いつ終わる事となく続く戦いの連鎖。季節、時、人が変わろうとも変わることはない。己が覇道を突き進むため。己が未来を手に入れるため。再び戦の音は大陸を染めていく。
・他者の行動・行為を著しく制限、または指定する描写。・単騎で戦局に多大な影響を与える描写。・俗に言う無敵と思われる行為、行動や描写。・世界観が大幅に無視されている描写。・その他、不躾であったり、不快に思わせる行動や描写。上記の行為は禁止とさせて頂きます。相手が居るという事、忘れないように行動を。
http://www.geocities.jp/kichi_k/LG_map/top.html(大判/作成:クロゼット様)http://lgtisiki.blog89.fc2.com/blog-category-8.html(携帯用/作成:コルナ・コルチェット様)過去スレッドより転載。感謝を。
「状況はどうか!」「第一波は押し返しました!」「おい、衛生兵、こっちもきてくれー!」慌しく怒声が響き、兵士たちは体勢を立て直している。バードマンの先発隊と激しく衝突した帝国の一軍。お互いに消耗を繰り返しながら最初の衝突を終えた。傭兵騎馬隊の消耗は大した事はなかった。しかし、広いフィールドではないので機動力を生かしきれない。「難しいな・・・第二波、すぐに来ると思うか?」ソランが仲間の傭兵に声をかける。男は西の空を睨みながらゆっくりと頷いた。まだ風は荒れそうだ。
「…風が…」何度か経験しているとはいえ、帝国の冬の厳しさは言語を絶する。しかも、この度の相手は飛行部隊が主力。極寒の中、空の敵に備えているとまるで、大自然そのものを相手にしているような錯覚を受ける。「辛いのは、相手も同じはず…」弩(いしゆみ)を構え、寒空を見据える。「騎馬隊が交戦しています、弓で援護しましょう!」攻撃が分散しないよう、敵の動きに合わせて集中させる。「風向きを計算して、決して風に逆らわぬように」
先の天翼とドラバニア帝国率との激しい一戦の間に乗じてゾルバ砦付近への上陸を成功させた一人の女性と数体の仲間達。皆ボロキレを纏い顔を覆い隠している。まるで戦争難民のでこの戦争の被害者のようだ。勿論、所属国が天翼であるような証すら持たない。今回の彼らの作戦は、本隊の上陸作戦に伴う援護。所謂、ドラバニア軍内の空への攻撃を邪魔する事だ。『で、こんだけの人数でどうする気だ??』「…知りません。まずは夜間中に砦内で行動するとして、それまでは難民のフリして砦近くで待機です。」ユラユラと難民一行が砦へと向かう。
―――ザク「ハァッ…ッハ…ッげほっ」地面に剣を突き刺し、体重を預けて俯く。呼吸が苦しい。吸い込む空気は冷たすぎて、咳き込む。何とか、先発隊は押し返した。始まったばかりにしては…しんどかった。「……次…は…」来るのだろうか。顔を上げる。重い。風の唸りが強すぎて、気配がわからない。ふらりと立ち上がり、剣を地面から抜き、軽く振って汚れを落とす。遠い地平線を見つめた。風が髪をなぶる。――気を抜くなマーシェ。まだこれからだ。心の中で、自分に言い聞かせた。
『寒いな』「そうですね!寒いですね。」一人のドラバニア衛兵と会話するどこから見てもドラバニア兵の屍な女性。砦跡地に向かう途中で、遭遇したドラバニアの警護兵から頂戴してきた格好だ。…強奪とも言う。既にボロを着た仲間とは別れ、彼らは彼らで砦跡地の軍に保護されている。彼らもアンデットだが素人が見ても気がつかない。時間の問題だが、難民として待機させる事にさせた。先の戦闘の傷跡、部隊編成の状況を把握しつつ、ドラバニア兵として機を待つ事にした。「敵、来ませんね。」
