待合室を抜けた場所に設置された歓談席は、ダンスの始まりを背景に熱気が最高潮に達していたホール手前のテーブル群やホールの壁は、この日の為に仕立てられた礼服で着飾った花々が行う談笑によって華やかに、麗しく彩られ、皆を楽しませているようだその入り口はといえば、新たに訪れる麗人たちをウェイターが出迎えている「星降る夜の夜会へようこそお出で下さいました此方はダンスの閲覧とご歓談をお楽しみ頂く場所となりますいよいよダンスが開始です。パートナーを得て踊られるもよし、ご歓談をお楽しみ下さっても宜しいかとテーブルには軽食やフルーツ。飲み物は御希望の品を給仕にお伝え下さいそれでは、良い夜会を」
ウェイターが恭しく腰を折る。「今宵の夜会をお楽しみ頂く為、注意事項がございます夜会をより楽しんで頂く為のコツですので、お心に留めて置いて頂ければ、より一層夜会を楽しめるかと思います・関わった人の反応が遅くとも待てる余裕を・他者の行動や行為を著しく制限しない・他者を勝手に動かす描写は控える・不快に思わせる描写はしない以上4点を御守り頂ければ、今宵の夜会を十二分に御楽しみ頂けるかとそれから、お時間のある時にこのカードにお目通し下さい込み合った会場の見通しを良くする為の秘訣が書いてございますそれでは、一夜の夢が良きものであられますよう」
手渡されたカードを見れば、下記の記載【会場を見易くする為の秘訣】●レスタイトルに一工夫状態と目的と名前を記載して会場を見やすくしよう●状態【フリー】:フリーの方(ペア探しは待合室にてどうぞ)【ペア】:ペアの方●目的【歓談・○○(相手名)】:歓談をする際に。相手が決まっている場合は相手名を【ダンス】:※ダンス会場内専用【移動】:ダンス会場へのスレッド移動やホール内の移動(テラスや他テーブル等)の際に●名前レスの最後にご自身の名前や表す記号等を●レスタイトル1例【フリー】【歓談】:●●(お名前)以上、ご協力宜しくお願い致します …ホールスタッフ
●会場案内外交の間【待合室】…ペア相手を探す場所。質問もこちらへ【歓談室】…ダンス開始中も歓談する場所。歓談だけの参加も歓迎です【ダンスホール】…ダンス開催中です、踊りたいペアの方はこちらへ移動を絵師の間【仕立て部屋】…締切済です●日程【外間】歓談室設置 …7/26〜【絵師間】仕立て部屋関連 …7/26〜8/23 ※終了いたしました↓【外間】ダンスホール設置、ダンス曲開始 …8/24〜9/13※1週間延期いたしました、どうぞごゆるりとお楽しみ下さい9/5(金)9/6(土)9/7(日)21:00〜途中歓談となりますが、引き続きお茶会を予定していますよろしければご参加下さい
歩を進めながらの呟きに首を捻る。深い緑。植物の瑞々しさを象徴する色、だろうか。色彩を知らぬ身の私。感覚のズレは仕方ないが、悪い気は当然しないから聞いてみたくなった。「貴女にとっての緑色のイメージを、御訊きしても宜しくて? 初めてよ…嬉しいですわ、是非詳しく聞かせて下さいませ」曲がり角を抜けると、そろそろ仕立て部屋に到着する筈。探った爪先が扉を軽く蹴る。歩き回って覚え込んでいた御蔭で、ぶつかる醜態を晒さずに済んでよかった。扉を開けると、脇に退いて入室を促す。「ふふ、到着ですわ。さあどうぞ御選び下さいませ。 貴女はそう、私の感覚ですと…ささやかながら挑む色、でしょうか」
差し伸べた手に小さな手の平が乗せられる。元気いっぱいで大丈夫だと言ったその笑顔は自分でなくともつられてしまうほどの、満面の笑み。最初は緊張しているように見えたのもつかの間、それが解れてきたようにも感じる。青年が目を細めて身長差もいいスパイスだと言ってくれたが、親子に見えていたらどうしようと内心思ってしまったのは内緒だ。青年の表情からして悪い意味でないことは見て取れたが。青年に微笑む姫に習い、自分も一つ頷いて笑みを。「では踊ってくるよ、よい夜を さぁ行こう、お姫様」
何か。笑われた?そんなに分かりやすかっただろうか。…不自然ではあるかもしれない。左手の薬指にあっさりと通ったその指輪を見て。呆然としていた気がする。一瞬の出来事かもしれないが、長い時間に思える程。これは心臓に良くない。血が上っていくのが自分でも分かる。「…ありがとう…っ」ダンスホールへ人が集まっているのが、幸か不幸か。恐らく絶対。恥ずかしがっているのを楽しんでいるのだろうかと思うと。真剣になんとかしたい気持ちになる。「…さすがに、恥ずかしさに倒れそうなんですけど」楽しんでいるなら何とかしてもらおうか。
ダンスホールへ入っていく二人を見送って、それからテラスに出ようと思った。中央のテーブルから飲み物のグラスを一つ取り、夜風に当たりながら一休みしようかと。『こんばんは。今夜の月は一段と綺麗よ』背後から、涼やかな声を掛けられる。振り向くと、一人の女性。「─やあ、こんばんは。今から月を見ようと思って」グラスを軽く掲げ、挨拶をする。「もしお一人なら…。テラスで一杯、ご一緒いただけませんか」
仕事をしなければ、という想いと目の前に広がる光景を眺めていたいという想いが自分の中で戦っているのがよく分かる。今は後者が勝っているわけで。ホールには戸惑い顔も幸せそうな顔もたくさんで、眺めている人々の表情もみな柔らかく暖かい。皆それぞれの思いを旨に、楽しんでもらえているようでなによりだ。ホールの中央へ人が集まったせいか、空いてるように見えるし…あたりを見回して考えた事は一つ。壁に背を着け、眺めるのはホールの中央。「ほんの少しだけ…」こんなところで油を売ってたら怒られそうだな、と思い見つかった時の言い訳を頭の中で考えながら…今は素敵な音楽と踊り、そしてこの雰囲気に浸って。
「えっ」いきなり友達の事を言われてドキッとする。見上げる視線と相まって、心を見抜かれた気がした。何で探してるのが判ったんだろ…俺顔に出すぎなのかな。確かに友達を探しにいきたいけれど、自分が誘った相手をおいて自分の用事を済ませるのは気が引ける。「えーと…ここからなら会場が良く見えるから、友達の姿が見えたら声を掛けるよ!」言って、手近な椅子を引き寄せて座る。視線が低くなると、会場の景色がまた少し違って見えた。隣にある顔を見ようとして、ふと空に浮かぶ月が目に入る。「うわぁ、綺麗な月!白く光る空のシャンデリアだ」いっそこの月光の下でダンスパーティをしてもいいのに、と思った。
『腐れ縁』と言うブレイド殿の言葉を受け、「…縁はあるが腐るつもりは無いぞ。」ぽそりと呟く。…と、耳打ちした言葉に蛍殿の様子が一変していた。考え込み、うっとりしたかと思うと、頬を染めている。(…おや、此は)此方も頬が緩む。幽霊…と言うが、恐ろしい様子など微塵もなく、この少女は本当に愛らしい。「…誘ってくれたお方もいたのですけど、ね。」と、呟いた言葉は、エルフ種の聡い耳にしっかりと入り込んでいた。少女の頭にぽんぽん、と手を乗せ、穏やかに微笑む。「次があったら…お互い、踊りたいものよな。」声を掛けて歩を前へと進める。
掛けた声に返ってくる笑顔は、着飾ってもいつもと同じで嬉しい。訝しげに殿方を見ていると…聞き覚えのある声が返って来た。何とも驚きの変貌…いや、普段が変貌か…などと考える。『いつもの着物姿でないと随分と印象が変わる。女性らしい服も似合うな』「着物」を「骨兜」、「女性」を「殿方」に変え、お主こそ…と返そうとしたが、服装の所為か兜の無い顔の所為か、いつもより柔らかな物腰に、礼を欠くか―と口を噤んだ。「何やってんの!」と吹き出すシーファ殿に、「いや、済まん。…しかし二人して驚かせてくれるのぅ。」笑顔で返し、耳打ちされた言葉に今度は此方が吹き出した。
そろそろ…と、踊りの場へと向かう二人に『楽しんで来てくれ、後で見に行く。』と声を掛け、送り出す。手と笑顔を重ねて歩み行く二人の後ろ姿に、微笑み掛けた。(…さて)当初の目的の飲み物を探す。係の者が運んでいるが…忙しそうな同僚に頼むのは気が引ける。厨房へ向かい、色味の薄い、果実の香りのする洋酒をボトルごと盆に乗せる。「此と…」水、水…と呟きながら、氷水の入った大きな水差しとグラスを三つ盆に乗せ、神妙な顔で歩を進める。慣れぬグラス。いつ倒れてもおかしくない。蛍殿も踊りを見に行きたいだろう。急がねば…と焦るほど盆が揺れる。泣きそうな顔で、千里にも感じる道を歩いた。
あら、予想は外れたみたいこの方に待ち人はいらっしゃらなかったようね思いも寄らなかった誘いの言葉に、思わず目を丸くしてしまった気を取り直して、にっこり微笑み、軽く膝を曲げて挨拶する「お邪魔でなければ。喜んでご一緒させていただきたいわ」一人で過ごすのも悪くはないと思うでも、今日のような晩には、誰かと一緒に過ごすほうが、よっぽどいい鮮やかな橙色の髪の青年が手にしたグラスを見て「美味しそうね、あたし同じものをいただこうかしら」えぇと、飲み物のあるテーブルは…と、あたりを見わたした
月光に照らされた外は丁度いい明るさだった。中は華やかなシャンデリアが数多くあり、真昼の如き明るさで…目が弱い自分にはかなり眩しい。それもあってココに来たのだが。「…料理取りに行くついでに探してくるとかしてもいーんだぜ?」遠慮しているのでは。まず思い当たったのはそれだった。義理堅いコイツの事だ、置いてはいけない…と考えたのではないだろうか。正直、嬉しかった。…というのは秘密にしておこう。かといって自分の我儘だけを押し通す気もない。そろそろ腹も減る頃合だろうし。「一人で中戻るのが嫌だったら一緒に行くから、遠慮しねェで言えよ」その後またココに戻ってくればいいワケだし。
「ううん、どういたしまして。私もはめることができて嬉しいですよ」指輪をはめられたリズが、はっきりと動揺しているのがわかる。まあ、ここで欠片も動揺されなかったら、それはそれで寂しいから、予想通りではないにせよ、期待通り、というところだろうか。「恥ずかしさに倒れそう?それなら私に寄りかかっていればいいですよ。そこに座った状態でね」会場の壁面に椅子が置いてあるのを指差してから、リズをそこに連れて行く。立ちっぱなしでは疲れる人の為のものだろうか。二つその椅子を並べて、まず自分で座り、その後、隣にリズを座らせる。「ね、立っているよりは、こうしていた方がいいでしょう」
「べ…っ」別に本当に倒れそうなわけじゃない。…けれど、まあいいか。人目が少し気になったけれど、色々と口実が出来て良かった。隣に座った彼に遠慮なく寄りかかって。「ねえ、アンスは本当に踊らなくて良かったの?」自分は踊れないから、食べることが主目的でも。彼は踊れるらしい…。出来る人からすれば、踊るのも楽しみなのでは。…と常に思うのは事実で。かと言って、相手を探して踊ってきますと言われても困るけれど。だからそれは、問い掛けでも何でもなく、ただの呟きのような。「少し休んだらまた食べに行く?」今度はフルーツが食べたい、とリクエスト。
