鼓動を繰り返し、脈打つ限界が近い、と中段に剣を構え、地を蹴った狙うは右腕…刀さえ、弾き飛ばせれば良い相手の刀目掛け、一気に薙ぐ様にだが視界が突如ぐら、と歪み意識が一瞬其方へ奪われた身体は何とか倒れぬ様に踏ん張るが、振り下ろした剣の行方は…運任せだった
敵はここで限界を悟ったのか白鴉を召還すると大空へと舞い上がりそのまま彼方へ去っていきました謝る私にライさんは大丈夫と言いながら脇腹を押さえながら私に体重を預けてきます「やはり傷口が傷むのですね・・・敵も去った事ですし、今はここで休みましょうかお互いにちょっと血を流し過ぎましたからね・・・」私は、そう呟きながら右腕を彼の脇腹に伸ばして、治療の気を流し込みます森は先ほどの戦いが嘘のように日差しを浴びながら静まり返っています私達は、その森の中でただ静かに体の回復を待っていました・・・
俺の回復力が遅いのは、主人への守護魔術を微力ながら、ずっと注いでいるからだ。霊体との戦闘に置ける最大の防御は魔力と精神力…主人の強さも弱さも俺は熟知している。それはお互いに。炎の剣を中段に構え、手に飛びかかる主人に揃いの色違いの指輪を握り締め、印を組み『祈り』を捧げ、続ける。「ラジェル…シーリア…、ライア…ナイトへの…守護を…」血と共に甘いむせかえるような花の香りが辺りに漂い、主人を包み込む…死なせない、さ約束、しただろう?
長い間、誰かの為に犠牲になってでも、護りたいと思って来た。だが……何時の間にか、護られていた事に気がついた。あの日から、貴方が俺の『世界』だから…胸元の漆黒の十字架の辺りから、徐々に痛みが引いている…十字架に込められていた風の魔力により、大分楽になり何時しか吐血も止まり、呼吸困難も回復していた。やはり、主人にはかなわない。互いに足りない場所を補っては、心を繋げ合わせ。何度も、何度となく…助け合ってきた諦めないさ…最後迄…
(…目が霞む。それに力が入らない。)そうか、これだけ身体が消失すると霊力や身体の機能が低下するのか。私の力もこうなったらおしまいなのかな。…ふと思う。下段の構えをしつつもこれ以上身体は想い通りにならないらしい。一方、向かってくる戦士も身体がグラついている。体力は消耗しているようだ。しかし、友を傷つけられた怒りが起こす力なのか「気」は尋常で無い。(…受けられるか…な。…まぁ、仕事はしないと…ね。)その時、悪霊の一人が私の身体をすり抜ける。情報伝達をお願いした悪霊だ。(えっ!?…公国が敗戦!?)
「まった〜〜!!」思わず向かってくる戦士に叫び戦闘態勢を解除する。傭兵であるRayには身体を滅ぼしてまで敗戦した国に仕える気は…無い。冷たいかもしれないが、所詮傭兵。「どうやら、こちらは戦いに負けたみたい。この勝負はこちらの負けですね。勿論、私の処遇もあると思う。しかし、本国の無き仲間を見送ってからにしてほしい。それからならどうとしてくれてもいいから。」向かってくる彼に刃を向ける気も無い。「あっ!そうそう。血だらけの彼、アレス。多分、死ぬことは無いよ!?」私の殺意・殺気が無くなれば傷口は塞がり、癒える。彼が死んで無ければの話だが。
『まった〜〜!!』叫ばれてハッとするしかし、既に重力のままに落ちる剣を止めるのは至難の技「……ッ」咄嗟に動いたのは背中の翼薙いだ軌道に割り込み、剣の勢いを止める白い羽根がパッと舞い散り、剣はがらんと音を立てて地に落ち、自らも体勢が崩れて跪いた「随分な所で止めてくれるな…」耳に届いたのは終戦の報解放軍が勝利した、らしいだが、国に拘らぬ男に特別な感動はない…目の前の女性に目をやり、小さく笑う「動けるなら、早く戻った方が良い…此処は解放軍領故…それと…、戦の終わった今、君をどうする積もりもないさ」彼さえ無事なら、構わない
男は剣を拾い上げ、後方へと「…御免な、アレク…それから、有難う……」彼女の言うように…彼女に殺気が無くなれば傷は癒えるのだろう身体の傷は…何時しか癒えるだが、危険にさらした事実は変わらない一歩間違えば…………いや、もしもなど…考えずとも良いか…互いに助け合い、こうしていられるのだからこれからの永い月日も、幾度立つか解らぬ戦場も二人で助け合いながら甘い花の香りが、身体も心も癒やしてくれる気がした「少し休んだら、帰ろうか…」治療しないと、ね…
…アクポリス城より終戦を告げる勝利の鐘の音が聞こえると同刻に、彼女の制止の声が重なり、剣を無理に軌道修正しただろう、主人の白い羽根が、舞い散る。…慌て、主人に駆け寄る。対する彼女も霊体の損傷が激しい…ゆっくり首を横に振り、静かな声で告げる。「幽霊船をあのまま、此の地に置いて置かれては混乱しか起こらぬ…故に撤退を願おうか…Ray…」…弔いは…司祭の役目…公国旗を掲げておらぬ船は奇襲かは不明故に…
主人の羽根をそっと撫でながら、真っ直ぐ彼女を見据えた視線を落としては傍らに逸らす。二十年前ならば、国の勝敗にも感慨も有っただろうか。今は主人の意が全て。主人の言葉に小さく続ける。「弱きが倒れ、強きが残るのが、戦の理(ことわり)。…主人が、そう言っているのだから…俺も心は同じ…早く此の地を去るといい…」運命は変えられるのだと…海渡る風が囁きかけたのは何時だったのか…ゆっくりと主人の羽根を何度も撫でながら、ボソリと。「俺こそ未熟者で済まない…ライアナイト…特別治療せねばだな…」