住みやすき土地を求め、大陸に覇を唱えんとする「北の雄」、ドラバニア帝国。他国とは異なる文化と、不思議な力を持つ「忍の国」、月光の民勝者という名の「椅子」を賭け、どちらかが倒れるまで続くこの戦い、勝利の女神が微笑むのは、果たしてどちらか・・・。
・応対に時間の掛かる場合は、相手方へ一言連絡をお願いします・他者の行動・行為を著しく制限、または指定する描写の禁止・単騎で戦局に多大な影響を与える行動の禁止・俗に言う無敵と思われる行為、行動は慎みましょう・世界観を大幅に無視した表現は控えましょう・その他、不躾であったり、不快に思わせる行動や描写は避けてください以上のことに気を付けてくださる様にお願いします。お互い、気分良く出来る様にご協力をお願い致します。
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「・・・はぁっ!」足軽兵の薙刀と、ソランの槍が交差する。馬上から放たれたその一撃は薙刀を払い、敵兵を貫く。「この辺りは大丈夫そうか・・・ 海岸側の部隊の援護に向かう!」周辺の友軍に声をかけ、移動を始めるソラン。各地はまだ混戦状態だ。しかし・・・。「おい、自由騎士・・・今回の戦は」同じ傭兵の騎馬兵が声をかけてくる。「ああ、分かっている。 だが、こちらも退けん・・・行こう。」傭兵騎馬隊は海岸方面を目指した。
情勢が少しずつ帝国に有利になりつつなってきた今私は、密かに対岸の月光側に上陸していました私の今回の任務は戦闘というよりも現在の相手側の状況を確認して情報を持ち帰り今後の戦況をさらに優位に運ぶ様に導く事にあります私は周辺を見回しますが、今の所敵の影は見当たりませんそして、私の視線の遠くには高く聳え立つ塔が見えます「あれが、例の塔ですね・・・確かに、名前に似合っててその外景も周囲の雰囲気も、何だか妖しげな感じですねでも、こんな所には敵が潜む事は無さそうな気がしますが・・・」そう思いつつも、私は任務に従い周囲の状況を気にしつつ、小走りに塔へと向かい始めました・・・
風の住処を抜けて、鬼の隠れ里に向かう。自分の他に二人の剣歩兵と、40人ばかりの斧槍兵。先日まで、あちこちを見回りをしていた土地だけに、何処をみて回るかはある程度予想がつく。「下の道、歩哨が進む道。足元気をつける」他の剣歩兵に伝える。それに習って進む斧槍兵。
今回の目標は鬼の隠れ里への強襲偵察。火でもかけれれば万々歳。相手の土地柄を知っているのは、自分達傭兵を雇うときの余禄のようなものであろう。わずかに開けた空き地で一休みする。剣歩兵や、一握りの傭兵を除けば、一月で農夫の4倍の稼ぎが得られることで集まってくる農家の次男三男坊ばかり。強行軍が過ぎれば、目的地で動けないということもありえない。それぞれ、剣歩兵を中心に三交代で野営をすることを決めると、野営の準備を始めた。
地面に長苦無を刺し、呪を唱え、人が乗れるくらいの大鷹(焔鷹)を喚び出す。そしてその背に乗ると「ふわり」とした浮遊感と共に空へと舞い上がる。眼下の陣地では、城壁の修復と防衛隊の編成が急ピッチで進められている。数名の兵がこちらに手を振っているのが見える。こちらも笑顔で手を振ると、針路を北に取った。空から見る里の景色は、今日も変わらず綺麗だ。
『里の防衛陣地構築のため、侵攻する敵を足止めせよ』数刻前に、上司からこの任務を聞かされた。志願制のこの任務にどうして自分が志願したのか。実は自分でもよく分からない。国のため、散ってしまった仲間のため?(・・・自分の本心はどうなのだ?)ただ、この景色を見ると志願理由が分かった気がした。自分は、この景色を守りたいのだ。「急ごうか、焔鷹」そう言うと、迫る敵を求めて里を後にした。