休憩を終えて再び自分の仕事へ戻る。歓談席に戻れば先ほどよりは人が少なく、流れてくる曲にそうか、と。「始まったんだな・・・」邪魔にならぬ様に壁際に立つ。声を掛けられる事も無かったので、ホールの中央に視線をやればパートナーの方とダンスを楽しむ姿が何組も見られ華々しい。気が付けば暫く優雅で煌びやかなホールに見入っていた。
ギクリ、ギクリ!確かに緊張が薄れたお陰で、端のテーブルに見える料理がやたら目に付くようになってる。でもお腹が減ったから疲れたパートナーを会場に戻らせるなんて、友達を探しにいく以上に申し訳ないじゃないか。「や、ヤダな。さっきも言ったように緊張でお腹は減ってな」くぅうううう…その時、間の抜けた腹の音が言葉を遮った。会場でなら人の声で誤魔化せたかもしれないが、このテラスではやたら大きな音に聞こえた。うわーん、なんて意思疎通の取れてない我が身体!「…………えーと。聞こえた?」もしかしたらの微かな期待を込めて、一応聞いてみる。
「同じもので良ければ取って参りますよ」中央のテーブルから林檎の発泡酒のグラスを取り、戻って彼女に手渡す。テラスに出れば、なるほど見事な照る月。おや、先客がいらっしゃるようだから、お邪魔にならない位置に…「…では、乾杯」静かにグラスを合わせ、一口含む。「申し遅れた、私は蒼井といいます」胸に手をあて、礼をする。「もしもワルツのお相手を探されていたら、申し訳ない…私は踊れないんだ」
…あ、肩が引き攣った。ある意味解り易い反応を返すパートナーにばれないよう笑みを浮かべる。しかしトドメとばかりに聞こえた腹の音によって我慢は一瞬で限界に達し、小さく吹き出してしまった。「聞こえた。そりゃーもうバッチリとな」これでもう誤魔化す事は出来ない。あと一押し。「な、俺も少し腹減ったンだケド…料理取ってきてサ、ここで食わねェか?」嘘だ。元々空腹感にはあまり縁が無い。それでも今ならいつもより食べられそうな気がする。席を立つと、テラスに姿を見せたペアに軽く会釈。そのまま会場へ通じる入り口の前に立ち、パートナーを手招きした。
テラスにはすでに先客の2人がいて、邪魔をしないように軽く会釈して通り過ぎた「乾杯」カチン、とグラスを合わせる一口含むと、ふわりと甘酸っぱい林檎の香り橙色の髪の青年は、蒼井、と名乗った「あたしはフィンダファー。よろしくね、蒼井さん」蒼井さんは踊れないのだ、と言う「ご心配なく。ただ、この舞踏会の雰囲気に触れてみたくて…それで来てみただけなの。あたしも踊るつもりはないから」言いながら夜空を見上げるあぁ、ほんとうに綺麗な月の宵だこと「蒼井さんの髪の色は闇の中でとても映えるのね。すごく綺麗だわ」男性に対する褒め言葉としては少しどうかとも思ったけれど、思ったままを口にした
「うん?うーん、踊りそれ自体が好きなわけじゃないですから、踊らなくて良かったんですよ。踊らない代わり、というわけじゃありませんが、こうして指輪をリズにはめることもできましたしね」そう思う。踊れたら嬉しいくらいのことで、今踊れなくたっていい。いつか、踊る機会もあるだろう。ただ、指輪を、指に通すことは、今日という場でないとできなかったのではないかと思う。とは言え、リズとしても、そんなことを言うからには、踊ってあげられなくて悪いな、というようなことは考えているに違いない。「そうですね、フルーツでデザートといきましょうか」その後にでも、踊らないかと声をかけてみようか。
人が少しずつ減りダンスホールに行く中、男は流れに従う様にダンスホールに近付く蛍に軽く片手をあげ見送った。 人混みを苦手とする男からすれば壁際は安住の地と言えた。「…………くぁ〜」 ようやく慣れて来たのか欠伸を噛み殺した男ははっと何かを思い出したかの様に背を離し、ツカツカと歩き出した。(よく考えりゃああいつが三人分のモンを運べねぇわな) 彼の知る彼女のイメージはそうであり、案の定視線の先の帰月蓮はヨロヨロと不安定さを出しながら歩いていた。 彼女の横から現れた男はひょいと水さしや飲み物が乗った盆を受け取った。「慣れねぇ服だからやりにくいか」軽口を叩き横に並んだ。
(…はっ急に我に帰る。さて、何をしていたものか、どうにも記憶に無い。改めて考えてみると、その間の事が恐ろしくてならない。一体どれくらいの間…ほんの少しのような、かなり長い時間のような。周りの声に混ざって、円舞曲が聞こえてくる。ああ、しまった…。すでに踊りは始まっているようだ。しかし傍らの彼女は…。「どうです、せっかくの機会ですので踊りましょうか? 途中参加となってしまいますが、その辺りはまあ、何とかなるでしょう」ともあれ声をかけてみる。しかし不覚と言うしかない。やはり若年の身で酒など飲むべきでなかった、などと今になって思ってみたところで始まらない。
踊りが好きと言うわけではない…と言うことは、やはり嗜みとして覚えたのだろうか。彼なら貴婦人をエスコートした方が似合うだろうに。「じゃあ、食べ歩き再開ですよ」手を取って。碌に休む間も与えず引く。ダンスを見るのも一興。けれど、どうにも、ただ見ているだけと言うのは性に合わない。そんな上品な雰囲気に溶け込めるほど、育ちも良くは無いし。「フルーツなら変わったものとかあるでしょうか。普通に食べられるものよりちょっと珍しいものの方がいいですよね」どんなものが並んでいるとか。それらの味であるとか。そんなことに思考を巡らせているほうが楽しい。
「緑の、イメージ」質問の意味を自身に理解させるように、繰り返す。コツ、コツ、コツ、と三歩。「――深い」呟くように、まず第一印象。「そして、神秘的」次いで、第二印象。イメージを膨らます。緑――森。翡翠。エメラルド。「静か。落ち着き。でも冷たくは無く――優しい」うん、と頷き。微笑みかける。「そんな、色。貴女に似つかわしいと、ボクは思います」
気が付いたら、もう衣裳部屋の前。『貴女はそう、私の感覚ですと…ささやかながら挑む色、でしょうか』彼女の、ボクの印象。何だか。それはとても、美しい色のような気がする。「ありがとう。素敵なドレスが選べそうな気がする」嬉しかった。「どうか貴女も、良い夜を」衣裳部屋のドア。そっと、押し開いた。
9/5(金)9/6(土)9/7(日)21:00〜お茶会を予定しております会場はこちらhttp://chat3.whocares.jp/chat/cr.jsp?rn=yutecha混雑が予想されますので参加者がもし20人を越え始めた辺りからこちらもご利用下さいませ大変申し訳ありませんが、携帯からの参加は文字化けすることがあるようですのでご了承をhttp://meteor.jf.land.to/TEACHAT/chat.cgi
お知り合いとのお話が終わったのか、先に進んでいた幽霊に追いついた蓮様は幽霊の頭をぽんぽんと手をのせた。「次があったら…お互い、踊りたいものよな。」そのまま進んで行く後姿に、幽霊は無言で頷いた。先に、ダンスを近くで見れるような場所を探しておこう、そう思った幽霊は周りをきょろきょろと見回し、丁度良さそうな場所を発見したので移動した。すると、そこには目覚めの悪そうな少年がいた。…お酒に酔ってしまってたのかしら。そう思うと、思わず声をかけてしまう。「…とても頭が重そうですね…大丈夫でしょうか?…お水、頂いてきましょうか…?」
幽霊が心配そうに少年の顔を覗き込むと…何か幽霊は疑問に思った。この顔立ちの少年は知っている。「もしかして…楊様?…正装のお姿で…気付きませんでしたっ」いつもは民族衣装の少年は今は髪をおろし正装で、一見じゃ気付けないかもしれない。…でも踊ると聞いていたのになぜここにっ…と思ったが頭が重そうな楊様と傍らのペアの方らしき方を見て、あぁ、っと納得した幽霊。「…楊様らしくない失敗ですね、ふふっ」そういうと蓮様の方を見るとブレード様が盆を受け取っていた。…ここからだと気付くかな?そう思いつつ、手を振ってみた。
ああ、舞踏の足さばきも出来ない朴念仁だと思われただろうか…。実際そんなようなものだから構わない。心の中で苦笑する。「舞踏会の雰囲気か…。ふふ、楽しめていますか?」しばし月を一緒に眺めて、グラスに口を付ける。「…髪の色…?」すごく綺麗、と言われて少し戸惑う。「自ら望んだものではないけれど…。そう言われて、悪い気はしない。ありがとう」微かに照れ笑いを含め、応える。そうして改めて彼女の顔を見つめた。印象的な緑の瞳。「そう言う貴女もお美しい、と思う…」…我ながら、女性を褒める言葉もろくに知らない…地味だが清楚なその様子が、不思議と静かな美しさを湛えていると思った。
「珍しいフルーツって、味も変わってたりしますよね。香りがすごかったり。こういう場ですから、食べるのに抵抗のあるようなのはないでしょうけれど」だから、見てまわるの自体はとても楽しい。安心して見て回れる、という感じだろうか。見て周りながら、くつかは実際に口にしてみる。「あ、これおいしいですよ。見た目は白くて地味ですけど…何の実かはわからないですね」自分が食べたものなら、リズも安心して食べられるだろう。リズの皿に取ってあげる。「そういえば、サボテンの実って、甘くておいしいらしいですね。これもそういう、名前はよく知っているけど、実は食べたことのない…そんな植物だったりして」
舞踏会も終盤にさしかかり独りの男が入ってきた男は壁際に立ちボケーっとダンスに見入っている銀髪のスタッフに静かに近寄り背中に何か突きつけ声をかける「ハローおニィさん、この舞踏会、ぶち壊したくなければそのまま静かに手を上げろ…」相手にだけ聞こえる程度に言うどうやら手に持っている物は拳銃の様だしかし誤解されるのもアレなので「なんつって♪ビビッたあ?」とすぐさま目の前に出、銃型のライターをカチャっと付けてみせる目の前に現れたのは既に酔い気味の悪魔いつもの小汚い格好とは違いそれなりに見える、が、多少首元がだらしなくなっている(ココに来て新キャラw)
慣れぬ高い靴での歩みに合わせ、不安げにグラスが揺れる。その先に、先程の場所が見えてきた。しかし、残っていたはずのブレイド殿の姿が見えない。(場所を間違えたか―?)ぎりぎりの状態で歩いていた足が更に重くなったが、もう一度、足を踏み出す。……が。 ごりゅ焦りのある一歩だったのだろう。高い踵がバランスを崩し、自身全体のバランスをも崩す。「…!!」絶対にまずい、と思ったその時……盆が手から浮いた。空いた手でバランスを取り直し、何とか踏み直る。…ほぅ、と息をつき振り仰ぐと、「慣れねぇ服だからやりにくいか」と、すまして軽口を叩く男が居た。