「敵襲ーっ!第二波だ!」見張りの兵士の声が響き、一気に緊張感が高まる。空が動いた、という形容が正しいのか。西の空からバードマンの軍勢が現れた。「重装歩兵を前へ押し出せ!弓兵用意!」指揮官と思われる男の声が響き部隊が一斉に動き始める。「こちらも行くぞ。弓兵の射撃と同時に手槍を一斉に放つ。 その後に突撃だ。味方の射撃に当たるなよ!」ソランは傭兵隊に声をかける。荒々しい傭兵達の雄叫びが響く。間も無くして天に昇るかのように無数の矢が放たれた。「続けっ!アターック!」
地鳴りのような轟きが起こる!傭兵達の雄叫びが、人馬の地を蹴る音が地鳴りのように辺りに響く。重装歩兵に続き、騎馬隊が統制のとれた動きで突撃を仕掛ける。「おおおぉぉぉぉぉ!!!」後方からも雄叫びと共に弓を放ち、勢いを添える。寒空の下、両軍の激しい攻防が繰り広げられる。一進一退――(激戦には違いありませんが…)ふと、妙な違和感を感じる。敵が空から来るとは限らない。『お前は心配性に過ぎる、戦場で迷いは命取りになるだけだ』以前そんな事を言われたのを思い出し、眼前の敵に集中する。
「…噂をすれば影…やっと…来た。」彼女の呟くその先には、天翼の軍勢。空から砦に向かって攻撃を仕掛ける。それを迎え撃つ騎馬隊と重装歩兵。互いの熱い想いがぶつかり合う。(さて…まずは…弓兵は邪魔かもね)彼女の視線が、ボロを纏う難民達に向く。彼らは逃げまどうようなフリをしつつ弓兵に近づく…そして離れては他の兵に近づく。
最初に接触した弓兵の一人は、難民を邪魔扱いしつつ、空への攻撃を怠らなかったが…しばらくすると膝をガクッと落とし魂が抜けたかのように倒れる。…そのような光景があちこちでおこる。…しかし、倒れた時には既にボロを纏う難民の姿は別の場所におり、彼らが原因とは判りにくい。(そうそう。)Rayもついさっき魂を頂戴した兵士から弓を取ると、目につかぬように空へ攻撃をしかけるフリしつつ、ドラバニア騎馬隊へ矢を放つ。(バレるまで…)
ソルバ砦に向かう隊の後方で、私はバードマン達の後ろ姿を見ていた。彼らは人間を激しく憎んでいると聞く。敵地へ近付く程、怒りの感情が露になっていく。無理もない、相手は人の国、ドラバニア帝国。「新参、ぼんやりするなっ!間もなく敵部隊と接触するぞ!」「は、はい」目前には敵が待ち受けているソルバ砦。風に乗って上空へ昇り、旋回しながら幾つかの隊に分かれる。そして比較的体の大きな兵たちが、先頭を切って降下していく。バードマンにしては重い装甲と飛翔の邪魔になる竜の鱗の盾。それは彼ら自身が『盾』そのものだからだ。地上から放たれる無数の矢を彼らは跳ね返す。
「続けーーーーっ!!!」鴇の声と共に、バードマン達は次々と降下を始める。それぞれが矢のように地上の敵へと突き刺さっていく。私も自身の力を重力に乗せ、重装兵に渾身の一撃を叩き付けた。「重装兵と騎馬相手に、何処まで戦えるか…」先駆けは捨て駒かもしれないが、ここで朽ちるつもりはない。横から来た重装兵の剣を払い、懐に潜り込んで装甲のつなぎ目に深々と剣を突き刺す。重装兵はまだいい。問題は騎乗の敵。(槍が欲しいところだな、ティエンマ)「…ああ」奪ってしまうのが手っ取り早いが、さて、どうするか…