「40人ちょいが野営中…歩兵の威力偵察隊か何かかな?」鬼の隠れ里の一角住人が疎開し、空き家になった一軒の民家の中に潜む黒装束に身を包んだ10人程の集団その中の赤銅色の髪の男が集中した様子で耳を澄ましている「野営中なら、強襲しやすかい?」副長格のやや大柄な男が問いかける異能の耳を用いた索敵で敵の規模や兵種は窺い知れたこの戦力差では野営中に強襲したとしても危険が大き過ぎると判断する元々、今回は月光側の体勢が整わぬ状況での開戦負け戦は決まっているようなものであるから尚の事、味方の損害は抑えておきたいよって、下した結論は…「よし、燃やしちまおう」
「了解」「あいよー」「めんどくせー」「Zzz…」居眠りしてた一人を蹴り起こしつつ腰を上げる黒装束の者達近隣の空き家から油や藁束、松明などを集めてくる外つ国の者曰く「木と紙で出来た家」と称される月光の建築帝国などの石造りや煉瓦造りの建築物よりも再建が容易な事からこの手の焦土作戦は、割と伝統的な戦術といえるまぁ、再建費用は国持ちだし…これで敵が混乱すれば良しそれが叶わずとも、焼け跡の撤去作業か迂回を余儀なくされ後続の進軍を妨げられる事だろう「も〜えろよ、もえろ〜よ〜♪」紅蓮の炎に包まれた鬼の隠れ里の一角で場にそぐわぬ鼻歌は火の粉の爆ぜる音にかき消されていく
厚布を巻いた杖の柄で、地面を引っ掻く月光の民からすれば面妖であろう魔術文字は、防衛機関にすべく描いたまともに用いるのは初となる、えげつない仕掛けだ刺激に反応して強烈な電撃が炸裂する代物核に魔石を埋めこみ、土を被せて隠せば出来上がり。高価な材料だから、幾つも使えないのが難点だけれど「其処らの文字は踏まないようにして下さいな 一度きりしか使えませんの …はい、完了。次は東に案内して下さる?」緊迫した雰囲気が村中に漂っている中枢手前の防壁となる地は、ひとたび帝国兵に抜かれれば、さぞ、荒れてしまうだろう一般の民は疎開しており此処には居ない小さいけれど、いい村だと聞いていた
それが何処の国であれ、焼けてしまうのは忍びない足軽に連れられ、早足で歩く残された時間は僅かこの国にできてしまった隙を見事に突かれた形で、もう負け戦は確定しているのだから祖国に刃向かうのは心苦しいが、逃げ隠れする気とて湧いては来ず、その理由を考えてみれば単純極まりない民の悲しみに、他国と如何程の差があるのだろうそれに、この地の神秘に興味があるこんな状態では、調べ物など夢のまた夢北側での仕込みを終えたことだし、次は帝国に面した東側へ向かうとしようそれにしても、湿度が高くなってきたじっとりと肌に空気が絡み付く目には見えないが、きっと空は曇り模様――雨が降るかも知れない
空を行くこと数刻、視界に塔が見えてきた。100の階層を誇る災いの塔…。何をもって「災い」なのかは定かではないが、迷信深い私には、あまり近づきたくない場所だ。しかし、立地上では監視を行うにはこの上ない場所。本陣が置かれる里方面への一本道を高所から展望することが出来る。(贅沢を言っている場合では…ないか)そう自分に言い聞かせ、塔の屋上に陣取った。
「……。」聞き取れないほど微かな呪文詠唱の後、氷の塊が敵兵を襲う。今日は、魔法の調子が良い…。もっとも…、戦で使用する魔法なので喜ぶ気にはなれない。ドムルク城から少々離れた海岸付近…。私は戦士たちの後方から後方支援を行っていた。今回の相手は月光の里。懐かしい…、想い出の地…。できれば、このままあの地には踏み込まずに戦が終わって欲しいものなのだけれど…。覚悟はしておかなくてはいけないのかもしれない。周辺で戦の気配を感じる。傭兵騎馬隊が敵軍と交戦に入ったのかもしれない。無事を祈らずにはいられない。…いや、まずは自分の心配か。思い直し、何度目か判らぬ詠唱に入る。
上陸してから数刻がたち私は、順調に災いの塔までたどり着きます普段なら探索者達がいるはずのこの塔も戦争に巻き込まれるのを嫌ってかその姿は無くその周りは静けさに包まれています・・・「やはり敵の姿は無いようですね・・・」周辺を見回してふと呟く私・・・この時、頭上に脅威が潜んでいる事に私はまだ気づいていませんでした「さて、こうなると塔の中も調べた方がいいんでしょうか?でも、モンスターも出る塔の中に潜むのは考え難いし周辺の村へと向かった方がいいのかも・・・」私は、とりあえず、次の行動をどうするか考えるのでした・・・