「………やはり、普段の草履とは違うな。」物凄く無様な姿を見られ、恥ずかしい事この上ない。それを隠すように強がってみるが、それもまた恥ずかしい。俯いたまま、そっと男の服の裾をつかみ、「…有り難う。」と呟いた。歩きながら、視線を感じて振り向くと、向こうで蛍殿が手を振っている。どうやら踊りを見るのに良い場所を見つけてくれた様だ。微笑んで手を振り返し、隣の男の服を少し引っ張る。「場所を取ってくれたようだ。あちらへ行こう。」彼は人混みが苦手かも知れない…と思ったが、服の裾を掴んだ手が、なぜか離れなかった。
ぼんやりとダンスを眺めていると背後に気配、背中には何か押し当てられた感覚、男の怪しげな言葉に普通なら手を上げただろうが、聞き間違う事の無いその声に思わず脱力してしまう。「なんつって♪ビビッたあ?」ヘラリと笑い姿を見せた悪魔は既にご機嫌な様子で銃型ライターを付けて満足気だ。(・・・煙草、吸うんだな)と、内心思いつつデコに一発、と考えたがここは舞踏会会場、しかもダンスの真っ最中、場の雰囲気を考えて無難に対応しておこう。「オレをビビらせたいなら、その声をまずどうにかするんだな」単調に答えれば、酔ってるだろうとデコを指先で突いてやった。
ううう、やっぱ聞かれてた。情けないやら恥ずかしいやらで、がっくりと肩を落とす。どう言い訳しようかと考えていると、その答えが出るより早く幽祢さんが立ち上がった。「う、うん。食べる!」これ以上意地を張る理由は無い、素直にこの優しさに甘えよう。テラスに出てきた2人に頭を下げて擦れ違い、手招きに吸い寄せられるように会場へ。幽祢さんの隣まで行くとダンスの音楽が耳にはっきり届いく。「じゃ、あのテーブルに行こう」再びエスコート開始。幽祢さんとテーブル、そして会場へ順に目をやりながら、料理に近付く。与えてもらった折角の機会だ。この会場に居る筈の友達、ゼレナさんを探す事も忘れずに。
この白くて地味な、これがサボテン…かも?「あの、砂漠で育つトゲトゲしたサボテンですか?」これがサボテンではないにしても、すでにサボテン効果。刷り込みは完了してしまっている。…大丈夫。実際彼が食べているのだから。恐る恐る一口。「あ、美味しい…」拍子抜けした。意気込みすぎていたのもあるが、思った以上に美味しい。「アンス、取って」空いた皿を出して。自分で取った方が早いかもしれないけれど。
美しい、と言われれば、それがたとえ社交辞令上のお世辞だったとしても、やはり嬉しい。不器用そうにそう言ってくれた蒼井さんが、何だかとても可愛らしくて(これも男性に対してはどうかと思うのだけれど)、思わず笑みを浮かべた。「ありがとう。お褒めいただいて光栄だわ。でも、さすがにあの月の美しさには負けるわね」軽くグラスを掲げて、月に乾杯してみせる。ホールから、かすかに音楽が聴こえてくる。あの場所には、今晩の月ですら霞んでしまうような、美しい夢物語が繰り広げられているはず。「このグラスを空けたら、ホールでダンスを見てみたいと思うのだけれど、どうします?」
「痛って!デコはヤメロっつってんべタコ(狽チ)、ぁあ?酔って?ないない♪♪」そんな事より全くビビられなかった事にオカシィと声を変えて「あーあー」と軽く試す「つかさぁ、コレここ来る途中拾ったんけどソー要らんから捨てといてよ、」銃型のライターぽいと投げ渡し、水鉄砲だったらなぁ…なんてぼやく。<吸わない横で壁に寄りかかりホールをグラス越しに見る「しかしまぁ、思ってたより煌びやかやね、眩しくて目眩がしそうサ」目の弱い悪魔は細めのサングラスをかけワイン飲み干す「極彩色でひらひらくるくる・・・蘭鋳みてぇと、思わね?」なんて良くわからない事いいつつ相手に空のグラス突きつけ次赤がいいと
連れ立って会場に戻ればダンスは既に始まっていた。今なら料理のテーブルの周りもさほど混雑していなそうだ。…が、どうしてもその隣にあるアルコールが満たされたグラスに目が行くのは己でもどうしようもない。これじゃまるでアル中だ。「ちゃんと食っとけよ。これ逃すと暫く美味い料理にはありつけねェぞ?」言いつつ自分も料理を品定めする。全く食わないと心配を掛けるつー事くらいは既に充分すぎるほど学んだ。チキンとモッツァレラのコトレッタ…それから豚肉と茸のクレピネットを少量ずつ皿に取り分ける。「飲み物はまだ残ってるか?」自分は他の、もっと度数の高いアルコールを選ぶ気マンマンである。
銃型ライターを投げ寄こされて、仕方ないとポケットに突っ込んで。酔ってないと話す相手だがどうみても何時もよりご機嫌で、けれど人が多い場所でこの様子なら少しは楽しめているのだろう、良かったと。「しかしまぁ、思ってたより煌びやかやね、眩しくて目眩がしそうサ」「極彩色でひらひらくるくる・・・蘭鋳みてぇと、思わね?」ランチュウ?聞いた事が無い言葉に首を傾げ、空けられたグラスを受け取る。「ランチュウ?動物か何かか?あぁ・・・飲み過ぎると食えなくなるぞ?」次のグラスを催促されて、取り合えず酒ではないフルーツジュースを渡して、まるでタダ飯タダ酒に誘われてきたかの様に話し笑って。
さあ、会場へ戻りましょう。今、此の時くらいは華々しい光景を瞳に焼き付けたい。今宵が終われば、また戦火に身を投じなければならないから。僅かに開いた扉より、遠く聞こえる円舞曲。誘われるよう、再びノブに手を掛けた。…ん?開きが悪い。否、重い。何か、隙間に詰まってしまっているのかしら。変ですわね。入った時はこうではなかったのに。ほんの少々強く、力を込めてノブを引く。その扉の向こうに"誰か"が居るとは予期もせずに。
やけに…褒められた。これも舞踏会ならではだろう。頬が先とは違う意味で熱かった。御礼はしどろもどろで、顔はまた紅潮している。神秘的、だなんて。身に余る。「…あ、有難うございます…! 私には勿体無いほどの御言葉…。 でも、ですね。そう仰られる貴女こそが、その形容に相応しく思われますわ」扉の角度が、彼女の手で広げられた。どうぞ素敵な一夜を。最後まで男性のふりを続け、握ったノブを押し戻す。戻そうとして、突如向こう側から強く引かれた。拙い、と思うが力負け。思い切り、つんのめってしまう。小さな悲鳴は誰のもの?エスコートを終えたばかりの女性を巻き込み、どっと中へ雪崩れ込む。
(うう…話しかけつつも、どうもまだ頭がはっきりしない。いつか何かの書物で見た、急性何某中毒とやら言うものであろうか。未だぼう、とする頭に別の声が聞こえてきた。『もしかして…楊様?…正装のお姿で…気付きませんでしたっ』思わず声のする方を振り向くと相手の姿までもなんとなくぼんやりと見える。これは…いや、酒のせいではなく。「あ、蛍殿っ!」いくら正装をしていても、この女性は滅多に見間違うことは無い。しかし今日は、彼女の華麗な装いと、会場の灯火とそして彼女自身の光とが相まって何やら一段と幻想的に見える。
『…楊様らしくない失敗ですね、ふふっ』だいぶ本来の調子を取り戻してきたところにそう言われると、一気に恥ずかしさが込み上げてくる。酔いのせいか恥ずかしさのせいかどちらともわからない位に顔を紅潮させるつつ照れ隠しのように手を振って返す。「どうもはや…面目ありません」まあこれも良い経験、と後になったら思うかもしれないがこの場はともかく、穴があったら入りたい、という心境と言うしかない。
後方から衝撃、でも前方でも何かにぶつかった。「うぎゅっ」その結果、後ろの誰かと前の誰かで挟まれ、一瞬強く圧迫される。うわ、変な声出た。…後は盛大に、誰かと誰かを巻き込みつつ派手に転んだ。注意力散漫。だった。おかげで、周りの視線が集まっている。「あいたたた…ごめんなさい、大じょ…」まずは、前の人に謝ろう――として、気づいた。「ゼっ…ゼレナリュシュさん…!?」そして、後ろを振り向くと。「さっきの貴女…!?」ど、どうしよう。「お、お二人とも、ケガは…!?」わたわたと前後を見つつ。
テーブルに並んだ沢山の料理。名前の判らないものが多いけど、全部美味しいのは間違いないだろう。華麗なダンスを遠くに、最早料理から目が離せなくなっている。「なんかそれ普段ロクなもの食べてないみたいに聞こえるよ。作ってくれる料理美味しいじゃん。でも了解、思いっきり食べとく!」食べろと言われて断わるわけない。普段食の細い幽祢さんも食べてくれるようだし、目一杯食べるぞ!彼が料理に手をつけるのを待って、まずは肉料理を自分の皿に取る。「飲み物?あ、グラス置いてきちゃったから新しいの貰うよ」そう返事をしつつも、皿の上にどんどん料理を乗せていく。とりあえず一口食べないと落ち着けそうにない。
「ええ、ありがとう」リズに皿を差し出すと、そこに白い果物を乗せてくれる。その仕草が、何だかとても甲斐甲斐しく見えて、嬉しかった。自分で自分の皿に取るよりもおいしいだろうな、と、食べる前から思える気がする。「うん、やっぱり、自分で食べるよりおいしい。お酒も、手酌より、注いでもらった方がおいしいということですよ」デザートを食べ終わると、立ち上がってリズの手を取った。「ダンスホールの曲、そろそろ終わりそうですね。最後に少しだけ、踊りましょうか。他に踊っている人たちも、最後が近づいて、今が一番盛り上がっている頃でしょうし、他の人にそこまで関心は行っていないでしょうし」
グラスを掲げる彼女の様子を見ていた。ほの白い月の光が、ベールのように彼女の姿を包んでいる。(負けるとか、勝つとかは何なのだろうな…)軽く酔いの回ってきた頭で、ぼんやり思う。耳を澄ませば聴こえてくる、ダンスホールからの楽曲の音色。ホールでダンスを見たい、という彼女の声に、はっとする。「…ああ、見に行きましょう」グラスの残りを喉に流し込み、(女性だもの、華やかなダンスや音楽がお好きだろうに…)自分の無作法さに落胆する。参りましょうかどうぞ、私の腕におつかまりください。そうして耳元にささやく。「お逢いしたい方がいるのでしょう。逢えるといいですね…」
スタッフの青年から希望のワインを手に取ると口元に笑みを浮かべ軽く会釈をする。そして駆けていく青年を見送ると、ふと遠くから軽快な音楽が聴こえてきた。「(音楽…嗚呼そういえばダンスパーティーが開かれるのでしたね。)」流石は舞踏会…美しい衣装に身を包んだ麗しき紳士淑女達が舞う姿は見事であろう……「嗚呼、私にも素敵な相手が居れば踊れたのですが…残念ですね。」男はキョロキョロと周りを見渡し、周りの者の邪魔にならない様にと壁際に寄る。そしてグラスを優雅に傾けながら遠くからダンスを眺めることにした。
「ランチュウ?動物か何かか?あぁ・・・飲み過ぎると食えなくなるぞ?」蘭鋳を知らないと言う奴に、なんだ、知らねんだ…強烈に希少な電気ネズミさ…なんちゃって、と酷く適当な嘘吐きフルーツジュース受け取り「ほんとおまぇは‘お父さん’だな、、別いいけどよぅ」なんて皮肉り、とりあえずジュースにも口付け、甘ぃ…と多少嫌そうに軽度の酔っ払いは馬鹿な事を言い出す「時にぁ呑んで記憶落として道端転がって優しい誰かに拾われるのがソーのステートさ!・・・だからお酒w」(屍冗談なのか本気なのか分からない口調で、「時にはブっ飛んだ事態な魅惑の一期一会!!」フルーツジュース掲げキラキラと