「こっちは敵の勢いを殺すことに集中しろ! あとは重装歩兵隊に任せろ!」槍を振るい混戦の中、味方の傭兵に声をかける。戦いは更なる混沌へと進んでいく。気になったのは味方の弓兵隊。心なしか援護が減ってきている。味方側へ流れてくる矢も出てきた。まさか伏兵か?自陣内では笑えんな・・・。そう思考を巡らせていると仲間の傭兵の声が響いた。
「自由騎士!重装歩兵の一角が押されている! アレは貴様のマークだぞ!」はっとしてそちらのほうへ視線を走らせるソラン。なるほど、たしかに私がマークする必要がある。自らの槍を一度収め、そのあたりから槍を一本拾う。そして愛馬に加速をつけさせたまま槍を投げた。狙うは重装歩兵に剣を突き刺したバードマンの戦士。
突き刺した剣から血が伝い、手を赤く染める。力を無くした重装兵が、グラリと傾き伸し掛かってくる。私は重装兵の襟首を片手で掴んで支え、もう一方の手に着いた血を服の裾で拭うと、兵の握っていた大降りの剣を奪い取った。「この剣の方が幾分マシだろう」先程の細身の剣に比べれば、打撃力もある。これで何とか馬から引きずり降ろしさえ出来れば…それでも馬上からの攻撃は脅威ではあるが。(ティエンマっ!)二翼の警告と共に、耳が風を切る音を拾う。私は咄嗟に音の方へ掴んでいた重装兵を向けた。
ガツンという衝撃が、楯にした重装兵を貫く。「…槍!」装甲を突き破り、重装兵の肩口から槍の先端が覗く。こんなものが直撃したらひとたまりもない。槍の飛んできた先に目をやると、騎馬が一騎こちらへ向かってくる。不味い。私は手に入れたばかりの剣を後ろに突き刺し、手を離した。「すまんな。あんたにはもう一仕事やって貰う」既に息のない兵に語りかけると、地面に倒して両手で槍の柄を握る。「…来いよ、騎兵」充分に引き付けてーー重装兵が先に付いたままの槍を、駆けてきた騎兵に叩き付ける。(ソラン殿、よろしくお願い致します/礼)
(む、おかしい…)弓の軌道が明らかに乱れる。あれだけ集中を、と言ったのに。「集中力を切らすな!乱れているぞ!!」部隊長が声を枯らして言う。「ちょっと様子を見てきます」少年はやや小声に、しかしはっきりとした口調で隊長にそう告げると足早に列を離れ、先ほどの矢の軌道の元をたどる。すると、こともあろうか味方に向けて弓を発射する、怪しげな襤褸の一団を見つける。「…!」どこを狙って、と声を出しかけて慌てて口を噤む。周りには、味方の兵が倒れているではないか。しかも、争った形跡はなくまるで眠らされているかのように。
(まるで、魂でも抜かれたような…)いやな予感というのは得てして的中するもの。先ほどの悪い想像が、どうやら当たってしまったらしい。(魔族…いや、不死者だろうか)何れにせよ、不用意に近づくのは危険極まりない。しかし放っておくと、このまま味方への射撃を続けであろう。懐から符を取り出すと、矢の先にそれを付ける。物陰に身を隠したまま、矢を相手の一団へ向けて放つ。少年が符に念を込めると、符は発火し放たれた矢は火矢となって襲い掛かる!
投げた槍を倒した敵兵で防ぐ。できるな。腕も立つし、迷いもない。これ以上の相手はおるまい。「勝負だ・・・風使いっ!」再び風を纏う自らの槍を手に愛馬を加速させる。まずはすれ違い様に一撃。間合いに入り、槍を振り下ろした瞬間、視界に重装歩兵が飛び込んできた。荒業だな。「ちぃっ、恨むなよ!」両者の槍がぶつかり合い激しい衝撃が走る。重装歩兵の亡骸は弾き飛ばされた。すぐさま反転し、今度は愛馬が跳躍。空中から飛び掛る勢いそのままに槍を突き出した。(ティエンマ殿、手合わせ感謝する!)