焦げ臭いにおいがする。村はずれとはいえ、民家に宿営したのが間違いか。歩哨と見張りの剣歩兵たちが、水を打ち対策を始めているが、休憩していた斧槍兵は我先に民家の外へ飛び出す。「ぎーーー!罠!出てはダメ」厚手の布服に剣鉈か斧槍を抱えてばらばらに出て行けば、敵の良い標的になるだけ。それもわからず、恐れた者は小屋を飛び出していく。
ガンベゾンに、鎖帷子をつけると、プラカートとサレットを身につける。歩哨組は逃げた兵に声をかける。彼らを追うのが人情かもしれないが、人情で自分の命を落とすのは、他の者も殺すだけ。手早く防具を身につけると、大剣を持って他の二人と合流する。敵の出方を見て、行動をしなくてはなるまい。
吹き付ける冷風をものともせずに、屋上に腰を下ろす。なんて事はない、空腹になったのだ。腰に付けた小袋から大福を取り出し、口へと運ぶ。(腹が減って何とやら・・・か?)先程の緊張感は何処へやら。我ながら、自分の図太さに感心する。
ふと、視界に炎が上り始めた村が見えた。あの方角は、鬼隠れの里・・・。敵兵が放った火か、味方の作戦かは判断しかねるが、あそこに敵がいるのは間違いない。(思ったより押し込まれているな)しかし、彼処にいる敵は大した数ではないだろう。少し針路からずれていたとは言え、こちらは空を来たのだ。姿を確認できなかったのなら、自ずと人数は限られよう。それに、あの区域には味方がいたはず。あの敵は彼らに任せ、自分は自分の任をこなせばよい。そんなことを思いつつ、さらに一口大福を頬張った。
(・・・!!)不意に、何かの気配を感じた。数は一つ。我らヘイアン人や塔内の魔物といった類の気配ではない。冒険者かとも思ったが、この御時世で戦地へと「冒険」に来る者など斥候と相場は決まっている。そして、その背後には敵の本隊がいるだろう。「さて、と」私は既に喚び出してある「焔鷹」乗ると、新たに喚び出したもう一羽の大鷹「凍鷹」を伴い下へと急降下した。敵の間合い外であろう高度で降下を止め、声を上げる。「そこなご令嬢!ようこそ月光へ!!」そして刀を抜きつつ、言葉を続ける。「最も、そなたは招かれざる客人のようだが・・・」そういうと、私は相手の出方を窺った
突如、挙がった火の手に驚いた敵兵達が民家から飛び出してくる様子が異能の耳に伝わってくる冷静に対処している者もいるが中には恐慌をきたし、逃走を図る者もいるようだまずは首尾は上々か「よし、大隈と乾、狛井と猪原は二人組で逃走した敵を追え積極的に攻撃せんで良ぇから、後ろから脅かして混乱させたれ」これで恐慌が後続の軍勢に伝われば不安感や月光軍の規模の誤認を誘い幾らか士気を挫く事ができるだろう「応!」という声を残し敵逃走兵の追撃を命じられた4人は人の姿から、半ば己の本性に立ち戻り獣人と化して、燃える炎に赤く染まった夜の闇へと消えて行く「さて、お次は…」
逃走した敵兵の対処は済んだが残るはこの状況でも冷静さを失わぬ者共一筋縄ではいかぬだろうが…異能の耳で敵の現状を探る逃走する者、それを留めようとする者、襲撃に備える者それぞれが錯綜し、上手く音を捉え難いここは更に詳しく探るよりもこの機を逃さず、拙速に攻めるが吉か残りの手勢を率いて炎が吹き上がり、火の粉の舞う鬼の隠れ里を駆ける未だ火の手の届かぬ一角の民家混乱する兵を叱咤し、よく纏めるのは一際大柄な男その額に生えた二本の角…鬼種か…厄介な手合いならば…「啄ばめ、白八咫三十六猛禽!」霊符を惜しみなくバラ撒いて手持ちの最大級の火力、魔弾三十六斉射で制圧を試みる