デザートを食べ終えて、彼が口にした言葉に一考。「踊る、って…」理解して、慌てた。何せまったく踊れないのだから。でも。誘われて断れるほど、無関心でもない。食事をしに来ただけのはずなのに、気を遣わせてしまっただろうか。重なった手を握り返して。「踊れなくてもご迷惑で無いなら」彼とでなければ絶対に受けなかっただろうけれど。彼なら安心していられる。迷惑には違いないだろうけれど、任せておけばきっと、大丈夫。
「ここか…舞踏会の会場は」入口を潜り、中へと入る。そろそろ終盤も近い中、何故参加したのかに特に理由はない。敢えて言うなら、「何となく」だろう。服装はタキシードだが、顔には半面を覆う目の部分だけ開いた仮面をつけていた。外套のような、全体を覆い隠せるものが一番ではあったが贅沢も言えない。恐らく、貸し衣装でも仮装ではないのだし、仮面などは置いてあるまい。などと考えながらも衣装部屋のある方見やりながら、会場内を一人歩く。
ランチュウは電気鼠なのだと説明をされた。多分、いや確実に違うんだろうなと内心思いつつも言葉に出さず、続いてアルコールを催促され・・・傍から見れば酔っ払いに絡まれている可哀相なウェイターに見られているんだろうなと視線を周りに巡らせ。「時にはブっ飛んだ事態な魅惑の一期一会!!」「見事に出来上がっているな・・・」グラスを掲げて叫ぶ相手に、しょうもないなと笑ってしまい。「道端に転がっていたら、オレが両足持って引きずって帰ってやる。優しいウェイターさんがいて良かったな?あぁ、うつ伏せがいいか、それとも仰向けがいいか?」
我は少しばかり力を入れてノブを引いただけだ。立て付けが芳しくないのか、或いは何かが隙間に挟まっているのだろうと予想した。まさか其所からレディ二人が雪崩込んでくるとは思いもしない。何時もなら、二人を抱き留める事も出来たかも知れない。けれど戦場でもない此所で、不意に起こった事象に対処し切れず。ぼよん………っ!結果。二人分の体重を抱えたまま、腰から床へと崩れ落ちた。愛しの使い魔達がクッションになってくれなかったなら、向こう一週間、腰痛に悩む日々を送る事になったに違いない。「……っ。御機嫌よう、マーシェ様。アンリ。 で、聞きたいのですが。コレは新手のサプライズか何か?」
「…や、俺が作る料理は普通に大したコトねェぞ?」密月はよく俺の料理の腕を褒めてくれるが、決して上手いワケではない。それは自分が一番解っている。まずい、このままでは健全な青少年の味覚を俺が壊してしまいかねない…と一人考える。かといって何かするわけでもないところが俺の駄目な所だと思う。なにより幸せそうに料理を皿に取り分ける姿を見れば、そんな些細(かもしれない)事はどうでもよくなった。「ならとりあえず飲み物取って落ち着こうぜ。メシ足りなきゃまた取りにくりゃいーンだし?」先程のテラスに戻るもよし、会場内で手近なテーブルを探すもよし。いい場所は無いかと辺りを見回してみた。
お逢いしたい方がいるのでしょう。耳元でささやかれ、思わず目を見張る。やわらかなまなざしで見つめ返されて、思わず目をふせてしまった。「さぁ、どうだったかしら」差し出された腕をとる。「逢えるかどうかも分からない相手を見つけることより、こうして蒼井さんと出逢えた偶然に感謝しないといけないと思うの」小さく笑う。それにしても、不思議なひと。初対面の相手には、つい身構えてしまうのが常なのに、彼といるとそういうことはなくて、寧ろ安心させられてしまう。彼の持つ穏やかな雰囲気のせいなんだろうか…。そのまま連れ立ってホールへと向かった
「………こけんなよ」 盆を片手にそれだけ言い、人込みを掻き分ける様に男は言った。が、その歩調は気を使ったのかいつもよりも遅い。真っすぐ場所を取ってくれていた蛍を見付け真っすぐ歩いて行った足が不意に一度止まりかけ、一秒余り悩んだ後もう一度歩みを進めた。「………待たせたな」 水の入った盆をテーブルに置きそう言いながら視線を何やら赤い顔の揚俊に向け、「……知り合いか?」 そう蛍に尋ねた。
「凄いぞー?時には殺人事件にまで遭遇…って、今笑ったべ??…ばっバカにしやがったなおのれっ」<絡み酒は癖フルーツジュースも何だかんだ言いながら飲干し「つか本気で暇そだな…そんなキミにはミルク味のキャンディをやろう!」脈絡の無い男は徐にポケットから飴玉取り出しウェイターに投げ渡す。「ぁー・・・顔擦剥きたくねぇから仰向けで…狽チて言うか引きずらないでぇえっ!!」
友達がここで仕立屋をしていた筈なのだが…と、暇な銀髪のウェイターと遊んでやりながら(狽チ)一人のお嬢さんを目で探している見当たらないのは仕立屋さんだから衣装部屋にでもいるのだろぅか、仕事は終わっているだろうし彼女とも遊びたいのだが…「(出て来いうぃむ!!)」悪魔は強く念じてみた。(狽チ
隅に移動し、マリブさんに話しかけたもののその返事に気付かないほど会場内の夢のような華やかさに見とれてしまっていた流れてくるワルツの曲に我に返り隣を見上げるとマリブさんが居ない、ぼんやりしてはぐれてしまったようだ探す為に少しだけ静かに浮かぶすると歓談席の人達の頭越しにダンスホールが見えた「来て良かったのですー」嬉しそうにダンスを眺めながらマリブさんの姿がないか辺りを見回す
もうお仕事は終わったし…っとのんびりしていたらどうやら出番はまだ残っていたようだ慌てて会場に戻る…もちろん、今度はそれなりに見える服装…尻尾があるので短めのドレス会場に入ってすぐ目に入ったのはオモシロ悪魔のソーさんが漫才してる姿だったり「ソーさん…何、やってるの?」(ぷくくとと、そうでは無い…まずは探さなくっちゃっと会場を見まわす「夜兎さんはドコだろ?」キョロキョロ探すが見つからない探し方が悪いのか…「そっか!…ダンスホールの方かも!?ソーさん、暴れちゃダメだよ?」そう言い残すとバタバタとホールの方へ慌てて走りだした(ぁ
「ここかな、会場って」幼い天使が、小さな羽根を震わせ、びくびくした様子で、入り口へと歩みを進める。ドレスを身に纏い、辺りをきょろきょろと伺う。特に約束があるわけでもない。来た理由…それはただ一つ。料理。「…お料理いっぱい」小皿に適当に取り、しばし幸せをかみ締め、踊る人々の邪魔にならないように壁際へ移動する。「…でもやっぱり誰かと来ればよかった」少し寂しそうに、くるくると踊る人々を眺めながら、手元の料理を頬張り、しばらく料理を食べることに専念することにした。
「う、うん。でもちょっと待って、あとコレとコレとアレだけ取りたい!」目に入った料理は全部食べたくなってしまう。幽祢さんの言葉は半分耳に入らず、数種類の料理がカオスな山盛り状態になっている皿に、まだ追加を試みる。ようやく気が済んだ頃には、皿の上に謎の料理が完成していた。「おっけー、お待たせ!次は飲み物だっけ?」待っていてくれた幽祢さんの横に並んで、その手にある皿を見て我に返る。あれ…量が違いすぎる…もしかしなくても取りすぎた?そう後悔しても、戻す訳にもいかない。ま、まあいいかぁ!笑顔で誤魔化す事にしよう。「さ、さぁ、早く飲み物選ぼうよっ」
ドロシー殿の去ったテラスを、私はゆっくりと後にした。手にはまだ彼女のぬくもりが残っている。聴こえてくるワルツと、楽し気に踊る人々の姿に先程の余韻を重ねる。彼女が帰ってきたら、お礼に伺おう。楽しい一時をありがとうと、花でも添えて。高ぶった心はなかなか静まらないが、そうも言っていられない。仕事を抜け出してきたのだから、いい加減戻らないとどやされる。私は一度スタッフルームに戻り、身なりを整えながらふと思い出す。そういえば、トレイを置きっぱなしだった。・・・誰か片付けてくれただろうか。
取りあえず、手には新しいトレイを持ち、数種の飲み物を並べる。そして何食わぬ顔で会場へと足を運んだ。「いらっしゃいませ」にっこりと笑顔を振りまきつつ、トレイを置いた場所へ。トレイの上にあったのは、空のグラスと皿のみ。・・・まあ、当然だろう。それを片付けようとした時、入り口から新しいお客が入ってきた。片付けは後回し。さーて、真面目に仕事をするか。
タキシードに身を包み、変わった仮面を着けた男性。その仮面のせいで、表情は上手く読み取れない。「ようこそ、ミスター。良い夜ですね。 まずは飲み物は如何ですか? お酒でも、ソフトドリンクでもお好きなものを。 何か入り用であれば、お申し付けください」何か探している風な彼の視線は、衣装部屋の方へと動いた。ダンスに参加する方々は、殆どが着替えを済まし、ホールへと向かった筈だ。「誰かをお探しですか? 私でよければご案内しますが…」
会場内を歩いていると、スタッフらしい男性に声をかけられた。「ああ、こんばんは。夜会にはうってつけな夜だね。 ありがとう。飲み物か、そうだな… キール・ロワイヤル、あるかな? なければ、水でも構わない。貰えると助かる。」丁寧な態度に、逆に此方が頭が下がりそうになるのを抑える。しかし、どうやら見ていた視線のせいか人探しをしているように見えたらしい。
「いや、大丈夫。人を探していたわけじゃないんだ。ありがとう」まさか、今の仮面の代わりに顔を覆いやすくなれる物を、とは言えまい。と、再度視線を戻すと。女性の衣裳部屋なのか、2・3人で倒れもつれている姿が見える。「…飲み物は後で構わない、先にあの人達の様子を見てきてあげるといい」その方向を指し示しながら、彼にそう告げる。
妙な鳴き声が聞こえる。在りそうで無さそうなそれは、何に似ているだろう。…狸?動転した頭が空回り、訳のわからない考察を巡らせようとした。傾いだ体は客人を下敷きにしつつ、盛大に床と抱擁してしまうと思いきや、柔らかな腕に受け止められて難を逃れる。そろり、と顔を上げる。鼻先にて漂う抑えた香りは、誰だったろう。何処かで…「え、ええ…?!」同様に泡を食った客人が、知人の名を口にしているではないか。音を立てて、自分の顔から血の気が引く。ぶつかった女性をミセス等と澄まして名を呼んだのに、時が悪戯を働いてくれた御蔭で台無しだった。もう一人の客人に対しても、言わずもがな。
客人の身を自分の両腕が閉じ込めていた事に漸く気付く。のけぞるように尻餅をついたまま後退り、抱き付いていた悪魔から慌てて手を離す。「此方こそ御免なさい…! 怪我ですかっ? ど、如何なんでしょう、か…あの、御客様も大丈夫でした?」案じてくれる言葉に居たたまれない。優しい方だ。自分のことなぞ良いものを。深々と二人に頭を下げた。「いえ。巡り合わせが絶妙だっただけ、かと…思いますわ。 折角、格好付けていましたのに。うう、失礼致しました…」客人はマーシェと言うのだと、次第に冷静さが戻りかけた中で彼女の背中を支え、さすろうと手を伸ばす。きっと苦しかっただろうと思っての行動だった。