兵士の重量を乗せた槍の一撃は、相手の槍と交差する。「くぅ…っ!」腕が痺れる。激しい衝撃で槍から外れた重装兵は、どさりと地面に落ちる。落馬しないかと期待したのだが、この一撃で微動だにしないとは厄介な相手だ。顔を顰めて振り向くと、既に敵は反転しこちらへと向かってくる。私は槍を脇に挟み、柄を大地に突き刺し固定する。そして柄に添って滑り込むように仰向けに倒れ込んだ。
その瞬間、頭上を越える大きな影。先程まで私の体の在った場所に槍が差し込まれる。ーー危なかった。冷汗を拭う間もなく体を反転させ、槍を軸に飛び起きる。そのまま槍を引き抜くと、こちらへ馬頭を向けようとする騎手に、渾身の力で槍を投げ付けた。と同時に、先程地面に刺した剣を手に、自身も駆ける。槍の軌道より右、騎馬兵の利き手とは逆の方へ。槍に気を取られれば、一瞬私を見失うだろう。狙うは馬の四肢。将を射んとすればまず馬を射よ、だ。私は大振りの剣を、馬の足目掛けて思い切り振り抜いた。
かなりの影響は与えられただろうアンデット部隊によるゲリラ活動。両軍の激しいぶつかり合いの中で混乱に紛れジワジワと精気を取りドラバニア軍弓隊を混乱に落とし込む作戦…どちらかというと行き当たりバッタリな感じだが…成果としては良いものとなっただろう。(ここまでは上出来です。)ふとドラバニア側だろう方向から一筋の殺気。突然その殺気を持つ一筋の矢は無数の火矢と化し、アンデット達の群がる周囲に突き刺さる!?「!?」火矢をもろに浴びた屍達は、人とは思えぬ悲鳴を上げボロを地に落とし姿が消えていく。
(魔法の矢!?感ずかれた!?)辛うじて殺気を感じ、気による壁を作る事で火矢を浴びなかったRayが矢を放っただろう辺りを見るが…その正体の姿はその場では確認出来ない。…只…その方に感じる若く熱い気配。「…まさか…。」今消し去られた数体の屍達の姿に近くにいたドラバニア軍達も彼らが敵の伏兵と判断し、残らず倒すであろう。…いや、現実彼らの正体を知りドラバニア兵達はアンデットと思われる難民を次々に打ち倒す。
(あの一本の矢で状況を一変させるとは…やはり…。)髪を鎧兜に収めあくまでもドラバニア兵を装っているRayは、近くに倒れた兵の長剣を拾うと矢を放ったであろう方へと警戒しつつ歩みよる。(気で壁を作った姿を見られたなら…私が天翼の伏兵って事はバレたかも。)「…彼で無いと良いのですが…」
元より今ので決められるとは思っていなかった。一気にたたみ掛けようとするが、その出だしを潰される。戦士の投げた槍が肩の鎧をかすめ、鈍い金属音を響かせる。戦場慣れした良い動きだ。「・・・!」更にその隙を突いてたたみ掛けるのは今度は相手だ。一瞬視界から消えた。そして、狙いは愛馬ヒューイ。「・・・おおおぉっ!」即座に愛馬から飛び降り、戦士と愛馬の間に割ってはいる。槍を縦に構え剣を受け止める。激しい金属音と重い衝撃が伝わる。「つぅ・・・コイツは使い捨てとはいかなくてね。」愛馬は走り去り、ソランは再び槍を構え戦士と対峙した。
〜すこし前/ソルバ砦跡地後方弓部隊より〜せっせと弓矢を運びなら、小さな物体が動いている「せんぱ〜い、後方支援って地味ですよね」ため息をつきながら愚痴っている姿はどうみても野菜。『黙れ!後輩!我らのように戦力にならない者は こうして皆を助けるのが世の常だ!』激を飛ばしながらも、後輩の姿を見つつ少し目を細める『・・・お前、戦場に行きたいか』「!? 行きたいです! でも行けるんですか??!」野菜は驚いたように顔をあげる『お前なら行ける。 ただし、生きて帰れないかもしれないぞ それでもいいのか?』