次の行動を考えていた私の目前に突如頭上より二羽の大鷹を従えた女性がその一羽に跨って降りてくると刀を抜きつつ、私の上より声をかけてきます(急に頭上から声がするのでびっくりしましたね・・・(^^;それにしても、最初から抜刀してるという事はもう戦いを避けるというのは無理なようですねまあ、状況からしても、私は敵以外の何者でも無いですからね仕方ありません・・・覚悟を決めますか・・・)私は、見上げて彼女を見つめながら話しかけます
「そうですね・・・私は、現在の戦争の敵国の人間ですから確かに招かざる客人という事になりますねそして、私はこの国を探りに来た身なので本来の目的は戦闘では無いのですがまさか、このまま逃がしてくれるはずも無いでしょうねでも、私はそう簡単にはやられませんよ・・・」私は、体内の気を高めながら構えをとりますそして、相手をじっと見つめて、その動きを探るのでした・・・
こじんまりとした村だ、東側には直ぐに辿り着く事ができたそれも帝国軍が月光の衆によって押し留められているが為仕掛けは先程と同様、やることはそっくり同じ先導してくれた足軽に土掘りを手伝って貰う傍ら、魔術文字を地に記してゆく『厭な風だ…、それに北の方角が紅く煙っている おおよそ村の辺りか。どちらの手による火の手かは分からぬが』「時間稼ぎか、はたまた一戦始まったかの…どちらでしょうね」足軽の土を弄る気配と、顔を顰めていそうな苦々しい口調に頷く間にも、手を止めずに一句、一句と刻む生ぬるい風が湾から流れて来ている足軽に必要数の魔石を手渡すと、土を掛ける音を耳にしながら溜息を吐いた
(…なるほど、確かに簡単に勝てる相手ではなさそうだ)空を押さえている此方に動揺した様子も見せず、静かに戦闘態勢に入った相手を静かに観察する。背は…私と同じくらい、軽装。これといった得物は見当たらないため、気掛かりなのは、相手の体に沸き上がる「力」…。(魔術士型か、体術型か…)判断がつかない。さて、どうするべきか…。
そこまで考えて、思わず自嘲気味の笑みを浮かべる。判断がつかないならば、攻撃して確かめれば良いだけのことだ。対処の仕方で、わかってくるだろう。「私も簡単に負けるつもりはない…」騎乗している焔鷹に一気に高度を取らせると、数本の長苦無を取り出す。「…いくぞ!」そう叫ぶと同時に、持っていた長苦無を相手目がけて投擲し、その行方を目で追った。
相手の方は大鷹に騎乗したまま、さらに上空に上がっていきます(う〜ん・・・困りますねこちらは飛ぶ事が出来ませんからね・・・どうしましょうか?)すると、今度は叫びと同時に持っていた武器らしきものを複数こちらに向かって投げつけます「なら、こちらは迎撃するだけですね!いきますよ!」私は、両腕に複数の気弾を形成しますそして、まず右手の気弾を、飛んできた武器に向かって発射します気弾は、相手の武器に命中して違方へ弾け飛ばしますそして、さらに左手の気弾を彼女が騎乗する大鷹めがけて発射します「とりあえずは、大鷹さんを一羽ずつ叩き落して彼女には地面に降りて貰いましょうか・・・」
「…ッ!」私は、心の中で悪態を吐きながら焔鷹に掴まる手に力を込めている。相手は「気」で此方の長苦無を逸らしただけでなく、攻撃までしてきた。しかも、こちらに向かってくる「気」は一発ではない。上昇や旋回して回避する時間はない。ならば取るべき道は、一つしかない。私は大きく息を吸い込み、迫り来る「気」に向けて急降下を指示。数発が体を掠めて傷を拵えたが、構わない。この降下先には、仕留めるべき相手がいる…。(躱せるものなら…躱してみせよ!)私は急降下の勢いを受けた白刃を、相手に向け振り下ろした。
「シ…ヤ〜〜〜〜」何か声が聞こえてそちらを向く。白い光弾が自分に向かって襲い掛かってくる。柄と刀身の半ばを掴む、剣歩兵独特な剣の保持の仕方で、光弾から身を守る。正中線以外に衝撃が走る。
「ギっ!?」次々に身体に打ち込まれる衝撃で、一歩二歩とよろめいた後一気に後ろに吹き飛ばされる。最後に焼きを入れたプラカートに凹んでいる。身体を起こそうとすると、何箇所かに鋭い痛みを感じる。近くに居た斧槍兵が手を貸してくれたおかげで起き上がれる。他の剣歩兵は退路の確保を指揮している。「来るならコイ!」動くたびに痛みを感じるが、折れては居ないらしい。一度体制を整えるまでぐらいなら、十分動けるはず。