急に馬鹿にしたなと絡みだしたので、していないと笑って宥めて。(そうか酔うと絡み酒になるんだな・・・)家で飲む時は量に気をつけようと。「今はダンスが始まっているから、混んでいないんだよ。飴?ソウソウはミルクキャンディーが好き、と」飴を受け取り、後で食べようとポケットにしまい。「ははっ分かった、おぶってやるから道端で転がっているな。聖職者の方々に見つかってお祓いされたら困るだろう、悪魔だから」
ブレイド様と蓮様がこちらに到着すると、盆を置きつつ楊様の方をちらっと見たブレイド様は幽霊の知り合いかと尋ねてきた。その楊様は酔いのせいか、恥ずかしさのせいか顔を紅潮させている。普段、落ち着きのある彼だからこそ、こういう姿を見るのはとても新鮮な幽霊は思わず口元をニヤニヤとさせた。…少し意地悪かもしれないけど。「…はい、お知り合いです」さり気なく水の入ったコップを楊様の前に置いているあたり、ブレイド様はとても気配り上手なのかもしれない。ブレイド様の後ろにいてる蓮様を隣に手招きし、ゆっくりとダンスを眺めた。
「キール・ロワイヤル?」実はあまり酒に詳しくない。だが舞踏会ということもあってか、カクテルの種類は豊富だった。仕事を始める前、一通り頭にを詰め込んだ中にその名があった気がする。手元にあるシャンパングラスを一つ一つ見ると、中に赤い色のシャンパンがあった。多分これだろう。「ミスター、こちらのグラスをどうぞ」差し出してみたものの、やはり自信がない。「もしお気に召さなければ、お作りしますので 遠慮なくおっしゃってください」
「人を探していたわけじゃないんだ」そう言いながらも、まだ奥を気にしている様子。私もなんとなく気になって、彼の視線の先を見た。そこには、何やら倒れ込んでいる女性達が…「…飲み物は後で構わない、先にあの人達の様子を見てきてあげるといい」「すみません、ミスター。お言葉に甘えて失礼致します」私は彼に頭を下げ、手近なテーブルにトレイを置くと、急いで彼女達の方へ向かった。「大丈夫ですかっ、お怪我はありませんか!?」衣装室の入り口で、重なり合っている女性達に手を伸ばす。
凄い量の料理が盛り付けられた皿を見ては苦笑を零すしかない。何も全て一つに盛らなくても…と思うが、それはそれで微笑ましい感じがする。「俺ァ選ぶまでもなく決まってるンだけど、お前はどーする?」既に先程から目を付けていたワインを取る。空のグラスとボトル一本を、だ。俺が知る限りの知識では、ここに置かれたどの酒よりもアルコール度が高いそれを手にして満足げに笑む。「ってそーいやお前、まだ探し人見つかってねーんだよな。なら会場内に居た方がいいよナ」再び会場内を見渡して目に付いたテーブル。人混みからは若干離れ、落ち着けそうなそこを指差し。「あそこでいいか?」首を傾げて訊ねた。
少女は唐突に意識を取り戻す。ぐらぐらとする頭を無理矢理覚醒させると何処からか曲が聴こえてくる。…この曲は…円舞曲!シェラザードは見かけによらぬ素早さで跳ね上がる。(嗚呼、しまった…。我ともあろう者が…!)顔面を蒼白にして辺りを探る。するとすぐ近くに相手の魔力を感知することができた。「楊俊殿、申し訳ありません。我としたことがこんな無様な失態を…!」あたふたしつつもこれ以上の失態を晒すまいと表情だけは努めて崩さぬように傍らの少年の手を取って駆け出す。「まだ間に合いますように…!!」
優秀な使い魔達のおかげで、三人とも怪我は無し。しかし。ちょっとだけ苦しかった。情けないが急に動けないので、もそもそと起き上がる。ふと気づく、背中をさすってくれる温かい手。後ろにいた彼女だ。確か彼女を。ゼレナさんが、アンリ、と。一瞬の圧迫に驚いてしまった身体は、落ち着きを取り戻していく。「もう大丈夫、ありがとう。あと――ボクは、マーシェ。ゼレナさんには、たくさんお世話になったんだ。こうして出遭ったのも不思議な縁だけれども――どうぞよろしく、アンリさん」微笑んで握手の手を伸べる。そして、ゼレナさんに向き直る。
「最初は迷っていたのだけれど。ゼレナさんが、誘ってくれたから来たんだ。とても、素敵な所――ボク、来て良かった。ありがとう」微笑んで、そちらにも感謝の握手の手を伸べる。『大丈夫ですかっ、お怪我はありませんか!?』あまりにも人目に付いたのだろうか。声を上げて、スタッフの方が駆け寄って来る。「ボクは大丈夫、ありがとうございます。こちらのお二人をどうかお願いします」痛い思いはしたが、立ち上がるのに支障は無かったので、立ち上がって頭を下げた。
「………こけんなよ」「………うむ。」掛けられた言葉の真意が単なる注意なのか、それとも皮肉混じりなのか。何か言い返そうかと思ったが…素直に返事をした。どちらにせよ、片手で軽々と盆を持って人混みに分け入る男に、今は勝てる気がしない。蛍殿の居る場へ着くと、傍らに少年と少女が居た。顔の赤さ、覚束ない身振り…どうやら酒に酔った様子。「…だ… 」大丈夫か?と聞こうとした瞬間、少女が跳ねるように起き、疾風の様に少年の手を引いて駆け去った。呆気にとられて見送るが…行き先は踊り会場の様だ。「…醒め立てで…大丈夫だろうか…」心の中で彼等の無事と、少しでも楽しめる事を祈った。
蛍殿の隣に行くと、踊りがよく見えた。歓談の場よりも、一層煌びやかな明かり。美しい音を紡ぎ出す演奏者達。そして、明るい曲に合わせ舞い踊る者達。その一歩一歩に、まるで花が舞うようだ…「…………」暫し踊りに見入ってから、ふと周りを見回す。話す者、食べる者、見る者、探す者…この場に居る皆が、どこか幸せそうな表情。思わず口元が綻んだ。…まさに、感無量。一息置いて、ブレイド殿の手によって無事運ばれた盆に手を伸ばす。ボトルからグラスへ果実酒を注いで、蛍殿とブレイド殿へ差し出す。蛍殿には「有り難う」と。ブレイド殿には「帰ったら…踊りの練習に付き合え」と、小さく告げた。
舞踏会も終盤を迎えた頃、緑色の天使が会場に顔を覗かせた。「ふあ〜、まだ盛り上がってるですね」会場の賑わいにきょろきょろと目を移す。「最後に雰囲気だけでも味わうのです」何の意気込みなのか、ぐっと小さく気合いを入れる。どうやら賑わいに気を引かれながらも、会場に入る決心がつかず外から眺めていたようである。「はぅぅ〜・・・でも、やっぱり人が多い所は苦手なのです」さっき入れた気合いはどこへやら、急にテンパリだした緑天使。ソフトドリンクを手に取るとそそくさと窓際へと移動した。「ふあ〜、みなさん素敵なのです♪」そこから眺める綺羅びやかな光景だけで満足らしい。
普段は味わえない煌びやかな世界。それを見ながら食べる色鮮やかな料理。自分はなんて幸せだろうなんて、思いながら、ひたすら頬張る。お腹が満足したところで、近くにいたウェイターに空になった皿を渡し、代わりにグラスを受け取る。少し移動しようかと、辺りを見回すと、窓際に見知った人を見つけた。「あ…」ドレスの裾に邪魔されながらも、なんとか傍へと歩みを進める。一人で心細かったのもあったから、こうして会えたのはとても嬉しい。ましてや相手は、いつもお世話になってる人。もしよかったら、少しお話させてもらおうなんて図々しく思いながら、声をかけた。「ウィズさん、こんばんは」
何やら蛍殿に笑われているような…。まあそれも仕方ない事ではあるがつくづく酒というものは恐ろしい、と思う。とそこへ、盆を持った男性が、水を卓へ置いてくれた。これは、ありがたい。「ありがとうございます!」お礼の言葉を返すやいな、早速その水をぐっと飲み干す。ああ、ただの水がこんなにも美味しいものであったか。大げさでなくそう思えた。「申し送れました、ぼくは…」水をくれた彼に名乗りかけようとしたのその刹那。『楊俊殿、申し訳ありません。我としたことがこんな無様な失態を…!』
平静に戻ったらしいシェラザード殿が、少年の手を取って駆け出した。そう言えば、危うく忘れかけるところであった。まだ曲は続いている。急げば間に合うに違いない。『まだ間に合いますように…!!』「急ぎましょう、今ならまだ何とかっ」少年は一度振り返って、すでに遠くなった蛍殿たちに向かって(すみません、また後ほど…)と言わんばかりに、ぺこりと一礼すると彼女に従って跳舞大庁(ダンス・ホール)へ急ぐ。
グラスに注がれたドリンクを飲むコトも忘れ、しばし会場の空気に酔いしれていると、「ウィズさん、こんばんは」「ふやう!?」声をかけられ思わず驚きの声をあげてしまった。声のした方を見ると、小さな天使の女の子が、まさか驚かれると思っていなかったのだろう、ウィズの声に驚いてびっくりした表情で固まっていた。「あ、あっ。エルちゃん、こ、こんばんわです」わたわたと、照れ隠すような笑顔で挨拶する。「お久しぶりなのです。ドレス姿似合ってますですよ」今度は照れ隠しではなく、屈託のない笑顔で少女に話しかけた。そして自分の頬を指でトントンとしながら、「ほっぺ、何か付いてるですよ」
呪うかの如く念じてすぐ、慌しく現れたウィムに内心自分スッゲッ!!なんて思っていたらコッチを見て何故だか笑われ、ドレスを着ている事に気付く「そっか!…ダンスホールの方かも!?ソーさん、暴れちゃダメだよ?」そうか、ダンスパートナーさんが現れたのだな?良かったのだwと内心思い「かぁいいぞうぃむー!!とりあえずコけんなよーー☆」走り行く娘にそう言って機嫌良さそうに手をぶんぶん振り見送る
ダンス・・・あぁそうか、そら暇よな。なんて思いながら周囲を見渡し、「個性豊かやね…」と呟いた。 (狽チ「違っげぇよ、分かってねぇなあオマェがミルク味なのは、オマェがボウヤだからサ!フっw」(ウッセッいつの間にかジュースの空のグラスがシャンパンに変わりあたかも初めからコレでしたと言わんばかりに自然と飲み続ける「ははっ分かった、おぶってやるから道端で転がっているな。聖職者の方々に見つかってお祓いされたら困るだろう、悪魔だから」おお、オマェなら安心だわと適当に相づち、「暇なキミにお仕事を与よう!☆何か適当に食べ物持って来たまえ☆」立場を乱用。
「ふやう!?」驚いた様子のウィズさんに、つられて一緒にびっくりしてしまい、つい動きが止まってしまう「あ、あっ。エルちゃん、こ、こんばんわです」わたわたと、挨拶してくれるウィズさん。「お久しぶりなのです。ドレス姿似合ってますですよ」「ふふ〜ありがと。お久しぶりなの」いつもより少し気恥ずかしいような気がしながら、挨拶を返す。へにゃと顔が崩れちゃうのも、嬉しいせいだし仕方ない。 …と。「ほっぺ、何か付いてるですよ」 いつもの優しい笑顔で、ウィズさんは自らの頬を指差す。思わず頬を触ると…あった…。確かにそこには先ほどまで、頬張ってた料理の残骸が。