「なんていうか、別にいいけど、こういう方法ってどうなの?」ぶちぶち言いながら、地中を懸命に掘って移動しているがこんな移動をし、かれこれ1週間以上経過する地上から振動が伝わる「そろそろかな〜?」ポコッと様子見に顔を出すとそこは先陣部隊のど真ん中であった血が地中を濡らしている槍や剣がぶつかり合う音あまりの激しさに思わず圧倒されるていると頭に何かがぶつかる振り向くと戦士が躓いて倒れたようだ「な・なるほど!こういう戦い方もあるのか!」こうして地味に、先陣の歩兵部隊を転ばせて地味に邪魔をする野菜が現れた
火矢が思いの外、功を奏したようだ。事態を察した周囲の兵達によって、侵入者が倒されていく。「む…」(気のせいか、一瞬“気”のようなものが…?)そうしている間にも、侵入者は一人、また一人と倒れていく。どうやら進入していたのは不死者っだったようだ。(不死者といえば…)ふと、友人の顔が頭に浮かぶ。が、倒されていく中にその人物は混じっていないようで少し安心する。「それにしても…」ここまで潜り込むような相手にしては、何ともあっけない。それに、先ほどの“気”…。
と、そこへ。後方から軍鼓が鳴り響く。(集合の合図…、隊長ですね)異変を感じた隊長が、隊に集合をかけたようだ。無論、少年も集合に応じないと軍令違反になるわけだが…。(ちょうどいい、少し様子を見てみましょう)まだ侵入者が残っているとすればここで何らかの不自然な動きを見せるはず。違反のお咎めは後で受けるとしよう。少年一人では持て余す相手かもしれないが…。「ここは、侵入者を特定しておくのが先決…」
鳴り響く軍鼓。ドラバニアの兵達が一旦引く。一旦散り散りになった隊を再度編成するのだろう。『お前も急げよ!』「はいっ!」先輩面の兵士と声を交わすが、ここは一緒に行動するわけにはいかない。この辺り一面の亡き骸達を再び(死者)蘇生させるチャンスだ。矢を放った者の正体が気にはなるが、ここで戦力を創り一気に押し込むのもチャンス。このまま残り、ドラバニア兵が去ってたのを確認すると、亡き骸の蘇生術の動作に入る。「さぁ、眠りから覚めよ!!そして我に仕えよ!!…。。」(…これだけの骸を贅沢に蘇生させるには…時間が要るな。)
馬の足を捕らえたと思った瞬間、騎手が馬上から飛び降り、寸前で剣を止めた。刃を弾かれ、私は後ろへと飛びず去る。あの状況でよくこんな反応が出来たものだ。先程からの戦い方を見ても、コイツはかなり腕が立つ。軽く驚きつつ、対峙した相手をしっかりと見据えた。「…そうか、道理で…」呟きが自然に漏れる。自由騎士──これから苦戦を強いられるのが容易に想像出来た。だが馬は遥か後ろへ走り去り、彼は大地に足を付けた。馬上から引きずり降ろすことだけは成功したわけだ。「これからが本戦だ。…そうだろう?」言うが早いか私は大地を蹴り、彼の頭上を飛び越え後ろに立つと、横一線に斬り付けた。
物陰から兵達の動きを注視する。皆、規律正しく移動を開始する中に一人、別の行動を取る人物がいた。(居ましたね…)さて、どうしたものか。安易に敵の前に姿を晒すのは危険ではなかろうか。一瞬躊躇したその時。『さぁ、眠りから覚めよ!!そして我に仕えよ!!…。。』倒れていた屍に、気のこもったような、不思議な感覚を受ける。(…これはまずい!)よくわからないが、倒れた屍たちが再び起き上がってくるような事態になると危険極まりない。
迷っている暇は無くなった。ともかく、相手の行動を封じなければならない。「天翼軍の侵入者、そこまでですよ!」腰の柳葉刀抜き、切っ先を相手に向けてそう叫ぶ。「あ、あれ…?」その時初めて相手の顔をはっきりと見た少年は内心驚きながら、努めて平静を装って言う。「Ray殿…ですね」まさかこんなところで、と思う反面これまでの経緯を考えるともっともな事だとも思う。「このまま引き下がって…という訳にはいきませんよね?」戦いたくない、という気持ちと戦ってみたい、という気持ちが半分づつ。何とも不思議な感情に支配される。