私が放った気弾は思惑通りに敵の苦無を弾きますしかし、鷹に跨った彼女は怯みもせずに気弾を掠めつつ頭上より急降下してきます(もし、ここで逃げて相手に背を向けたらすぐに、鷹の羽ばたきでその降下軌道を変えて私の背後から襲い掛かられてしまうでしょうならば、ここは全力で防ぎきり、そこから反撃に転じるのみです!)私は、全身の気を高め、さらにそれを両腕に集中しますそして、左腕の篭手を相手に向け、そこに右腕を添えて振り下ろす白刃を全身で受け止めます直後に刃と篭手がぶつかり大きな音が響くと共に頭上からの衝撃が左腕から全身に響き渡りますしかし、その衝撃は、私の想像を遥かに超えていました
「駄目っ!防ぎきれないっ!きゃああっ!!」私の体は、その勢いに耐え切れずそのまま背中から地面に思い切り叩きつけられます背中からの強烈な痛みが貫き、一瞬息が詰まります「あうううっ!!・・・ううっ!ぐふうううっ!!」私は、その痛みと苦しみに、すぐに立ち上がる事も出来ず地面に倒れたまま、悶え苦しむ事しか出来ませんでした(ううっ・・・な、何て衝撃なの!?でも、こんな所でやられる訳にはいきませんよ!!)私は、仰向けに倒れたままの不利な状況の中それでも、相手を睨みつけながら、再び体の気を高め頭の中では、反撃の状況を探り続けました(とにかく、今は体勢を整えないと・・・)
放った36の魔弾は狙いを違えず大柄な鬼種の男へと命中する鬼種の男は剣の刃を盾とし、一度は後方へ吹き飛んだものの立ち上がり、その瞳から戦意は僅かたりとも失われておらず割と元気に「来るならコイ!」とか言っている剣を盾とし、鎧に護られていたとはいえあれを受けて立ち上がるとは…流石は鬼種、その頑強さには舌を巻かざるをえないしかし、あの魔弾で制圧できぬとなると途端、こちらの劣勢は否めないが一部の敵兵は退路の確保に動いているようで前衛に立つ兵の数が限られているのならまだ幾らかやりようはあるか…付き従う黒装束達に相手に意図を悟られぬよう、符丁を用いて指示を送る
指示を受けた黒装束達は散開し敵兵の視界から逃れるべく未だ火の手の迫らぬ建物の陰へと身を隠すそして、我はそのまま鬼種の男へと吶喊勢いにまかせ、加速と体重を乗せて斬りかかる我と鬼種の男が戦闘に突入すると同時に黒装束達は建物越しに命中度は度外視して、放てる物なら何でも矢でも炸裂弾でも魔術でも敵兵へと投げ付ける敵兵が退路の確保に動いているなら向こうとしても、この戦闘は撤退までの時間稼ぎならば、その尻に火を点けて、速やかに去ってもらうが吉このルートでの侵攻は旨味が少ないと思わせられたなら上々もっとも、それまでの間鬼種の男と敵兵を凌ぎ切るのは一苦労ではあるけれど
私が振り下ろした刀と、彼女の気が込められた手甲が激しくぶつかる。文字通りの「力比べ」になったが、この場は急降下の勢いがあるこちらに分があった。私は刀を振り抜いて相手を吹き飛ばすことに成功し、焔鷹とともに再上昇する。彼女は吹き飛ばされた際に受け身がうまく取れなかったのだろう、うめき声を上げつつ悶えている。もっとも、戦意は些かも揺らいでないようだ。こちらに向けられる力の籠もった視線と、再び高まりつつある彼女の「気」が全てを物語っている。
戦意を失っていないならば、態勢を立て直される前に攻撃したい。しかし自分はまだ再上昇の最中。反転、再降下には高度が足りない。さて、どうしたものか…。「凍鷹!」数瞬考え、私は喚び出していたもう一羽の大鷹の名を口にすると、刀の切っ先を相手に向ける。すると、我が意を察した大鷹は甲高い鳴き声で応えた。そして相手に爪を突き立てるべく、翼を翻して滑空していった。