「っ…う…あ、ありがとうなの」みるみる頬が火照っていく。ばれちゃったかな。料理目当てで、しかも貪ってたなんて。優しい笑顔のウィズさんにつられて笑顔になり、頭をかいた。「えへへ。料理…とってもおいしかったから」頬についてた食べかすは、持っていたハンカチにこすりつけて、そそくさと仕舞った。
さすっていた手を止めると数秒の不自然な間が開く。差し出された手は見えない。けれど親愛の情は感じるのだから、握手を求めてもいいと思えた。おずおずと、再び伸ばした手が指先に触れる。しっかりとマーシェさんの手を握り返せば、自分からも強張りが抜けてゆく。「本当に、失礼をしてしまったわ。 怪我がなくて――良うございました。 ふふ、同じですね。私もゼレナさんには御世話になってばかりなんです。 此方こそどうぞ宜しく御願いします、マーシェさん」こんな可愛らしい女性を、悪魔は何処で見染めたのだろう?気紛れな貴婦人の性分には薄々と気付いているつもり。故に、内心で鎌首を擡げた好奇心は内緒だ。
訊けば長くなる気がしたから。駆け寄って来た足音と声に、手を離した彼女が立ち上がる気配を感じて、へたり込んでいた腰を上げる。裾を直す時に気付いたが、床はひんやり冷たかった。「その声はティエンマさんですの? 私も大丈夫ですわ。此方の客人方が庇って下さった御蔭で、怪我ひとつ」女性二名を示して、ほぅと嘆息する。もしもを考えると、ぞっとする。あの転倒の瞬間を見られていたらと言う懸念は考えたくもないので、頭の隅に追いやってしまおう。「御詫びしないと気が済みませんわ。 ゼレナさん、マーシェさん如何いたしましょう? あぁ…その前にマーシェさんは御召し替えをなさらなくては、ですね」
ワルツもいよいよ終わりに近づき、楽しい時間もあと少し突然ですが、本日22時より茶会を開催することにいたしました急なことですのでもし都合がおあいになれば、最後の一時を共に過ごしませんか?http://chat3.whocares.jp/chat/cr.jsp?rn=yutecha
「えへへ。料理…とってもおいしかったから」ハンカチを仕舞いながら照れくさそうに笑う少女を見てると、なんだか嬉しくなった。「それは良かったのです・・・ あ、ボク何も食べてないのです」普段味わうコトのない光景に見とれて、何も手をつけていないコトを思い出した。辺りを見回すと、もう終演の余韻が漂っていて料理に手を出せそうな空気ではなかった。
「あ・・・ダンスももう終わりですね」どんな時でもこの空気は物悲しく感じてしまう。もう少し早く足を運べていたら、もっと楽しめたのにという後悔もあった。しかし、そんな感傷は表に出さず、いつもの笑顔で少女に笑いかけた。「もっと早く来てたら、エルちゃんとも踊れていたかもだったのですよね」そして最後に小さく付け加える。「残念だったのです」
「もっと早く来てたら、エルちゃんとも踊れていたかもだったのですよね」自分も思っていたことを言葉にされ、少しびっくりした。「残念だったのです」 最後に小さく呟く言葉に、無性に切なくなった。「わたしも、ウィズさんと踊りたかったから…すごく残念なの」鼻の奥がツンとするような感覚。「でも、舞踏会、ウィズさんのおかげですごく楽しかったから…ありがとう」優しい天使に感謝を込めて、精一杯のありがとうを。
この酔った悪魔さんはどこまでも自由だなと内心思いつつ。(飴の包みには明らかにミルクキャンディーと書かれてあるのにな・・・)「暇なキミにお仕事を与よう!☆何か適当に食べ物持って来たまえ☆」何やら新たな指令の如く言われて、おかしくはいはいと。「有り難くお受けしようか。適当ってそうだな・・・果物とツマミになるような物と?」取ってくるからトレーを持っておけと客である相手にトレーを持たせ、テーブルに食べ物を取りに行き。
星降る夜の舞台はこれにて閉幕と相成りますが、夢の余韻をお楽しみ頂けるよう、会場は暫く開放致しております。ご歓談等お楽しみ下さい。(最終は9/20となります)また、お帰りの際は今宵の思い出の一つとなりますよう、お土産をご用意しております。少々お時間を頂くかもしれませんが、どうか楽しみにお待ちくださいませ。それでは、フィナーレといたしましょう。宜しければ外をご覧下さいませ。始めは軽快に、次からは重く響き渡る。舞踏会場の外で上がり始めた大きな音が、幾つも幾つも重なり合って大気を震わせた。それは天空に咲き誇る、もうひとつの大輪の花。
「俺は、これでいいや」飲み物に拘りは無い。ノンアルコールっぽいグラスを適当に手に取る。「うん…でも会場に姿が見えないんだよなぁ…」ゼレナさんの艶やかな銀髪と荘厳な雰囲気を持った容姿を思い出す。人混みに居ても目立つ筈なのに。幽祢さんの言葉でテーブルに視線を向けた時、ホールで拍手が起きた。どうやらダンスが終わったらしい。続いて会場の外から大きな音。「これ…花火?わ、もう一度テラスに行こうよっ」花火を見に人が集まれば、その中にゼレナさんが見つかるかもしれない。それに何より、幽祢さんと花火を見たい。この夜の最後の記憶に。夜空に咲く美しい花に、もう1つ思い出を持たせる為に。
「ありがとうはボクの台詞ですよ 見つけてくれてありがとです」正直、雰囲気に酔いしれていた自分には見つけられなかったと思った。会場が舞踏会終了の拍手と歓声に包まれる。そんな中、窓側の人たちから一層大きな歓声が上がる。皆が窓の外に目をやり、多くの人たちがテラスへと出て行く。何事かと外を見ると、夜空の漆黒が鮮やかな色に煌めいた。「エルちゃん・・・まだ終わってないみたいですよ」幾つも上がる大輪に見とれながら、「外、行きましょうです」
ふ、と…かき消えるように音楽が止まった僅か置いて湧き上がった歓声と拍手に、漸く我に返る如何やら何時の間にか目の前の光景に魅入っていたようだ手にしたグラスが何杯目かすら覚えていない以前参加した似て非なる一夜を思い出せば、苦い想いが過ぎれども、今回も有意義で素敵な時間を過ごせた事は確かだ湧き上がった其れは、素敵な一夜を祝福し、感謝を示すものそして、同時に夢の終わりを告げているさて…未だ残る方は多々居るだろうが、私はそろそろお暇するとしよう手近なテーブルに手にしていたグラスを置く
花の名を持つお嬢さんは大丈夫だろうが、博士君と獣のお嬢さんには…と、彼等に其の旨を告げて会場を後にした外に出た瞬間大気を震わせ響いた音に視線を上げれば其処には大輪の花…折角だ怒られたなら其の時は其の時だろうと、黒翼を広げ飛び上がる後にしたばかりの建物の屋根へと降り立てば、地上より間近に見える其れを眺め満足気に笑みを浮かべた此の花が、散り終わるまで、もう少し…
ぱたぱたと埃を払い、立ち上がる。見た所、レディ二人に怪我は無い様子。しかし、まるで計ったようなタイミング。少々驚いた。「ようこそ、マーシェ様。お気に召されたようで良かった。 ただ、貴女の舞踏会は始まったばかりでしょう?」夢の時間はもうすぐ終わる。魔法の期限は今宵一晩。けれど、例えば残り僅かであったとて。せめて此の華々しい時をドレス姿の彼女と過したいと思った。
「ではアンリ。罰として彼女のコーディネートの御手伝いを。 盲目であればこそ、"観える彼女に相応しい装い" 宜しくて?」幾分難解なリクエストかも知れないが。彼女の機転を信じての事。決して意地悪では御座いませんのよ?「マーシェ様、着替えが済んだら会場にいらして下さい。 入口から三番目のテラスにて、お待ち申し上げております」それでは。そう告げてその場を後にする。会場に続く大扉を開ければ、また煌めかしい光景が瞳に映った。給仕からグラスワインを二つ受け取り、テラスへ向かう。轟発音と極彩色の閃光に気付いたのは、まさにその時だった。
声につられ窓の外を見ると、夜空がまるで花が咲いたみたいにいくつもの明かりに彩られていく。思わず口をあいて見とれていると、ウィズさんから声がかかる「外、行きましょうです」 ウィズさんの言葉に、満面の笑みで頷く。夢みたいな大輪の花。「わたし、ずっと見てみたかったの」早く行きたくて、思わずウィズさんの手を掴み、テラスへと促す。見たことのない大輪の花に、興奮しすぎだろうか。引っ張るような形で握っていた手を慌てて離した。「あ…ごめんなさいなの」
ホールに向かった時と同じく花火が終わりを告げたあと…バタバタと戻ってくる足音「ソーさん!初めてダンスしちゃった♪(ドカっとタックル!(ぁスタッフの予備出動で緊張したけど!コケなかったし、失敗もしなかったし凄いでしょ♪」後方から走ってきた勢いのままタックルをかまし矢継ぎ早に報告をする花火も終わって歓談席は終わりを惜しむ人でまだ溢れているはっ!…タックルははしゃぎ過ぎ!?っと慌てて手を離した
慌てて駆け寄ると、一人が立ち上がった。「ボクは大丈夫、ありがとうございます。こちらのお二人をどうかお願いします」少女は頭を下げ、後ろの二人を見やる。そのうちの一人は、アンリエッタ殿だった。「その声はティエンマさんですの? 私も大丈夫ですわ。此方の客人方が庇って下さった御蔭で、怪我ひとつ」確かに彼女らに一つの傷も見受けられず、もう一人の女性も難なく立ち上がると、グラスを手に取った。私はほっと胸を撫で下ろし、彼女に頭を下げた。その時、色鮮やかな光と轟発音が飛び込んできた。降るような星空があったあの場所に、華やかな大輪の花。私も思わず足を止め、空を見上げた
外から聞こえる花火の音に、会場内に向いていた目を外に向ける。が、ここからではよく見えない。「だな、テラスで花火見物としゃれこもうぜ」正直人が集まるであろう場所に近付くのには勇気がいる。だがそれも、隣の存在を思えば何てことはなく思えるから不思議だった。「ほらいくぞ。はぐれンなよ?」人の波に飲まれないように注意し、パートナーと二人連れ立ってテラスへと向かう。そこでは色鮮やかな華が夜空を彩っていた。「今年は夏祭りに行けなかったケド、思わぬところで花火が見れたナ」花火。一年前の大事な思い出。それは今の幸せな時間の、始まりの記憶。
待ち合わせの約束に、微笑んで頷いて。紫の髪が美しい背中を見送る。そして、アンリさんに向き直る。(――盲目)ゼレナさんは、そう言った。…全く気づかなかった。衣装室を見渡せば、膨大な数のドレス。アンリさんは、ボクに似合うのは「ささやかながら挑む色」と言ってくれた。まず思いついたのは、黒だった。挑む。今のボクが挑んでいるのは、今だ捨てきれぬ自らの立場。昔故郷で纏っていた黒のドレスは、その象徴。しかし、それではただの「挑む色」。
――「ささやかながら」。「…青?」呟く。うん、青がかった黒。そんなイメージだろうか。「青がかった黒――アンリさん、色のイメージは、この辺りが良いと思うの」アンリさんの手を引き、それらしい色のドレスが集まっている所に行く。「…形、どれがいいかな?」色は自分で選んで、形状を彼女に任せよう。「わかりにくかったら、ボクも手伝う」微笑んでそう付け加えて。