『天翼軍の侵入者、そこまでですよ!』その言葉に蘇生術が止まる。むしろその声を聞いて、と言うのが正しいのかもしれない。(あの矢は彼の放ったものか。)『このまま〜訳にはいきませんよね?』彼からは殺意でなく迷いを感じる。国の為とはいえ…、あぁ彼で無ければよかったのに、神は何故このような試練を私に…。神は他の選択肢を与えなかったのだろう。私は神を恨みます。私の心が乱れる。…彼も同じだろう。しかし、今戦場で引くわけにはいかない。それに…本気でかからないと…非常に危険だ。急ぎ動揺した気持ちを切り替える。
「楊君。…いや…楊、これも運命なのでしょう。」彼に語りながら、もう必要無いと思われる、身に着けた兜・皮鎧を脱ぐ。「あなたも早く気持ちを切り替えないと死にますよ。」身軽になったいつもの巫女服になると長剣を拾い直し、彼に向かって素早く上段から切り込む。(楊君、お手合わせ願います♪)
再び響く重い金属音。戦士の放った一撃をかろうじて防いだ。あれほど大きなアクションをこれほどのスピードで行うとは。その後も2度、3度お互いの刃は交わり、戦の音を奏でる。一際大きな音が響き、一旦二人の間合いは開く。「・・・そうだな。」頭上で槍を一回転させてから構え直す。一瞬の踏み込みから放つ突きは先ほどまでの重い一撃ではない。一撃一撃を素早くコンパクトにまとめた連打。その連打は牽制、締めに大振りの横薙ぎを放った。
「やれやれ…、ついに先陣部隊ですか…。」氷の魔法で相手の兵を跳ね除けながら、呟く…。つい数日前までは、後方で味方兵の治癒や支援を努めていたのだが…。ソルバ砦跡地の戦が激化したため、兵団に混じって前線へと送られたのだった。戦況は思っていたよりも激しい…。刃がぶつかり合う音…、魔力の交錯する感覚…。そして、野菜に躓かされる兵達…。…野菜?そこには戦場に不釣合いな野菜の方が、地中から顔を出して兵を翻弄している光景があった。「な、なんでしょう…、あれは…。」持っていた杖を握りなおし、恐る恐る野菜の方へと近づいていく。
一瞬、目の前の彼女は、いつのも優しい表情を見せた。が、次の瞬間それは一変する。『あなたも早く気持ちを切り替えないと死にますよ。』(ふふ、そうですね…)答えを返す間もなく信じられないような速さで剣撃が飛んできた。幸いすでに剣を構えていた所なので咄嗟の防御が辛うじて間に合い、上段の一撃を剣で受ける。「そう言えば、闘技場では一度も勝った事がなかったですね」急にそんな事を言う。「しかし、戦場では少々勝手が違いますよ!」受けた剣をそのまま、今度は相手の左脇腹めがけて払いの一撃を放つ。勇ましい言動とは裏腹に、頭ではその時別な事を思考していた。
『しかし、戦場では少々勝手が違いますよ!』彼の眼が変わる。彼はRayの剣を受けると流れるように脇腹目掛けて剣を払う。(うまい!?)とっさに下がった重心を右後ろに蹴り上りあげる。彼の剣先が脇スレスレをかすめる。同時に脳裏で出会った頃の彼を思い出す。あの頃とは、まったくキレも力も違う。「ふふっ…いつの間に…。」(今までの彼と思って掛かっていたら…いけませんね。ちょっと思い違いしてたかも。)
思わず自分の切られた裾を見ながら苦笑してしまう。「あなたの力はどこまで伸びるのでしょう?」再度、攻撃を試みる。Rayはさっきと同じく真っ直ぐ彼に向う。先ほどとは違い素早く連続攻撃による接近戦に持ち込む構えで。(彼はもっともっとこの世界で活躍出来る人間だ。…先の彼を見たい。)鬼の表情の裏で、戦場では場違いな気持ちが…。