倒れたままの私を残し彼女は鷹と共に再び上空に舞い上がります「ううっ・・・このままでは弄られるだけ・・・何とか彼女をあの鷹から引きずり降ろさないと・・・」しかし、こちらの思いと裏腹に今度は入れ替わりにもう一羽の鷹が彼女の命を受けて急降下してきます「いけない!早く起きないと・・・ううっ!!」必死に体を起こし避けようとしますが、体の痛みにそれも叶わずすでに鷹は寸前まで迫ってきます私は思わずその鷹の爪先に、自分の左腕を差し込みます鷹の爪は私の左腕をむんずと掴み篭手で防ぎきれなかった片方の脚の爪が私の二の腕の肉に喰いこんでいきます
「ああああああっ!!腕が千切れるうっ!あ〜〜っ!!」強烈な痛みに、私は思わず悶え、悲鳴を上げてしまいますしかし、ある意味この状態こそ一隅の好機、逃す訳にはいきません「このおおっ!もう容赦しませんっ!凍りなさいっ!」私は残った右手を鷹の脚へと伸ばしますそして、瞬時に氷の呪詛を発動させ、気と共に近距離から発射しました「絶対零度の気弾を、身に染みて味わいなさい!そして、そこでしばらく凍ったままで反省しなさいっ!」
凍鷹の爪が相手に食い込んだ時、私は勝利を確信した。猛禽類の、しかも「超」大型の爪が刺さったのだ、軽傷のはずがない。あとは悶え苦しんでいるだろう彼女に、今一度刃を振り下ろして引導を渡す。それで決着のはず・・・!勝利への最後の一撃を見舞うべく降下を始めた時、相手の「気」と、それとは別の何かを感じ取った。(これは・・・冷気?)慌てて凍鷹の姿を見る。名に「凍」の字を関している様に、本来ならばその大鷹は氷属性の気を纏っている。しかし、急いで喚び出したせいもあり、普段纏っている冷気が今の凍鷹には無く、無属性と変わらない。
みるみるうちに凍り付いていく凍鷹。そして、それに合わせる様に私の左腕も凍り付いていく。術者反動。私は強力な召喚物を比較的簡単に操る。しかし、代償として召喚物が受けた傷も引き受けてしまう。慌てて凍鷹の召喚解除を行うが、降下中の大鷹の背で、しかも片腕が凍り付き始めている状況で無事に行えるわけがない。なんとか解除には成功したものの、焔鷹の背から振り落とされ地面に叩き付けられてしまう。そして、私は自分の意識がゆっくりと闇に沈んでいくのを感じていた。
腕の痛みに悶絶しながらも放った起死回生の冷気弾は大鷹に命中し、その大きな体が凍り始めますしかし、その体がすべて凍りつく前に大鷹の姿は私の前から消滅します「え・・・?消えた・・・?」一瞬、何が起きたかわからずにいた私の視線の先に鷹の背より振り落とされた彼女の姿が目に入りますそして、その半身が凍り付いているのを見て私は、あの鷹が彼女の召還術によるものだという事を理解しますそして、その術の代償で彼女の体の一部が凍ってしまった事も・・・彼女は、地面に伏したまままったく動く様子がありません「気絶してるのでしょうか・・・?それとも罠・・・?」
私は、まず自分の左腕の状況を確認します怪我自体はだいぶ酷いものでしたが指先もちゃんと動き、感触も伝わりますどうやら、最悪の事態は免れたようです「ふぅ・・・腕が無くならなくて良かったですね」私は、傷口に治療の気を当てながら、慎重に彼女へと近づきますそして、彼女の傍らに着くと、そっと表情を覗き込みます「どうやら、意識を失っているようですね・・・でも、大きな怪我とかは無さそうですねでは、とりあえず今のうちに腕の解凍だけでもしておきましょうか・・・」私は、彼女の傍らに跪くと、凍った左腕に右手を添えて気を流し込んで氷を溶かし始めるのでした・・・
自分が立ち上がるために、手を貸してくれた斧槍兵に撤退を手伝うように伝える。光弾を撃ってきた方向を確かめると、黒装束の男が走りこんでくる。「ギッ」半身になり、柄と、革を巻いた刀身部を掴み身構える。自分の身の丈ほどある剣は、構えれば短槍よりも長く、両手で扱うため細剣を凌駕する突きの早さがある。こちらの有利な点は獲物の長さ程度。彼方の足を止めて一度部隊をまとめるまでの時間を稼ぐのが仕事。切っ先を揺らめかせながら、相手の接近を待つ。
