全ての戦場へ行った者へ問おう。貴方はどうやって生き延びた?私は戦友によって助けられた。戦闘指揮を補佐してくれた古参兵、切り結ぶ私を援護してくれた上等兵。出撃前兵舎で見かけた、意気上がる翼人の若者と、彼に弁当を届けていた妹。彼らは今、物言わぬ骸と化し、墓地に眠る。さようなら、さようなら軍曹。さようなら、さようなら上等兵。さらば、これからが人生だった兄妹。哀れな兄妹の、魂に報いる術を私は知らない。古きも新しきも皆死んだ。私は彼らの死の上に立っている。
生命は等価ではなく、リスクは平等ではない。ただそこには、生きるということだけが、すべからく皆同じ物を持っているに過ぎない。命の価値も。背負った物も違う、それでいて同じくこの世に生き、そして死んだ人々に。生き残った私は、せめて彼らへと花を捧げたい。命は二度と戻らん。故に尊い。命は容易く失われる。故に貴い。この花は安い。見渡せばそこらに生えているだろう。だが、これも命。貴い物である。全ての死者に安らぎを。今生きる全ての者に祝福を。生きている限り忘れまい。戦士たちを活かす、全ての人々を。
我々は戦っている。 だが、戦うには、戦士に数倍する支援の人員が必要であり。 戦いには必ず犠牲が伴う。 戦うばかりではなく、戦士が踏みつけにした人々へ思いを忍び、せめて花を捧げたいと思ったのだ。 死者に囚われていては生きていけない。前へ進めない。 だが、だからといって忘れて良い物ではない。 せめてここでは、死者を思おう。以上。
生きとし生ける者 全ての存在には 情報と言う物質が纏わりつくその情報が途切れるときは その存在が 時間の長短に関係無く その時間から解放された時大概は 他の生命に 若しくは時間の流れに あらゆる形となって 又は 姿を変えず受け継がれる-時間が流れ続ける限り 情報は生き続ける-
俺は戦地で大嫌いな上官を目の前で亡くした。セクハラするわ今夜どう?とか言って来るわ実力ないわで、本当に大嫌いだった。でも彼が、彼の半身が俺の脇にぼとりと落ちた時、この人の為に誰かが泣くのかと考えが余切った時、どうしようもなく泣きたくなって、俺はごめんなさいと意味もなくただ呟きながらその人の遺体を引きずって、任務を放棄し墓をたてずにはいられなかった。あの空虚な乾きにも似たものが悲しみだと言うのなら、俺は戦争も軍人も敵も味方も大嫌いになる。さよならと言わなきゃいけない戦争なんか嫌だ、とても嫌いだ。と、思った。