返しの払いも服を掠めた程度だった。相手の方が、素早さは一枚も二枚も上手だ。(やはり、まともに戦っては敵いませんね…)ではどうするか。答えは一つ、まともに戦わないに尽きる。相手からすれば、ここは敵地の真っ只中。戦いが長引けば長引くほど、不利になるのは彼女の方。とはいえ、時間を稼ぐのさえ容易な相手ではない。さあ、次の攻撃が来る…!相手の動きを見てからでは反応が間に合わない。「破ッ!!」こちらも踏み込んで渾身の一撃を合わせにかかる。(次の攻撃を全力でしのぐ…!)とその時、背後が急に騒がしくなる。帝国軍から、高らかと勝ち鬨があがる。
彼と斬り合う為に、間合いを寄せるRay。しかし、彼女の間合いを嫌ってか、彼からの大きな踏み込みによる一撃が彼女を襲う。そしてまた距離が置かれる。…接近戦は嫌なようだ。しかし離れていては彼の呪符が…。それはこちらが困る。(早くしないと…彼の仲間に囲まれてしまうな。)突然、彼の背後から大きな勝鬨があがる。ドラバニア帝国軍からのものだ。
(…負けたか)同時に彼との勝負に対して安堵と残念な矛盾した気持ちになる。「…あぁ〜、天翼は負けたみたいだね。戦う理由が無くなってしまったよ。…私の処遇も君に任せる。」長剣を捨て、彼に笑顔を見せる。「良い剣さばきを見せてもらったよ。もっと剣を交じ合わせたかったね。」
最初から当たるとは思っていない。渾身の剣撃から、さらに相手の次の攻撃に備える。が、その時。彼女の表情が急に和らぐ。いつもの笑顔で言う。『良い剣さばきを見せてもらったよ。もっと剣を交じ合わせたかったね。』(ああ、終わった…)そう思うと肩の力が抜ける。「もっと…勘弁してください、瞬きもできないんですから…」緊張感と寒さで、思いのほか体力が奪われている。しかし、不思議とそれは心地よい感覚だった。「一瞬でしたが、剣を交えられて嬉しかったですよ」笑顔でそう言う。何か、この大陸で生きてきた証のようなものを感じる事ができた。(ありがとう…)
私の後ろからの攻撃を、彼は難なく受け止めた。やはりそう簡単にやられてはくれないか。そのまま切り込んでも、ことごとく刃は返された。リーチの長い槍相手では、懐に入った方が良いというのに、またもや間合いが離される。そして相手は間髪入れず突きを放ってきた。私は剣を正面に構え、ただ受け止めるしか出来ない。とその時、槍は軌道を変え、横から身体を薙ごうとする。私は慌てて側面を剣でガードしたが、体勢が悪かった。
槍の勢いのままに、私は横に飛ばされた。普通なら地面に倒れただろうが、二翼が上手く身体を起こす。(ティエンマっ、敵から目を逸らすな!)「つ…承知っ!」衝撃で少し体が軋んだ。何やら周りが騒がしいが、今、目を離してはいけない。次の攻撃がすぐにくる筈だ。私は剣を構え直し、騎士のいる方をキッと睨んだ。
攻め切れなかった・・・手強い。まわりの戦の音は意識の外。今はこの男の集中しなければ、やられる。しかし、周りの音の変化が著しくなってきた。「自由騎士、これからは掃討戦みたいだ!残業代は出ないぞ!」仲間の傭兵がすれ違い様に声を掛けて撤退していく。どうやらこの戦、終局が見えたようだ。戦士を見据えたまま愛馬の名を叫ぶソラン。後方へ飛び退くと丁度その場に愛馬が現れる。「途中で悪いがこれまでだ。また会おう風使い。 できれば次は、戦場以外の場所でな。」
そして、戦いの記憶は大陸に刻まれていく。◎記録保管所http://lgcabinet.web.fc2.com/(作成:シーファ殿)ご協力感謝を。