巨躯の大鬼を目指し駆ける揮下の者を配置に付かせての単独吶喊お世辞にも上策と言えぬが策の仕込みのためには仕方なしと腹を括る大鬼は半身になり、柄と革を巻いた刀身部を掴んだ構えその長大な得物の長さは目算で7尺と6…いや、7寸弱…彼の巨躯と筋力と長大な得物で繰り出されるその業は凄まじい速さと威力であろうが予想される殺傷範囲に入る寸前に剣を抜くもちろん、己のリーチでは彼の身に切っ先すら届く事はないが狙うは彼でなく、その得物彼の大剣を払い落とせれば最善それが適わずとも、攻撃の軌道を逸らしその隙に懐に潜り込んでくれようと充分な加速と力を込めた一閃を振るう
「う・・・ん・・・」まだ頭がしっかり動かない中、私はぼんやりと意識を取り戻した。(まだ首と胴は繋がっている様だな・・・)焔鷹から落ちた際に、体のあちこちを打ち付けられたのだろう、右肩、腰、左大腿が痛む。まぁ、その御陰で首があることが分かったのだが。(それにしても、左腕に感じる暖かさはなんだ?)左腕は、術者反動で凍り付いていたはず。本来ならば、氷の様な冷たさを感じているかさもなくば感覚が麻痺してなにも感じないはずだが。(そういえば、この感覚はどこかで・・・)そうだ、これはついさっきまで対峙していた相手の・・・!!
慌てて周囲を見渡し、相手の姿を探す。見れば、彼女は私の傍らで跪き、左腕に気を送っている。その様な彼女の姿に、私の体が無意識に動いた。「そなた、どういうつもりだ・・・?」右腕を動かして相手の首に刀の刃を当てる。「なぜ私の首をとらぬ?なぜ私を拘束していない!?それとも、私にはそうするだけの価値が無いとでも・・・?」私は静かな殺意を相手に送りつつ、彼女の言葉を待った。
氷を溶かしていた私の首に突如刀が当てられます思わず治療の手が止まる私に彼女は殺意を漂わせながら、強い口調で訴えます私は、1度深呼吸をして心を落ち着かせると彼女に私の想いを伝えます・・・「私にとっては、相手の命をとったり、拘束したりするよりも今真っ先にしなければいけない事をしただけですよこのままにして、指などが壊死でもしたら大変ですからねそれに、私は相手の命を奪う事など望んではいないんですたとえ綺麗事と言われようと、私は人の命を護る事の方が価値のある行為だと思ってますそれに、貴方はここで死ぬべき人では無いと思いますよ・・・」
私は、そう言うと首に刀を当てられたまま再び気を流し込んで氷を溶かし始めますそして、全部の氷が彼女の腕より無くなります「さあ、これでもう大丈夫ですよまだ多少動き辛い部分はあるかとは思いますが・・・さて、これからどうしますか?まだ戦いを続けますか?」私は、彼女の腕から手を離すと彼女を見つめながら、その答えを待つのでした・・・
相手の言葉を聞きつつ空を見上げると、焔鷹が「8の字旋回」をしている。本陣が陥落すると行われるこの旋回をしているということは、恐らく戦争は終わったのだろう。いつの間にか、腕の氷は無くなった様だ。感覚が若干鈍っているものの、左腕の自由は戻った。そして「まだ戦うか?」との問いに、刀を収めつつ答える。
「戦は終わった。私にはもう、戦う理由がない」溜息混じりにそう言うと、腰に付けた袋を相手に放る。「それに消毒薬、包帯、抗菌薬が入ってる。猛禽の爪に傷つけられたのだ、感染の恐れがある。傷を消毒して、抗菌薬を飲んでおいた方がいい。」そして思い出したように言葉を続ける。「『毒だ』と疑われるなら、私が飲んでみせるよ」
ふと、土を被せる音が止む顔を上げた拍子に何に気付いたか、息を呑む気配不気味な静けさに在りて、いやに生々しく鼓膜を震わせる私には変化を感じ取れないが、答えは景色にあるのだろう其処に音は関与しない唇から、怪訝そうな己の声が漏れた「…如何しました?」『狼煙が……里の、方から』一瞬の間に巡る思考足軽の歯軋りする様な苦渋の滲む其れに、薄々ながら理解が及ぶ――敗戦どうやら手間暇掛けて湾を迂回し、別ルートから攻め落とされたと思われる杖を肩に立てかけ、複雑な心境で溜息を吐く「これ等を使わずに済んで良かったのか、否か 放置後に話がこじれても困りますし…解除しておきますか」