嬉しそうにはしゃぐ少女を見て、少年もまた嬉しくなった。手を取られ、促される。が、その手はすぐに離された。「あ…ごめんなさいなの」慌てて手を離した少女の顔がみるみる紅潮していくのが見てとれた。少女が何に対して謝ったのか少年には分からなかった。ただ逆の立場なら、自分もそうしただろうと思った。また一つ嬉しさが込み上げ、「なんで謝るですか?」くすっと笑うと、「さ、行きましょうです」俯く少女へと、先程つながれた手を優しく差し伸べた。「離しちゃダメですよ」
「有り難くお受けしようか。適当ってそうだな・・・果物とツマミになるような物と?」トレイ渡され内心なんて傍若無人なウェイターなんだと思いつつ、別に気にはならなかったので普通にトレイ持ち「おお、何でも、ちょー適当でいいし、…ソーがウェイターに間違われたりして・・・」いってらっしゃーい☆と、見送った後、終わりの花火が上がった。「スゲェな、まさかココで花火が見れるとは思ってなかったのだ・・・w」そう呟き花火に見入った。
花火が終りを告げ、静かに余韻に浸っていた時、バタバタという足音と共に激しい衝撃にあった「ソーさん!初めてダンスしちゃった♪(ドカっとタックル!「狽ョぼぉっっ!!!(吐血」不意の激しい衝撃に背中がくの字曲がり赤い液体を口から吐き出した、そして軽く吹っ飛び倒れこむ(博繧チ「スタッフの予備出動で緊張したけど!コケなかったし、失敗もしなかったし凄いでしょ♪」この衝撃の主に驚き意識が朦朧とするなか必死で返答を試みる「ぉ・・・おお、すっすげぇなうぃむ、…すさまじい且つ、美しいタックルだった、…もぅキミに教える事は何も、な・・・グフッ」(倒れピクピクする瀕死の悪魔
差し伸べられた手に、顔をあげる。そこには、優しい笑顔のウィズさん。思わず、手とウィズさんの顔を交互に見る。「離しちゃダメですよ」返事の代わりにしっかりと差し出された手を握る。暖かい手…自分よりも少し大きな手に、くすぐったい気持ちになる。「えへへ、もう離さないもん」繋がれた手を見つめ、思わずこぼれた言葉は、聞こえなかっただろうか?今度こそ、しっかりと手をつなぎ、テラスへと向かう。そこには鮮やかに夜空に咲き誇る大輪の華。「わぁ…綺麗だね」
「あっと、これ持ってくのはマズイかな」グラスだけをテーブルに戻し、パートナーとはぐれないよう横に並んで、テラスへ向かった。さっき殆ど人影の無かったテラスが今は花火の音に誘われた人で溢れている。「うん、去年の花火も綺麗だったけど、この花火も凄いね!花火の光で夜空が明るいよ」見上げた視界には幽祢さんの横顔と花火。何時までも見上げ続けていたい気分だ。夢中になっていたら、傾いた皿からミニトマトが落ちる。「わっと;」気付いて視線を下に戻す途中、グラスを二つ手にした友人のテラスに近付く姿が目に入った。「…あ!ゼレナさーん!」周囲の歓声の中、咄嗟に叫んで手を上げた。
「せわしないやつだな」 ボソリと呟き、青年が駆けた先へ男は視線を落とした。そこに舞うのは色とりどりのドレスに身を包んだ二組の男女、美しいと言う事はこう言うのだろうかと男はため息代わりにグラスに口をつけた。 静かに天に咲く大輪の花が祭の終わりを告げる。名残は惜しいが男は空になったグラスをテーブルに置いた。「………なかなか楽しかった。付き合わせて悪かったな」 傍らの蛍にそう告げ、帰月蓮にぶっきらぼうに片手を差し出した。「………帰るか」
繋がれた小さな手は暖かく、心まで暖かくなった感じがした。少しむずがゆく、とても嬉しい感じ。「わぁ…綺麗だね」テラスに出て、少女の感嘆の声に夜空を見上げる。幾つも上がる、色とりどりの華。確かに綺麗である。「ですねぇ・・・」しかし少年の中では何かが足りなかった。テラスには既に大勢の人たちがいたが、テラスは十分に広くゆったりと観覧できる。不満などない。けれど、何かが・・・。目線を徐々に上げ、頭上を見て思いついた。「エルちゃん、高いトコ平気ですか?」言葉にした後で思った。天使に何を聞いているんだと。
難題を涼しい声で言い渡されて思わず絶句。どうにか頷くのが精一杯。退いたらしいティエンマさんを含め、彼女を見送る言葉を失っている間に、気配は遠ざかって行った。悠々とした足音がにくらしい…ゼレナさんの意地悪。罰とは言え、無茶な注文を仰る。と――いじけた気分に、ぽつりと落ちる水滴に似た呟き。声が波紋のよう。マーシェさんもまた探している。青…青がかった黒。手を引かれて、夜空を溶かす色のドレスが集った所に導かれる。「そう…ですね。 生地の手触りは、軽すぎず…硬さを残したものが良いでしょうか。 ああ、でも…それでは重いから、薄くてもしっかりした作りで…?」上質の生地はまるで海だ。
手がひらひらと泳いで、掴んでは逃がす。おおまかな姿形をもとに選ぶのは緊張するが、気に召さないなら、本人も素直に断ってくれるだろう。彼女の手はあまり大きくなかったから、私と身長はそう変わらないのかも知れない。ぶつかった時の記憶は、とても参考にならないし。「ふふ、責任重大ですわね。 …あ、これなんて如何かしら。涼しげですよ」さらりとした、肌触りの良さそうな生地を手繰り寄せると、指先で触れただけでも細かな刺繍が走っているのが分かる。所々に点在しているのは、石の飾り、それとも…?私に把握できるのは、ほんの僅か。彼女の眼に適えばいいけれど。恐るおそる伺うように、顔を寄せた。
思ったよりも多い人に、握る手に自然と力が入る。「エルちゃん、高いトコ平気ですか?」ふと、空を見ていたウィズさんの問いかけに、首をかしげる。高いところは平気。むしろ大好きだ。飛べないとはいえ、一応天使。「うん、高いの好きだよ?」急にどうしたんだろうと首をかしげる。きっとウィズさんのことだから、何か素敵なことを思いついたんだろうかと、わくわくしながら、次の言葉を待った。
ふと手を見ると随分軽い。持っていた筈の皿とグラスが無くなっていた。もう直ぐお開きだと思ったから、無意識にホール内に置いて来たのだろうか。それでいながらボトルだけは離さない自分に苦笑する。そうこうする内に花火はクライマックスへと近付いていく。その時、隣の密月が手を上げた。『…あ!ゼレナさーん!』視線を追えば一人の女性の姿。どうやらあれが密月の友人らしい。舞踏会が終わる前に見つかって一安心、といったところだろうか。「良かったじゃねーか、見つかったンだろ?」頭を軽く撫でてから数歩下がる。彼と友人のひと時を邪魔するつもりはなかった。
「うん、高いの好きだよ?」それは良かったと少女を見ると、きらきらした瞳で見つめられていた。(Σはう。すごい期待されてるのです)妙な緊張感があったが、思いついたコトは実行せずにはいられない。「ちょっと失礼しますです」そう言うと少女を抱きかかえた。戸惑う少女をよそに、魔力を高めるために集中し始める。(ボクの浮力に、風の魔法力を併せれば問題なしです あとはここにいる人たちに迷惑にならないように、 発動範囲は小さく、強く)魔力で風を集め、薄く身体と翼に纏わせる。「飛ぶです。しっかり掴まっててくださいです」言うのを合図に、夜空へと垂直に舞い上がった。
なるほど。と、粋な計らいに関心する。真夏の夜空に極彩色の火炎を飾る、"花火"と呼ばれし月光の文化。聞いただけで実際に目にした事は無かったけれど。美しい。夜色を照らし、そして刹那に散り行く様は、我が愛する魂の輝きに酷似している。「?」ふと、我が名を呼ぶ誰かの声が聞こえた。爆発音と歓声に紛れたソレは、決して空耳などではなく…「みっきー君、こういう場では大声を慎むものでしてよ?」間違える筈もない。赤毛のワーウルフがこちらに手を振っている。「ようこそいらっしゃいました。舞踏会は如何でしたか?」初めて見る正装姿に少々驚きながらも、ウインクを一つ。
「飛ぶです。しっかり掴まっててくださいです」浮遊感に、とっさに首にしがみつく思わず目を閉じていたらしいそっと目をあけると、近くにウィズさんの顔があった「…えへへ」あまりの近さに笑うしかないしかも思いっきりしがみついて、苦しくなかっただろうか…少し腕の力を緩め、辺りを見渡す目の前に広がる大輪の華テラスから見るのとは比べ物にならないほどの光の華に、我を忘れて興奮する「すごいっ…」大好きな空につれてってもらえただけか、こんなに綺麗な花火を見せてもらえるなんて…感謝と嬉しさが、体から溢れてしまいそうで、ぎゅっと抱きつく「ありがとう、ウィズさんっ」
涼しげな。それでいて、上品な。胸元や裾に散りばめられた、青い石の飾り。華美すぎず、地味すぎないデザイン。素晴らしいドレスだった。…それを手探りで探し当てたアンリさんって。(凄い…!)ドレスをそっと取る。「うん、素敵――とても、美しい。ボク、これ好き。ありがとう!」
――着替えにてこずる、なんてことは幸い無く。適当に髪にワックスをもみこみながら、大鏡に映った自分を見る。大丈夫だ。ちゃんと鏡の中の自分は、眼に自信の色が滲んでいる。試着室を出て、改めてアンリさんに向き直る。「貴女に感謝を」跪き、手を取り。「ありがとう」ぎゅっと、感謝を込めて握った。さあ、テラスへ。扉を開けると、会場の歓声が雪崩れ込んだ。
ダンスも終わり、各々ペアも解散しだす。しかし歓談室やテラスはまだまだ舞踏会の熱気に包まれて、まだまだ人が残っている。ダンスの余韻がまだ残るも、足は結構フラフラしている。(テラスに確か妹がいると聞いていたので、挨拶位しないとね♪…さてさて、この辺りかしら??)…どうやらお姉さんの私としては、見てしまっていいものなのだろうか?妹のエルちゃんが、緑髪の少年と空を浮遊している。しかも、抱きついちったり(///見てないふりして、帰ろうかしらと思いつつ妹が大人になったのを微笑ましく見とれていた。
(ふぅ、上手く飛べたのです)人を抱えて飛んだコトなどなかったので、無事離陸できたコトに安堵する。腕の中で空から見る花火に興奮する少女を見て嬉しくなった。(良かったのです)「ありがとう、ウィズさんっ」「いえいえですよ」ぎゅっと抱きつかれ、ふと我に帰った。勢いで飛び立ったとはいえ、自分のとった行動に急に恥ずかしくなった。「あ、あの、エルちゃん。や、屋根に一旦降ろしますですよ」赤くなった顔を花火の色で誤魔化せますように。
声は無事に届いたようで、ゼレナさんからその音量を窘める言葉とウィンクが返ってくる。身を包む華麗なドレスと相まって、その仕草にドキリとさせられる。照れ隠しに改めて大きく手を振った。「お誘い有難うね、凄く楽しんでるよ!ほら料理もこの通りっ」カオスな皿を掲げてゼレナさんに見せ、それから幽祢さんを振り返る。「うん、見つかったよ。もう諦めかけてたから嬉しい!」こうして逢えたのも、探し易いように幽祢さんが行動に気を使ってくれたからだ。その彼の足が数歩下がる。また気を使ってくれようとしているのがすぐ判った。だから。「2人は初対面だよね?紹介したいからさ、行かない?」と手を差し出した。