相手が刀柄に手をかけるのが見える。次の瞬間、軽く切っ先を下げて、円を描くようにして、元の位置に戻す。そのまま柄を持つ右腕を左胸にひきつけるようにして、剣を繰り出す。ミシリ圧迫された胸に痛みが走る。痛みを相手に気が疲れないよう、細く息を吐き出す。「ぎー、長続きするのは良くない…か?」
帝国の大鬼と刃を交える速さで彼の攻撃を凌ぎはするがその膂力を前にして攻めあぐねていると大鬼の配下が撤退準備完了の報を告げる元より互いに時間稼ぎ火の手がいよいよ近くまで迫り、こちらの準備も整った自然と身を退く戦い方となりやがて、二人の間に充分な距離が開く統率力も持ち合わせた大鬼はこの機を逃さず、乱れかけた部隊をよく纏め撤退光を操り虚像を結ぶ我が幻術必要な光料を得られた今効果音担当な配下と共に援軍到来の幻を発動大鬼には通じぬかも知れないが敵兵の動揺を誘い、それが後続に伝われば上々こうして、鬼の隠れ里における帝国の威力偵察部隊と月光の防衛部隊の戦闘は幕を閉じた
どうやら彼女に、もう戦う意思は無いようですそして、彼女の言葉から戦の終了を知ります彼女は私に袋に入った医療品を私に放りました猛禽の爪からの黴菌の感染を防いだ方がいいとの事です毒だと心配なら毒見もすると言う彼女に、私は笑顔で答えます「そんな事をしなくても貴方を信じますよ♪貴方の心遣いに感謝してお言葉に甘えますね」私は、そう言うと傷口を消毒して包帯を巻き抗菌薬らしい薬を飲み込みます
「では、そろそろ私も帝国へ戻りたいと思いますね今回の戦いはとてもいい経験になりましたよ出来れば、今度は戦場では無い所でまたお手合わせ願いたいですねいろいろどうもありがとうございました」私は、そう言うと、彼女に軽く会釈をして握手をしようと、彼女に右手を差し出しました
(やれやれ、もう少し疑えばよいものを・・・)つい先程まで戦っていた相手を、こうも無条件に信じてしまうとは。私は医療品で傷の手当てをする彼女を見つつ、討ち取られても相手を捕縛できる様にこっそり張っていた封鎖結界を解除していた。明確な殺意を持っていた相手に治療を試み、しかもその相手に刃を当てられても治療を続けるあたり・・・。少し、純真すぎる。もし私が策を巡らしていたらどうするつもりだったのだろう。
そこまで思ったことで、自嘲の笑みを浮かべる。かく言う私も、先程まで戦っていた相手に医療品を渡し、彼女の性格を案じている。そして、こうして封鎖結界を解除している。(私もまだまだ甘い様だ・・・)そうこうしている内に、彼女から右手が差し出された。どうやら握手を求められているらしい。私は小さく微笑み、その手を握る。「私の名は澄華。そなたの名は?」
私の差し出した右手に彼女は私の信じたとおり、策などを弄する事も無く微笑みながらその手を握りますそして、澄華と名乗った彼女は、私の名前を聞きます「私の名前はフィーナです澄華さんよろしくお願いしますね」私は、そう答えると彼女の手を握り返し、そしてその手を離します「また何処かでお逢い出来る時を楽しみにしてますねそれでは、また・・・」私は、改めて軽くお辞儀をするとくるりと背を向けて、帝国に向かって歩き出しますその心の中は、何故だか晴れやかな気持ちになっていました・・・
「フィーナ」と名乗った彼女は、軽くお辞儀をすると来た道を戻り始めた。恐らく、本陣に戻るのだろう。(また何処かで・・・か)別れ際の彼女の言葉を反芻しつつ、彼女の後ろ姿を眺めている。(あぁ。また逢う事が出来る気がするよ)さて、自分も里に戻らねば。再び焔鷹に騎乗し、里へと針路を取る。(さて。里の大福屋は残っているかな・・・?生きて帰ることが出来たのだ、たらふく大福を食べてやる・・・。)こうして、私の戦いは幕を下ろした。