「あ、あの、エルちゃん。や、屋根に一旦降ろしますですよ」花火のせいか、赤く見えるウィズさん言葉の通り、屋根に降ろしてもらう離れていく温もりに少し寂しくなりながらも、手だけは繋いだまま握り締める「ウィズさんさえよかったら、また…いつか一緒にお空に…」自分は飛べないのだから、ウィズさんに負担がかかるのは承知してる我が儘でも、つい次を望んでしまうそれほどに、大切な時間だったなんとなくテラスに目線をやると、見知った姿を見つける「…お姉ちゃん」こっちを見ている姉に小さく手を振ると、ウィズさんに微笑んだ「お姉ちゃんのドレス姿…とっても綺麗なの」
試着室から数歩退いて、マーシェさんを待つ。秒刻みで喜ぶ様子を思い返すと、心地いい疲労が身に染み渡るよう。花火の音は、此処でも充分に通る。テラスに向かったゼレナさんは堪能されている頃に違いない。その待ち人がカーテンの奥から現れる。盲いた闇の向こうに隠された艶姿を、せめて一瞬…そう望んだとて、叶わないけれど。「如何致しまして。御希望に応えられまして、私のささやかな誇りですわ。 見えず、悔しゅうございますが」声が下がったことに驚きながらも、握られた手を、両手で握り返して笑んだ。挑む者の、すこしかたい皮膚。「行ってらっしゃいませ。 悪魔すら凌ぐほどの、夜の祝福をあなたに…」
「ぇ?そう?誉められちゃった♪(*ノノ)じゃなくて…だ、大丈夫!?」何か赤い液体を吹き出しピクピクするソーさんヤバイヤバイヤバイ…(ぐるぐる「どうしよう…ぁ!気つけ薬ってよく言うし…」じーーーっと見るテーブルの上のアルコール類しかし…「意識の無い人に呑ませちゃダメだよね」うん、気づいて良かったトドメさしちゃうよね(ドキドキドキ…他に方法は…??とりあえずガクガクと肩をゆすって意識回復を願うしかないのだったり…「ソーさ〜〜〜ん…起きて〜〜!ほら!会場閉まっちゃうよぅ?」(ガクガクガクガク…(今度は酔いそうな…
「お姉ちゃんのドレス姿…とっても綺麗なの」少女が見つめる先、こちらを見て微笑む女性に軽く頭を下げた。「ですね そろそろ終わりのようですし、降りるですか」再び抱きかかえるとゆっくりと降下していく。上空で感じた恥ずかしさはもうない。降りながら先程の返答をする。「ボクで良ければいつでも声かけてくださいです」いつものように微笑んだ後、思いついて付け足す。「あ、今日お送りするですけど、どうしますか?」テラスに着くとそっと少女を降ろし、目の前で微笑む女性に礼節に習ってうやうやしく頭を下げた。そう、ここは舞踏会場。「初めましてです、ウィズと申します」
彼の持つお皿には山盛りの食べ物。色気より食い気とは良く言ったもの。思わず笑ってしまう。「はい? 紹介?」我の尖り耳がぴこんと反応した。ソレは唐突に放たれた一つの言葉。はて、何の事か。誰を紹介して下さるのだろう。彼は皆まで言わなかった。ただ『初対面だよね』とだけ。ほんのりと朱に染まる頬。ソレが意味する事と言えば。(嗚呼、なるほど。そういう事)「宜しければ恋人と御一緒に御越し下さい」確か、そんな手紙を彼宛に認めた記憶がある。「修羅場になっても知りませんわよ?」無論、冗談。ただ、ちょっとした意地悪をしてみたかった。
空に浮かぶ緑髪と青髪の妖精は花火に照らされ一層幻想的に見える。やがて二人は屋根に移ると私に気がついたのかテラスへ下りてきた。『初めましてです、ウィズと申します』(うん、この少年はエルちゃんにぴったりね)「姉のレイです。今晩は妹をありがとう♪そろそろ舞踏会も終わりのようだけど、妹を最後までお願いしますね」折角の二人きりのを邪魔してしまった事もあり、ここは早めに切り上げた方がいいと思いつつ、感謝と礼を彼に尽くした。そして、エルちゃんにも「エルちゃん、今日は凄く綺麗よ^^特に二人で飛んで花火に照らされている時なんか天使みたい…あらっ…だもんね♪」
うっとりと夢心地で踊りを眺めていると、曲の最高潮を示した指揮者の手が、まさに終止符を打った。…静寂の後。鼻の辺りがつんとして、知らず何度も手を叩く。と、轟音と共に天空に花が開くのが見えた。(素晴らしいタイミング…!)思わず浮かんだ笑みは、この花の予定を知る者のみが出来る笑み。係員皆が、こんな顔をしたのではないだろうか。
隣からの「帰るか」の声に振り向くと、手が差し出されていた。どきりとして一瞬躊躇うが…微笑んで、そっと手を伸ばす。「うむ、帰ろう。…蛍殿、有り難う、楽しかった。」またな、と言い残し会場を後にする。会場の片付けや残りの仕事が頭に浮かぶが…夜が明けるまで、祭の余韻を楽しんでも罰は当たるまい。未だ鳴り続く花火を見上げて思う。まさに、星降る夜の夢現―。醒めても消えぬ、夢物語であった…と。(歓談期日を過ぎてしまった…申し訳ない!
「へ?修羅場?」ゼレナさんの言葉に、目を瞬かせてそちらを振り返る。艶やかに笑う顔。その手に握られている2つのグラス。と言う事は。「そのグラス…ゼレナさんも誰かと一緒に来たのかな?」キョロキョロ見回してもそれらしい人が見当たらないような…その時、ひときわ大きな花火が夜空に乱れ咲いて、一瞬送れてその音が耳を揺らす。「わ!」思わず空を見る。どうやらクライマックスが近いらしい。「ホント凄いね、俺、こんなに沢山の花火を見るのは初めてだよ!」同意を求めて幽祢さんとゼレナさんの顔を順に見、そしてもう一度空を見る。楽しい時間の終わりを目に焼き付ける為に。
ダンスが終わり、騒がしくなり始めた歓談席。…楽しかった時間も、過ぎてしまえば本当に一瞬の時間。蓮様が注いだ果実酒もいつの間にか飲み干してしまっていた。ありがとう、っと蓮様に感謝を伝えようとすると…その時夜空に綺麗な花火が咲いた。音に吃驚した幽霊だが、花火を見た幽霊は本当に幸せそうな顔だ。花火も終わり、会場から人が1人、また1人と去って行く。…私も帰らなくちゃ。「…本当に、楽しい時間をありがとうございました。」蓮様とブレイド様にまた会いましょうと、深々と礼をし…フワッと、会場内に消えていった。
テラスに向かう最中、腹の底に響くような轟音。この音は。花火。見たい。是非見たい。急がないと、終わってしまうだろうか。出来るだけ早歩きで、しかしみっともない動きにならないよう気を配りながら。目でテラスの場所を確認すると――目を引く紫色の髪。近くに寄ると――ご友人だろうか。楽しそうに話している。いきなり割り込むのは、流石に無礼だろうか。うーん、と心の中で首を傾げる。「……ゼレナさん…」ちょっと迷ってから、控えめに彼女の名を呼んだ。
此の子は何やら勘違いをしている。鈍感なのか巧みに躱されたのか。ま、良いでしょう。わざわざ声を掛けて下さったのだ。意地悪に巻き込んでは可哀相な気もする。ただ、些か残念でもあった。これはナイショ。促されるまま夜空を見遣れば、其所には身体の芯を揺する音と、ちりばめられる火飛沫。そうして挙がる歓声は名残を惜しむ響きを孕むようで。『……ゼレナさん…』夢の時間はもう終わり。灰被り姫の逸話と同じく、硝子の靴も純白のドレスも全ては儚い魔法だったのだと。けれど。今宵。此の世界を演出した魔法使い達は、最後の最後で我らに猶予を下さった。「お待ちしておりました。マーシェ様」
『お待ちしておりました。マーシェ様』花火をバックにした、美しい貴女。開いたかと思えば、すぐに闇に沈む火の花。ああ。まるで、この夜の魔法が解けるかのような儚さ。目を閉じる。ボクに、ボクらに魔法の時間をくださった貴方達に感謝を。不思議な縁で出逢い、とても良くして下さった深緑の似合う貴女に感謝を。そして。ゆっくりと目を開き、ゼレナさんの手を取り、跪く。
「ボクをこの場にいざない給いし貴女に感謝を」手の甲に、そっともう片方の手を重ねた。故郷では、ここで軽いキスだったような気がするのだが。吃驚させるのもどうかと思って、自粛した。きっと、誘われなければ、ボクは此処に来なかっただろう。心の底から、感謝を込めて。そっと顔を上げる。「…へ…変じゃないかな…?」青がかった黒のドレス。ちゃんとしたドレスなんて、久しぶりに着たのだ。少し、恥ずかしくなってしまった。
「エルちゃん、今日は凄く綺麗よ^^特に二人で飛んで花火に照らされている時なんか天使みたい…あらっ…だもんね♪」「えへへ、天使だもん。綺麗なんて…恥ずかしいの〜」口では恥ずかしいなんて言いながらも、しっかり羽根がパタつくあたり、喜びを隠し切れてない。一夜の夢も終わり…姉に微笑みかける「もう終わりだね。最後にお姉ちゃんに会えてよかった」そして、ずっと自分のそばにいてくれた天使にも、感謝を「ウィズさん、一緒にいてくれて、本当にありがとう」ふと、先ほどの言葉を思い出す「えと、お家まで送ってもらえますか?」最後なんだし、お言葉に甘えさせてもらうつもりだ
振り向いた其所に、彼女は立っていた。夜に溶けるブルー、群青色のドレス。控え目な装飾とデザインは決して地味とは評せない。生地の色と相俟って透けるような銀髪の美しさを殊更に際立たせる。かつて戦場で見えた時とは違う雰囲気。まるで令嬢のような、気品を感じさせる佇まい。ソレは不覚にも、この我をして毒気を抜かれる程のモノだった。何と告げるべきなのだろう。そう言葉を選んでいて、不意に手を取られる。跪く貴女。握られた手の甲。コレが意味する所は、つまり………!
…そんな事はある筈もなく。何を期待していたのか、ですって?さあ、なんでしょうか。ヒミツですわ。ふふっ。重ねられた其所からは掌の、貴女の熱が感じられた。祈るように囁かれた言葉を聞いて、ようやく思い至る。誘って良かった、と。『…へ…変じゃないかな…?』「流石は我のお気に入り。とても綺麗ですわ、お姫様」何時か、コロシアムで言われた言葉。御返しするなら今を置いて他には無いでしょう?尤も、含む意味合いは多分に異なるだろうけれど。「今宵一晩、御付き合い頂けますか。お姫様?」
ドキドキと胸の中が痛い。緊張。照れ。喜び。感謝。色々な想いがごちゃ混ぜになっている。ああ。似合っていなかったらどうしよう…!『流石は我のお気に入り。とても綺麗ですわ、お姫様』少しだけ驚いて、目を大きくした。綺麗、だなんて。お姫様、だなんて。そういう貴女のほうが、更に――『今宵一晩、御付き合い頂けますか。お姫様?』――夢の時間は終わる。明日からはまた、剣を握る日々が続いていく。
静かに立ち上がり、彼女をまっすぐ見つめる。――それでも、今宵一晩だけ。一晩だけでいい。「はい。美しい貴女と共に居られるのは――光栄です」微笑と共にそう頷く。一晩だけでいいから、この世界の戦火に包まれるだけではない姿を。ドレスの裾を持ち上げ、深々と礼をした。